FXフィボナッチ・リトレースメントの引き方と使い方

フィボナッチ・リトレースメントは、一度上がった値幅、または下がった値幅に対して、価格がどのくらい戻ったかを測る道具です。上昇の押し目なら安値とその後の高値、下降の戻りなら高値とその後の安値を選びます。

引き方で大切なのは、ドラッグの向きを丸暗記することより、どの2点を測り、表示された価格が何%の戻りに当たるかを確かめることです。上昇・下降の両方を、同じドル円の架空例で見ていきます。

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編集:金融ナンバーワンサイト編集部

まずは「どこから、どこまでの動きか」を決める

  • 上昇後の押し目:安値150円 → 高値160円の上昇幅10円を測る。
  • 下降後の戻り:高値160円 → 安値150円の下落幅10円を測る。
  • この記事の表記:動きの終点を戻り0%、起点まで戻れば100%とする。計算は通常の価格目盛り(線形)を使う。

たとえば150円から160円へ上がり、153.820円まで下がれば、10円の上昇幅に対して6.180円戻ったことになります。これが61.8%の戻りです。61.8%は反発する確率でも、その価格で買う指示でもありません。

上昇幅150円から160円を測る図 上昇の終点160円を戻り0%、起点150円を100%とした図。38.2%は156.180円、50%は155円、61.8%は153.820円。その後の値動きを予想する図ではない。 上昇後の押し目を測る 160.000円:終点 0%38.2% 156.180円50% 155.000円61.8% 153.820円150.000円:起点 100% 測った上昇幅は10円。線は価格の目安。
高値から下へ、上昇幅の何%戻ったかを見る。
下降幅160円から150円を測る図 下降の終点150円を戻り0%、起点160円を100%とした図。38.2%は153.820円、50%は155円、61.8%は156.180円。その後の値動きを予想する図ではない。 下降後の戻りを測る 160.000円:起点 100%61.8% 156.180円50% 155.000円38.2% 153.820円150.000円:終点 0% 測った下落幅は10円。線は価格の目安。
安値から上へ、下落幅の何%戻ったかを見る。

図と以下の価格は説明用の架空例です。現在のレート、過去の実績、将来の目標価格を示したものではありません。

フィボナッチの引き方は、2点の選択と価格の確認から

  1. 時間足と、測りたい一つの動きを決める。 日足の大きな上昇を測るのか、1時間足の直近の上昇を測るのかを決めます。「目立つ高安」だけで選ばず、どの動きの押し目・戻りを調べるかを言葉にします。
  2. その動きの起点と終点を選ぶ。 上昇なら安値と、その後につけた高値。下降なら高値と、その後につけた安値です。起点から終点へ進んだ順序を確認します。
  3. フィボナッチ描画ツールで2点を指定する。 本文と同じ表記にするなら、終点が戻り0%、起点が100%になるよう表示を確認します。クリック・ドラッグの順序や反転設定は、使用ツールの仕様に合わせます。
  4. 50%と61.8%の価格を検算する。 150→160の例なら50%は155円、61.8%は153.820円です。位置が違うときは、反発を探す前に2点の座標と表示設定を見直します。

ヒゲと実体、どちらを結ぶ?

ローソク足の高値・安値を測るなら、通常はヒゲを含む最高値・最安値を端点にします。終値を基準にする方法は、測定対象を「終値から終値の動き」に変えたものです。同じ値幅を測っているわけではありません。

この教材ではヒゲを含む高安を使います。相場が線に合わなかったから、その場で実体や別のヒゲへ付け替えると、検証の基準が変わってしまいます。ローソク足・時間足の読み方を先にそろえ、選んだ端点の価格と時刻を記録しておくと比較しやすくなります。

期間や時間足に、一つの正解はある?

リトレースメントには、移動平均の「20期間」のように全員が同じ期間を指定する決まりはありません。時間足を変えると見える動きや端点も変わります。日足だから勝率が高い、5分足だから使えないと決めず、測る動きと判断する時間軸をそろえることが先です。

高値・安値の更新関係はダウ理論の見方、複数時間足の整理はFXチャート分析の応用で確認できます。

上昇・下降の計算式と、ドル円の価格早見表

下の例は、高値160円・安値150円、値幅10円で統一します。戻り率を価格の動きの終点から測り、比率は38.2%なら0.382として計算します。

上昇後:高値 −(高値 − 安値)× 戻り率

下降後:安値 +(高値 − 安値)× 戻り率

表は横にスクロールできます。通常の価格目盛りで計算し、例の価格は小数第3位まで表示しています。

同じ10円幅でも、上昇後と下降後で価格が変わる
戻り率150→160円の上昇後160→150円の下降後
0%160.000円(終点)150.000円(終点)
23.6%157.640円152.360円
38.2%156.180円153.820円
50%155.000円155.000円
61.8%153.820円156.180円
78.6%152.140円157.860円
100%150.000円(起点)160.000円(起点)

