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仮想通貨取引所のセキュリティランキング【2026年】

最終更新日:

結論からいうと、公表情報の比較ではGMOコインと楽天ウォレットが上位です。本ページでは、金融庁登録の国内取引所8社を被害歴・保管体制・補償の3点で比較し、各社公式サイトと金融庁公表資料の一次情報で検証しました。

この記事の結論(本ページの最終更新日時点)

  • 主要8社のうち、GMOコイン・楽天ウォレット・SBI VCトレード・bitFlyer・bitbank・BitTrade・OKJの7社は、顧客資産の流出被害の公表事例が確認できません(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ)。Coincheckは2018年に流出を経験し、日本円での補償を2018年3月12日に完了しています。
  • 当サイトの公式公表ベース比較の上位3社は、1位 GMOコイン(預託分「すべて」のコールド保管と出金・送付時の二段階認証必須化を明記)、2位 楽天ウォレット(顧客保有分「全て」コールド保管+金銭の信託先と受益者代理人まで公表)、3位 SBI VCトレード(SBIグループの運営基盤・DMMビットコインの口座移管の受け皿)です。
  • 注意点がひとつあります。取引所がハッキングされた場合の補償に、法的な義務はありません。分別管理や信託は「返還のための仕組み」であって、元本保証ではありません。

【リスク注意】暗号資産は価格変動リスクのある商品です。取引所のセキュリティ体制は、流出リスクや損失リスクをゼロにするものではありません。

ヒナコ

ヒナコ

DMMビットコインの約482億円とか、Bybitの大規模流出とか、ニュースを見るたびに不安になります。国内の取引所も、預けたら危ないんでしょうか?

トシ

トシ

不安の中身を分解するところから始めよう。今の国内登録業者には、顧客から預かった金銭を信託会社等へ信託し、暗号資産の大半をインターネットから切り離して保管する義務が法律で課されている。2018年に事件が続いた後、規制が段階的に強化された結果だ。

ヒナコ

ヒナコ

それなら、どの登録業者を選んでも守られ方は同じということですか?

トシ

トシ

法律が決めているのは最低ラインだ。その上に何を積んでいるかは会社ごとに差があるし、公表の姿勢にも差がある。だからこそ各社が公式サイトで公表している体制を並べて比べる意味がある。加えて、DMMの事件が示したとおり攻撃を完全に防ぐ手立てはない。事故が起きた後に資産が返ってくる仕組みまで、先に見ておきたい。

このランキングの調査範囲と評価基準

本ランキングの調査対象は、金融庁「暗号資産交換業者登録一覧」(令和8年6月30日現在・全26業者)に掲載された国内業者のうち、個人向けに現物取引サービスを提供する主要8社です。法人専用の業者、取扱休止中の業者、登録抹消済みの業者は除外しました。DMMビットコインは同一覧に掲載がないため比較対象外とし、事件史の章で扱います。

評価は次の5軸を、この優先順位で比較しています。

  1. 資産の保管体制(コールドウォレット保管の範囲をどこまで明記しているか)
  2. 被害公表歴(顧客資産の流出被害の公表事例の有無)
  3. 事故対応・補償体制(金銭の信託・ISMS認証・補償や事故対応の実績)
  4. 認証・ログイン防御(二段階認証の必須化の明記)
  5. 運営基盤(親会社グループ・行政処分歴)

比較の材料は、各社が公式サイトで明記・公表している内容です。機能を提供していても公式ページに書かれていないものは評価に反映されません。第三者機関の古い評価(活動停止済みの格付け機関など)や通説は使いません。基準時点は本ページの最終更新日時点です。本ページに広告タグはなく、広告や報酬が順位を左右することはありません。

