2026年5月29日
日経平均1,636円高の6万6,329円――MLCC急騰が示す「サプライチェーンの逼迫」と循環物色の論理
ヒナコ
トシさん、本日の日経平均株価は1,636円高の6万6,329円となり、史上最高値を大きく更新しました!米国とイランの停戦に向けた動きが好感されたようですが、これまでは一部のAI株だけが上がっていたのに対し、今日は東証プライムの8割近い銘柄が値上がりする全面高となっています。特に村田製作所などのMLCC(電子部品)関連が15%も買われていますが、なぜいきなりこれらの株に資金が集中したのでしょうか?
トシ
AIの物理的インフラ構築における、極めて論理的な「ボトルネックの移動」が起きている状態だ。ここでプロの機関投資家が分析しているサプライチェーンのファクトを提示しよう。AIサーバーや次世代スマートフォンの生産時期が重なることで、電圧を安定させる高性能MLCCの供給不足が確実視されている。そのため、電子部品商社が意図的な在庫確保(前倒し発注)に動き、それが汎用品の需給まで逼迫させるという連鎖が起きている。工場がフル稼働状態に達し、企業側が強い価格決定権(値上げ力)を持ったことが貿易統計などのデータで裏付けられたため、アルゴリズムは電線株などで得た利益を確定させ、まだ出遅れていた電子部品株へ巨額の資金を横滑りさせた。この資金の循環物色こそが、市場全体を押し上げている要因となる。
ヒナコ
AIを動かすために必要な部品が足りなくなることを見越して、世界中で部品の争奪戦が起きているから、その部品を作っている日本の会社にプロのお金が移ってきたのですね。昨日までは「5月売り」などで下がっていたのに、いきなり1,600円以上も上がって全面高になると、今買わないと本当に置いていかれそうで焦ってしまいます。
トシ
ここで君自身に問うてほしい。今日の全面高を見て感じている「焦り」は、投資判断なのか、それとも感情なのか。村田製作所のMLCCが15%上昇したという事実は、すでに今日の終値に織り込まれている。つまり明日この銘柄を買う人は、「15%上昇した後の価格」から出発することになる。ここで第一の問いだ。君がもし今日この電子部品株に飛び乗りたいと思っているなら、その根拠は「MLCC不足というサプライチェーンの構造を自分で理解したから」なのか、それとも「15%上がったというニュースを見たから」なのか。両者は全く異なる行為だ。第二の問い、東証プライムの8割が上昇した全面高は確かに強気のサインだが、昨日まで「セル・イン・メイ」で下げていた同じ市場が一夜で全面高に転じた事実は、この相場がいかに材料一つで方向を変えるボラティリティの高い状態かを示している。君はこの値動きの激しさに、自分の資金とメンタルが耐えられる設計になっているか。第三の問い、循環物色とは「電線株で利益を確定したプロが、その利益を電子部品株へ再投資する」動きだ。手元に確定利益のない個人が同じ動きを追えば、それは「すでに上がった後を追いかける」行為になる。問うべきは「次にどの部品株が上がるか」ではなく、「自分はこの相場で何を確定し、何を新たに買うのか、その順序と根拠が明確か」だ。全面高の高揚の中でこそ、保有銘柄の利食いラインと、新規購入の根拠を紙に書き出す作業が、お祭り騒ぎに飲み込まれない唯一の足場となる。