上昇後の61.8%は 160 − 10 × 0.618 = 153.820円。下降後の61.8%は 150 + 10 × 0.618 = 156.180円です。「61.8%だから同じ価格」と覚えず、何方向の値幅を測っているかを確認します。

ここで求めているのはラインの価格です。取引数量、損益、スプレッド、スリッページ、スワップは計算に含めていません。

0%・100%が逆、ラインの価格が合わないとき

ラベルより先に、端点と価格を見る

同じ150〜160円の2点でも、画面が安値150円を0%、高値160円を100%と表示していれば、153.820円のラベルは38.2%になります。この記事では高値からの戻りを数えるため、同じ価格を61.8%の戻りと呼びます。

153.820円という同じ線

  • 安値150円から上へ測る表示:38.2%
  • 高値160円から下へ戻った割合:61.8%

このように、2点を入れ替えた表示は「100 − 表示比率」で対応を確認できます。価格が合っているのに、数字だけを見て引き間違いと判断しないことが大切です。

TradingViewのフィボナッチ描画設定には、反転(Reverse)、価格表示(Prices)、2点の座標(Coordinates)があります。また、対数目盛りを使う場合には、フィボナッチ水準を対数で計算する設定もあります。この設定で計算した価格は、上の通常目盛りの式と一致しない場合があります。操作名と機能はTradingView公式の描画ツール仕様で確認できます。

この案内はTradingView固有の設定確認です。他のチャートソフトの初期設定・ドラッグ順・表示名まで共通とは限りません。

起点を変えれば、61.8%の価格も変わる

高値160円を固定し、上昇の起点だけを変えた例
測る上昇値幅61.8%戻りの価格
150→160円10円153.820円
148→160円12円152.584円

計算は 160 − 12 × 0.618 = 152.584円です。長い上昇全体と、途中からの小さな上昇では、測っている値幅が違います。見たい反発に合わせて起点を後から探すより、最初に選んだ動きで何が分かったかを記録し、新しく引く場合は別の測定として残す方が検証しやすくなります。

まだ高値を更新している上昇を測る場合、終点は暫定です。新しい高値を終点にすれば、値幅と各ラインの価格も変わります。最初に引いた時点の端点を残し、いつ、どの更新を受けて引き直したかを記録しましょう。

価格が合わないときは、通貨ペア・配信元・時間足 → 起点と終点の価格 → 反転 → 比率の値 → 通常/対数の計算設定の順に確認できます。

38.2%・50%・61.8%・78.6%は何を表す?

フィボナッチ数列は、0、1、1、2、3、5、8、13……と、前の2つを足して次の数を作る並びです。十分に先の項で、小さい方を大きい方で割ると、隣り合う項では約0.618、一つ飛ばしでは約0.382、二つ飛ばしでは約0.236へ近づきます。数列の定義はNISTの数学資料で確認できます。

比率の由来と、読み違えやすい点
水準整理のしかたこの数字からは分からないこと
23.6%・38.2%・61.8%数列の項の比が近づく値を、戻りの目安に使う。反発確率、注文量、買い手・売り手の優勢。
50%値幅の半分。「半値戻し」を見る補助線で、黄金比に基づく上記の近似比率とは別。半値なら強く機能する、という保証。
78.6%と76.4%78.6%は約0.618の平方根に由来。76.4%は100%−23.6%。別の値で、同じ線ではない。どちらが最後の支えになるか、どちらの勝率が高いか。
100%選んだ動きの起点まで戻った「全戻し」。もっと長い時間軸を含む相場全体のトレンドが消滅したかどうか。

線を増やすと、どこかの線と価格が近く見えやすくなります。比率ごとの勝率をこのページでは算出していません。どの水準を使うかは、測る動き、観察条件、見立てを取り下げる条件と一緒に記録して検証します。

押し目買い・戻り売りでは、価格の目安と売買判断を分ける

上昇後の押し目買いを検討するなら、選んだ上昇のどの水準まで下がったかを見ます。下降後の戻り売りなら、選んだ下落のどこまで上がったかを見ます。線への到達だけでは、反転したことも、その後に利益が出ることも分かりません。