なお、手数料や取扱銘柄まで含めた総合的な取引所比較は仮想通貨取引所の総合ランキングが担当しています。評価軸が異なるため、順位は本ページと一致しません。

国内8社セキュリティ比較表

取引所保管体制の公表認証(二段階認証)の公表保全の上乗せ公表被害公表歴※1登録番号※2
GMOコイン預託分「すべて」コールド保管を明記出金・送付・未知環境ログインで必須化を明記金銭は日証金信託銀行へ信託
マルチシグ・外部脆弱性診断
公表事例の確認なし第00006号
楽天ウォレット顧客保有分「全て」コールド保管を明記ログイン・出金・出庫・チャージで必須を明記楽天信託+受益者代理人を公表
ISMS認証・マルチシグ
公表事例の確認なし第00015号
SBI VC
トレード
即時の資金移動が必要な分以外はコールド保管二要素認証を導入
必須の明記なし
マルチシグネチャアドレス
内部不正モニタリング
公表事例の確認なし第00011号
bitFlyerほぼ全量コールド保管
ホット併用を明記
設定を推奨
必須の明記なし
マルチシグ
補償制度は2021年6月1日終了
公表事例の確認なし第00003号
bitbankコールド+ホット併用体制を明記公式セキュリティページに記載なし全コールドウォレットでマルチシグ
ISMS認証
公表事例の確認なし第00004号
BitTradeコールドをオフライン管理+ホット併用記載なしマルチシグ
「可能な暗号資産では」と限定
公表事例の確認なし第00007号
Coincheck保管割合の明記なし採用
必須の明記なし
預かり資産残高の日次照合を公表2018年NEM流出
補償完了
第00014号
OKJ保管方法の公表なし記載なし記載なし公表事例の確認なし第00020号

※1 「公表事例の確認なし」=顧客資産の流出被害の公表事例が確認できない、の意味です(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ。各社公式サイトの公表内容に基づきます)。将来の被害がないことを示すものではありません。
※2 登録番号はいずれも金融庁「暗号資産交換業者登録一覧」(令和8年6月30日現在)に記載された関東財務局長への登録番号です。

「コールドウォレット管理だから安心」は半分だけ正しい——法律が決めた最低ライン

取引所の公式サイトを見比べると、ほぼ全社が「コールドウォレットで保管」を掲げています。ただ、コールドウォレット中心の保管は各社の善意でも宣伝文句でもなく、全登録業者に課された法律上の義務です。

根拠は3つの条文にあります。

  • 資金決済法63条の11:顧客の金銭は自社の金銭と分別し、信託会社等に信託しなければなりません。顧客の暗号資産も自社分と分別して管理する義務があります。
  • 暗号資産交換業者に関する内閣府令27条:利便のためにホットウォレット等で管理できる顧客の暗号資産は、日本円換算で利用者の暗号資産の5%相当を超えない範囲に限られます。残りは「常時インターネットに接続していない電子機器等」——つまりコールドウォレット等での管理が求められます。よく見かける「95%以上をコールドで管理」という言い方は、この条文(ホット側5%上限)の裏返しの換算表現です。
  • 資金決済法63条の11の2:ホット側で管理する分については、同じ種類・同じ数量の暗号資産(履行保証暗号資産)を自社の資産として別に保有し、分別管理する義務があります。ホットから流出しても、同種同量の弁済原資が確保されている建て付けです。
法律が全登録業者に義務付けた利用者資産の管理方法の図解。利用者の暗号資産はホットウォレットが5%相当まで、残りはコールドウォレット等で管理し、ホット分と同種同量の履行保証暗号資産を業者の自己資産から分別保有。金銭は信託会社等へ信託する。 法律が全登録業者に義務付けた利用者資産の管理(法定ライン) 利用者の暗号資産 (取引所への預かり分) ホットウォレット(ネット接続) 上限=利用者暗号資産の5%相当 コールドウォレット等 残り=常時ネット非接続で管理 履行保証暗号資産 ホット分と同種同量を 業者の自己資産から分別 金銭(日本円)は信託会社等へ信託し、業者の自己資産と分別して管理

※「95%以上コールド」は条文(ホット側5%上限)の裏返しの換算表現です。図は資金決済法63条の11・63条の11の2、暗号資産交換業者に関する内閣府令27条に基づきます。

さらに管理状況は公認会計士または監査法人の定期監査を受ける義務があり、業界側にも一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA・事業会員32会員)の自主規制があります。「暗号資産交換業に係る利用者財産の管理等に関する規則・ガイドライン」など、法令の上に自主規制を重ねた二重構造です。コールドウォレットとホットウォレットの技術的な違いはウォレットの仕組み解説で、複数の署名を要求するマルチシグと秘密鍵の仕組みは秘密鍵の解説で詳しく扱っています。

この前提に立つと、比較すべき点が変わります。「コールド保管かどうか」は全社が満たすべき底なので、差がつくのはその上に何を積んで、どこまで公表しているかです。預託分すべてか、ホット併用か。金銭の信託先はどこか。二段階認証を必須にしているか。本ページのランキングは、この「法定ラインからの上乗せ」を採点しています。

規制はさらに動く——2026年の金商法移管

2026年7月15日、暗号資産取引の規制を資金決済法から金融商品取引法へ移す改正法が成立し、7月23日に公布されました(法律第64号)。移管部分の施行は公布から1年以内の政令で定める日で、具体的な施行日はまだ決まっていません。暗号資産が投資対象として位置付けられている実態を踏まえ、利用者保護を充実させる方向の改正です。事件のたびに規制が積み上がってきた流れは、トラベルルール導入の経緯にも表れています。

セキュリティで選ぶ取引所ランキング【上位5社+番外】

順位は前章までの評価基準(公式公表ベース・5軸)によるものです。各社に長所と注意点の両方を記載します。

第1位

GMOコイン——預託分「すべて」コールド保管と、認証の必須化まで明記

保管体制の説明が8社で最も具体的。預託分すべてのコールド保管と、出金・送付時の二段階認証必須化を自社の言葉で公表している。

登録
GMOコイン株式会社(関東財務局長 第00006号・平成29年9月29日登録)
被害公表歴
公表事例の確認なし(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ)
長所
  • 預託を受けた暗号資産は「すべて」コールドウォレットで保管と明記。コールドからホットへ移動する際は複数部署の承認が必要な体制です。
  • マルチシグを自社のセキュリティ基準を満たす各暗号資産に導入し、秘密鍵を複数の場所に分散保管しています。
  • 日本円出金・暗号資産送付の際、そしてログイン実績のない環境からのログイン時に、二段階認証を「必須化」と明記。ログイン履歴の記録とメール通知も公表しています。
  • 預託金銭は自己資金と分離して日証金信託銀行の信託口座で管理。外部のセキュリティ専門家による定期的なシステム脆弱性診断も公表しています。
  • 顧客資産の流出被害の公表事例も行政処分歴も確認できません(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ)。
注意点
  • 不正ログイン等に対する補償規程の明文は、公式セキュリティページには見当たりません。
  • マルチシグの対象は「セキュリティ基準を満たす各暗号資産」であり、全銘柄一律ではありません。

※暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。セキュリティ体制は流出リスクをゼロにするものではありません。

第2位

楽天ウォレット——顧客分「全て」コールド保管+金銭の行き先まで公表

保管と認証に加え、預かった金銭がどこへ行き、破綻時に誰が返すのかまで明文化している唯一の存在。

登録
楽天ウォレット株式会社(関東財務局長 第00015号・平成31年3月25日登録)
被害公表歴
公表事例の確認なし(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ)
長所
  • 顧客保有分の暗号資産は「全て」コールドウォレットで管理と明記。自社保有分と物理的に分離しています。
  • 秘密鍵はマルチシグで管理し、電子鍵運用のノウハウを持つセコムのグループ会社と提携しています。
  • 二要素認証がログイン・日本円出金・暗号資産の出庫・楽天キャッシュチャージの4場面で「必須」と明記されています。
  • 預託金銭は楽天信託の信託口座で管理され、楽天信託がそれを楽天銀行の銀行預金(無利息型)に預け入れる方式です。万一楽天ウォレットが破綻した場合、受益者代理人である外部の弁護士を通じて顧客に直接返還される仕組みまで公表しています。
  • ISMS認証(認証登録番号 IS 510581)を取得。顧客資産の流出被害の公表事例が確認できません(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ)。
注意点
  • イーサリアムはシステム上マルチシグでの管理を適用していないと自社で注記しています。
  • 「お客様の資産は分別管理されますが、お客様の資産の全額を返還することを保証するものではございません」との注記も自社で明記しており、分別管理=全額返還の約束ではない点は同社自身が示しています。

※暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。セキュリティ体制は流出リスクをゼロにするものではありません。

第3位

SBI VCトレード——DMM口座移管を受け入れたSBIグループの運営基盤

公表範囲の広さと、業界の緊急時に受け皿となった運営基盤が評価材料。

登録
SBI VCトレード株式会社(関東財務局長 第00011号・平成29年12月1日登録)
被害公表歴
公表事例の確認なし(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ)
長所
  • 即時の資金移動が必要な暗号資産等以外は、外部インターネットにつながらないコールドウォレットで保管と明記。秘密鍵は1つのアドレスに複数を割り当てるマルチシグネチャアドレスを採用しています。
  • Google Authenticatorによる二要素認証、パスワード強度の要件(3種類以上・8文字以上)、連続ログイン失敗時のロックを公表しています。
  • EV SSL証明の採用、内部の人間による不正を防ぐモニタリング、AML・KYCの管理体制まで公表範囲が広い会社です。
  • SBIグループの一員として、2025年3月8日にDMMビットコインの口座・預かり資産の移管を受け入れました。業界の緊急時に受け皿となった運営基盤は、評価軸⑤の観点で大きな材料です。
注意点
  • 二要素認証は「導入」の表現で、必須化の明記はありません。
  • 金銭の信託先やISMS認証の明文は、取得できた公式ページには見当たりません。コールド保管も「即時の資金移動が必要な分以外」という限定付きです。

※暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。セキュリティ体制は流出リスクをゼロにするものではありません。

第4位

bitFlyer——ほぼ全量コールドとマルチシグ。補償制度の終了に注意

ホット併用を隠さず書く誠実な公表姿勢。ただし旧補償制度は終了済みで、古い記事の情報に注意。

登録
株式会社bitFlyer(関東財務局長 第00003号・平成29年9月29日登録)
被害公表歴
公表事例の確認なし(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ)
長所
  • 交換や送付に必要な最小限のみをホットウォレットに置き、残り(ほぼ全量)をネットワークから隔離したコールドウォレットに保管と明記。ホット併用を隠さず書いている点は誠実な公表姿勢です。
  • マルチシグを採用し、署名の1つが漏えいしても複数の署名が必要な設計と説明しています。
  • パスワード要件(9文字以上・2種類以上の文字種)、連続失敗時のアカウントロック、外部機関の協力による攻撃パターンの把握など、ログイン防御の公表項目が多い会社です。
  • 顧客資産の流出被害の公表事例が確認できません(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ)。
注意点
  • 不正な日本円出金への補償制度(二段階認証を設定した利用者が対象・上限500万円・10万円)は「2021年6月1日16:00をもって終了しました」と公式ページに明記されています。現行の制度として紹介している記事を見かけたら、その記事の鮮度を疑ってください。
  • 二段階認証は「設定を推奨します」の表現で、必須化の明記はありません。
  • 2018年6月22日に関東財務局長から行政処分を受けた歴があります(経営管理態勢・分別管理・流出防止等の内部管理態勢に関する指摘)。

※暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。セキュリティ体制は流出リスクをゼロにするものではありません。

第5位

bitbank——全コールドウォレットでマルチシグ。認証の公表が弱点

鍵管理の運用を具体的に公表する一方、二段階認証の記載が公式セキュリティページにない。

登録
ビットバンク株式会社(関東財務局長 第00004号・平成29年9月29日登録)
被害公表歴
公表事例の確認なし(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ)
長所
  • すべてのコールドウォレットでマルチシグを採用し、完全なオフライン環境で複数人が別々に電子署名する運用を具体的に公表しています。
  • ホットウォレット側も、物理的・仮想的に分散された鍵管理システムと明記しています。
  • ISMS認証(ISO 27001:2022・認証番号 JP025751)を取得し、外部からの脆弱性報告を受け付ける窓口(Responsible Disclosure)も設けています。
  • 顧客資産の流出被害の公表事例も行政処分歴も確認できません(本ページの最終更新日時点・当サイト調べ)。
注意点
  • 公式セキュリティページに二段階認証の記載がありません。機能の有無ではなく「公表していない」ことが、公式公表ベースの本比較では減点要素になります。
  • 「全量コールド」の明記はなく、コールド+ホット併用の体制です。一部の古い記事にある「bitbankは全量コールド保管」は、現行の公式ページとは一致しません。

※暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。セキュリティ体制は流出リスクをゼロにするものではありません。

番外

Coincheck——事故を起こし、補償をやり切った実例として

「事故が起きた取引所がその後どう対応したか」を確認できる、国内で数少ない実例。

登録
コインチェック株式会社(関東財務局長 第00014号・平成31年1月11日登録)
被害公表歴
2018年NEM流出(日本円補償を2018年3月12日に完了)

Coincheckを番外枠に置いたのは、順位づけとは別の価値があるからです。2018年1月26日、預かっていたNEMのうち5億2630万10XEMが不正アクセスで外部送金されました。同社は保有数×88.549円の日本円補償を決め、2018年3月12日に補償を完了。その後マネックスグループの子会社としてガバナンス体制を立て直し、預かり資産の残高を日次で照合する分別管理を公表しています。「事故が起きた取引所がその後どう対応したか」を確認できる、国内で数少ない実例です。

注意点
  • 現行の公式ページはコラム記事の体裁で、保管割合の明記がありません。二段階認証も必須化の明記はありません。
  • 2018年に行政処分を2回(1月29日・3月8日)受けた歴があります。

※暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。セキュリティ体制は流出リスクをゼロにするものではありません。

トシの結論 ── 目的別の見方で選び分ける

順位はあくまで公式公表ベースの比較だ。その前提で、目的別の見方を整理しよう。保管体制の説明が最も具体的なのはGMOコインだ。預託分すべてのコールド保管と、出金・送付時の認証必須化までを自社の言葉で公表している。金銭の行き先まで確かめたいなら楽天ウォレットが分かりやすい。信託先に加えて受益者代理人の仕組みまで明文化していたのは、8社の中でこの社だけだった。

運営基盤を重く見るならSBI VCトレードだ。DMMビットコインの口座移管を受け入れた事実は、緊急時に頼られる立ち位置を示している。bitFlyerとbitbankにはそれぞれ補償制度の終了、二段階認証の記載なしという注意点があるから、口座を作る前に現物の公式ページで確認しよう。そしてどの取引所を選ぶにせよ、1社に全資産を集中させない構えを持っておきたい。口座分散の考え方はサブ口座の選び方にまとめてある。

日本の取引所ハッキング事件史——事件のたびに規制は強化された

国内の規制がなぜ「ホット5%上限」「金銭信託」「履行保証」まで踏み込んでいるのか。答えは事件史にあります。

時期
事件
結末(補償・処分・移管)
2014年
Mt.Gox:大手取引所が取引停止から経営破綻に至ったと報じられた事件
暗号資産の管理を法律で定める議論の出発点になり、2017年4月1日の交換業登録制につながった
2018年1月
Coincheck:預かっていたNEMのうち5億2630万10XEMが、1月26日に不正アクセスで外部送金
保有数×88.549円の日本円補償を2018年3月12日に完了。金融庁は1月29日・3月8日の2回、行政処分
2018年
Zaif(テックビューロ):暗号資産の流出被害が報じられた
テックビューロは2018年9月25日に行政処分(同社は同年6月22日にも処分歴あり)
2019年7月
BITPoint:約30.2億円相当の流出が判明(うち顧客預り分は約20.6億円。換算は2019年7月11日16時時点の価格)
顧客預り分は全5銘柄・全量について流出分相当を調達済みと公表。預かり法定通貨の流出はなし
2021年
Liquid:流出被害が報じられた
2024年5月
DMMビットコイン:4502.9BTC(当時約482億円相当)が流出。警察庁がFBI・米国国防省サイバー犯罪センター(DC3)とともに北朝鮮を背景とするグループTraderTraitorの犯行と特定(2024年12月24日公表)
2024年9月26日に行政処分。口座・預かり資産は2025年3月8日にSBI VCトレードへ移管

※年表は本ページの最終更新日時点で確認できた公表資料・報道に基づきます。

年表を通して見えるのは、被害と規制のいたちごっこではなく、事件のたびに規制の底が一段ずつ上がってきた流れです。2018年のCoincheck事件を境に、コールド管理義務・ホット5%上限・履行保証暗号資産という現在の枠組みが形づくられました。2018年6月22日にはbitFlyerも内部管理態勢の指摘で行政処分を受けており、流出の有無にかかわらず態勢面へ監督が及んだ年でもあります。

DMMビットコイン事件の顛末——国家級攻撃でも資産が返った仕組み

2024年5月のDMMビットコイン事件は、国内の事件史の中でも特異です。攻撃者が国家を背景とするグループであり、侵入経路が取引所本体ではなく委託先だったからです。

警察庁とGincoの公表によれば、経緯は次のとおりです。2024年3月下旬、TraderTraitor(北朝鮮当局の下部組織とされるLazarus Groupの一部とされるグループ)は、LinkedIn上でリクルーターになりすまし、企業向け暗号資産ウォレットソフトウェア会社Gincoの従業員に接触しました。GitHub上に置いた「採用前試験」を装う悪意あるPythonスクリプトを実行させて業務端末を侵害し、クラウド上の本番環境へアクセスできる認証情報を窃取。2024年5月24日から31日の間に不正アクセスを行い、セッションクッキーを悪用して従業員になりすまし、DMM従業員による正規取引のリクエストを改ざんしました。その結果、4502.9BTC(当時約482億円相当)が流出しました。

2024年12月24日、警察庁はFBI・米国国防省サイバー犯罪センター(DC3)とともにこの攻撃をTraderTraitorによるものと特定して公表し、同日、警察庁・NISC・金融庁の連名で注意喚起が出されました。Gincoも2025年1月28日に報告を公表しています。

そして利用者側の結末です。DMMビットコインは2024年12月25日、SBI VCトレードとの間で口座・預かり資産の移管の本契約を公表し、2025年3月8日に移管が実施されました。対象は2025年3月4日時点で口座を持っていた全顧客、移管対象は日本円と現物暗号資産です(レバレッジ取引の未決済ポジションは対象外)。DMMビットコインの名前は、令和8年6月30日現在の登録一覧にありません。

ヒナコ

ヒナコ

取引所本体ではなく、委託先のウォレット会社の従業員が狙われたんですね。利用者からは見えない場所で起きた攻撃だったと知って驚きました。

トシ

トシ

そこがこの事件の核心だ。取引所単体の対策では防ぎきれない攻撃が現実に起きた。偽のリクルーターからの連絡という入口は、どの会社の従業員にも起こり得る。

ヒナコ

ヒナコ

それでも利用者の資産が返ってきたのは、なぜですか?

トシ

トシ

分別管理と履行保証という制度の土台、そしてグループでの受け皿と調達力が働いたからだ。約482億円の流出でも顧客の口座と資産が移管まで到達した事実は、制度と運営基盤の両方を評価材料にする理由になる。登録一覧から姿を消す結末まで含めて記憶しておきたい事件だ。

世界大手でも破られた——Bybit事件の教訓

「大手の体制なら破られない」と言い切れないことを示したのが、海外取引所Bybitの事件です。FBIは2025年2月26日の公開注意喚起(Alert Number: I-022625-PSA)で、2025年2月21日頃にBybitから約15億ドル相当の仮想資産が窃取され、実行主体は北朝鮮だと公表しました。FBIはこの活動をTraderTraitorと呼んでおり、DMMビットコイン事件と同じ呼称です。窃取された資産の一部はビットコイン等に転換され、複数のブロックチェーン上の数千のアドレスに分散されたとされています。

FBIの注意喚起は侵入手口の詳細までは記していません。それでも、世界規模の取引所であっても、保管を含む体制の「運用」のどこかが破られれば大規模流出は起こり得ます。コールドウォレットは保管場所の性質を示す言葉であって、資産を移動させる手続きまで含めて無敵になる仕組みではありません。

国内規制の相対的な価値も、ここで見えてきます。ホット5%上限・履行保証・金銭信託という日本の枠組みは、「流出を起こさない」ことだけでなく「流出が起きた後に利用者へ返す原資を残す」ことに重心を置いた設計です。それでも流出リスクがゼロになることはありません。この前提は、どの取引所を選んでも変わりません。

ハッキングされたら補償される?破綻したら?

補償の話は、2つの異なる仕組みを分けると理解しやすくなります。

1つめは、取引所がハッキングされて顧客の暗号資産が流出した場合の対応です。この場合の全額補償に法的な義務はありません。過去の事例では、Coincheckが保有数×88.549円の日本円補償を2018年3月12日に完了し、BITPointは顧客預り分の全5銘柄・全量について流出分相当の暗号資産を調達済みと公表しました(預かり法定通貨は流出なし)。つまり実例としては補償・充当が行われてきましたが、それは各社の自主対応と、履行保証・分別管理という制度の土台があったからです。

2つめは、個人アカウントへの不正ログイン・不正出金に対する補償規程です。こちらは各社の規程次第で、8社の公式ページを横断して確認した範囲では、現行の補償規程を明文化している社はありませんでした。かつてbitFlyerに、二段階認証を設定した利用者を対象とする上限500万円(預かり資産100万円以下の場合は10万円)の補償制度がありましたが、2021年6月1日16:00をもって終了したと公式に明記されています。

破綻した場合は、分別管理と金銭信託が働きます。顧客の金銭は信託会社等に信託されているため、取引所の自己資産とは切り離されています。楽天ウォレットは、破綻時に受益者代理人である外部の弁護士を通じて顧客へ直接返還される仕組みまで公表しています。実例としては、DMMビットコインの口座・預かり資産が2025年3月8日にSBI VCトレードへ移管され、登録一覧から名前が消えた取引所から顧客資産が引き継がれた経緯があります。

銀行預金との違いには注意が必要です。銀行預金には預金保険制度という公的なセーフティネットがありますが(詳細は銀行の預金保険とセキュリティの解説)、暗号資産に同種の公的保護はありません。分別管理も信託も「返還のための仕組み」であって、元本保証ではないうえ、価格変動による損失はそもそも補償の対象外です。楽天ウォレット自身が「資産の全額を返還することを保証するものではございません」と注記しているとおり、仕組みの限界まで含めて理解した上で使う商品です。

取引所任せにしない——利用者側の防衛は3点だけ

過去の被害には、取引所側の体制と関係なく、利用者のアカウントが破られて起きるものもあります。守りの要点は3つです。

  • 二段階認証はSMSではなくアプリ型を使う。GMOコインは出金・送付時等、楽天ウォレットはログイン・出金・出庫・チャージで必須化していますが、必須化されていない取引所でも自分で設定できます。
  • 出金先アドレスの管理とログイン通知を放置しない。ログイン履歴の通知メールは、不正アクセスに最初に気づける手がかりです。
  • フィッシングを疑う癖をつける。偽サイトへの誘導だけでなく、DMMビットコイン事件の入口はLinkedInの偽リクルーターからのDMでした。「うまい話の連絡」は個人にも届きます。

設定手順やパスワード管理の具体策は仮想通貨のセキュリティ防衛術で詳しく解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. ハッキング被害に遭ったことのない仮想通貨取引所はどれですか?

A. 「被害に遭ったことがない」と言い切る材料は公表情報にはなく、8社の公式サイトにも「これまで一度も被害がない」といった自社表現は存在しません。本ページの最終更新日時点・当サイト調べでは、主要8社のうちGMOコイン・楽天ウォレット・SBI VCトレード・bitFlyer・bitbank・BitTrade・OKJの7社について、顧客資産の流出被害の公表事例が確認できません。公表事例がないことと、将来も被害が起きないことは別の話です。

Q2. 最も優れたセキュリティ実績を持つ仮想通貨取引所はどれですか?

A. 「実績」を何で測るかによって答えが変わります。当サイトの公式公表ベースの比較では、保管体制と認証必須化の公表が最も充実していたのはGMOコインで、金銭の信託先・受益者代理人まで公表する楽天ウォレットが続きました。この順位は本ページの評価基準による比較結果であり、将来の安全を約束するものではありません。

Q3. 取引所がハッキングされたら、預けた資産は補償されますか?

A. 流出時の全額補償に法的な義務はありません。実例としては、Coincheckが2018年に保有数×88.549円の日本円補償を完了し、BITPointは顧客預り分の全量について流出分相当を調達済みと公表しました。制度面では、ホットウォレット管理分と同種同量の履行保証暗号資産の保有が義務付けられており、返還の原資を残す設計になっています。

Q4. 取引所が倒産したら暗号資産はどうなりますか?

A. 顧客の金銭は信託会社等への信託、暗号資産は分別管理が法律で義務付けられており、取引所の自己資産とは切り離されています。楽天ウォレットのように、破綻時は受益者代理人(外部の弁護士)経由で直接返還すると公表している社もあります。実例では、DMMビットコイン(現在は登録一覧に掲載がありません)の口座・預かり資産が2025年3月8日にSBI VCトレードへ移管されました。分別管理は返還の仕組みであって、資産の全額返還を約束するものではない点には注意してください。

Q5. 「コールドウォレット保管」を掲げる取引所なら安心ですか?

A. コールドウォレット中心の保管は、内閣府令27条により全登録業者に課された義務です(ホットで持てるのは利用者暗号資産の5%相当まで)。つまり特定の会社の強みではなく、登録業者の共通ラインです。加えて2025年のBybit事件では、海外大手からも約15億ドル相当が流出しており、保管方式だけで安全は判断できません。差を見るなら、保管範囲の明記・認証の必須化・信託の明文など「法定ラインからの上乗せ」を比べてください。

Q6. 海外取引所や無登録の業者を使っても大丈夫ですか?

A. 国内で暗号資産と法定通貨の交換サービスを行うには、2017年4月1日に始まった制度に基づく暗号資産交換業の登録が必要です。金融庁も「利用する際は登録を受けた事業者か金融庁・財務局のホームページで確認してください」と呼びかけています。口座を作る前に、金融庁の「暗号資産交換業者登録一覧」(令和8年6月30日現在で全26業者)に名前があるかを確認してください。無登録の業者には、本ページで解説した分別管理・履行保証などの国内規制が及びません。

Q7. DMMビットコインに口座があった人の資産はどうなりましたか?

A. 2025年3月8日に、口座と預かり資産(日本円・現物暗号資産)がSBI VCトレードへ移管されました。対象は2025年3月4日時点でDMMビットコインに口座を開設済みだった全顧客です。レバレッジ取引の未決済ポジションは移管の対象外とされました。

まとめ:事件史が規制を強くした。それでも最後の判断は利用者に残る

2014年のMt.Gox事件が登録制の議論を生み、2018年のCoincheck事件がコールド管理義務・ホット5%上限・履行保証という現在の枠組みを形づくり、2024年のDMMビットコイン事件は委託先経由の国家級攻撃という新しい脅威と、それでも顧客資産が移管まで到達した制度の底力の両方を見せました。2026年には規制の舞台が資金決済法から金商法へ移る改正も成立しています。事件が起きるたびに、日本の規制は一段ずつ強くなってきました。

一方で、規制がどれだけ積み上がっても消えないものがあります。流出リスクがゼロにならないこと、価格変動の損失は誰も補償しないこと、そしてどの取引所に何を預けるかの判断が利用者に残ることです。各社の公表内容には、具体性の差がはっきりあります。公表を読み、法定ラインからの上乗せで選び、アカウント側の防衛を固める——この積み重ねが、事件史から利用者が受け取れる実践的な教訓です。

【免責】本ページは情報提供を目的としたもので、特定の暗号資産の取得や特定業者の利用を勧誘するものではありません。暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあり、取引所のセキュリティ体制は流出リスクをゼロにするものではありません。最新の情報は各社公式サイトおよび金融庁の公表資料で確認してください。

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※本記事は特定の投資成果・利益を保証するものではありません。暗号資産は価格変動リスクを伴う金融商品です。本記事で紹介している取引所はすべて金融庁登録済みの国内暗号資産交換業者です。