  1. 線を引く前に、見立てを決める。 どの動きの継続を想定しているのか、その考えが崩れる条件は何かを整理する。
  2. 到達前後の値動きを観察する。 過去の高安、ローソク足の確定状態、重要指標の発表などを確認する。小さな反発やヒゲ一本だけで、その後の方向を決めつけない。
  3. 取引する場合は、数量と損失を先に確認する。 想定する注文価格から損切り条件までの距離に、数量や取引コストを合わせて考える。条件を決められなければ取引を見送る。
  4. 見立てが崩れたら、当初のルールへ戻る。 次の比率が下にあるという理由だけで損切りを遠ざけたり、注文を増やしたりしない。

損切り価格は「次のフィボナッチ線の少し外側」と一律には決まりません。ラインを越えたかという観察と、いくらまで損失を許容するかという管理は別です。注文方法と逆指値、ポジションサイジングで具体的な条件を確認できます。

足の確定を待つことと、損切りを遅らせることは別です。

確定後のローソク足を検証に使う場合でも、保有中の損失がそれまでの間に拡大する可能性があります。「ヒゲなら安全」「実体で抜けたら転換確定」とは判断できません。事前の損失管理を優先し、逆指値にもスリッページがあり得ることを踏まえます。

水平線や移動平均線と重なったら、何が分かる?

フィボナッチと過去の高安、移動平均線などが同じ付近にある状態を「コンフルエンス」と呼ぶことがあります。重なりは観察する価格帯を絞る材料になりますが、線が3本重なったことを、独立した根拠が3つある、勝率が上がった、と読み替えることはできません。

フィボナッチも移動平均も、同じ価格の動きを別の形で示している面があります。加えるなら「過去の高安を見る」「平均からの離れ方を見る」のように役割を分けます。詳しい組み合わせはFXのテクニカル指標の使い分け、波の数え方はエリオット波動の基礎へ進めます。

一方向の動きを選びにくい横ばい相場では、起点候補が増え、引き直すたびに違う線が出やすくなります。計算そのものはできますが、測りたい動きを説明できないときは、線を増やす前に値動きの整理へ戻る方が分かりやすいでしょう。

リトレースメントとエクステンションの違い

リトレースメントは、選んだ動きに対する「戻り」を主に見ます。一方、伸びる先の目安を置くエクステンションには、2点の値幅を外側へ延ばす表示と、戻りの終点も指定する3点のツールがあり、名前だけでは計算の起点がそろいません。

たとえばTradingViewのトレンドベースのフィボナッチ・エクステンションは、A=動きの始まり、B=動きの終わり、C=戻りの終わり、という3点を使います。設定は当該ツールの公式仕様で確認できます。

通常目盛りでA=150、B=160、C=155円なら、CからA→Bの幅10円を1倍投影する価格は165円です。この記事のリトレースメントの100%=150円とは、基準も意味も違います。「161.8%まで上がる」などと目標を決める前に、どの2点・3点から、どちらへ測るツールかを確かめてください。

暗号資産の取引時間やコストを含む使い方・試算は、仮想通貨のフィボナッチ解説に分けています。

3つの練習問題で、引いた線を説明できるか確かめる

いずれも通常の価格目盛りを使った架空例です。答えを開く前に、どの値幅をどちらから測ったかを考えてみてください。

① 150→160円の上昇後。153.820円の線が画面では38.2%と表示された。引き間違い?

表示の向きだけが違う可能性があります。 安値150円を0%にすると、150+10×0.382=153.820円。高値160円から測る戻り率は(160−153.820)÷10=0.618です。端点・価格・反転設定を確認すれば、同じ線か判別できます。

② 高値160円はそのまま、起点を150円から148円へ変えた。61.8%の線は?

152.584円です。 値幅が12円になり、160−12×0.618=152.584円。前の153.820円とは別の動きを測っています。線が欲しい位置に来るまで起点を動かす使い方では、最初の分析と同じ条件で検証できません。

③ 61.8%の線を抜けた。次の78.6%まで、予定していた損切りを遠ざけてもよい?

次の線があることだけでは、損切りを後退させる根拠になりません。 当初の見立てと損失管理に立ち戻ります。新しい動きを測り直す作業と、保有中のリスクを増やす判断は分けます。ローソク足が確定するまでに損失が広がる点も変わりません。

比率を覚えるより、2点と表示価格を確かめる

練習するときは、測る動きを選ぶ → 高安2点を記録する → 50%と61.8%の価格を検算する → 見立てと損失管理を別に決める、という順で進められます。0%・100%が逆に見えても、価格まで確かめれば同じ線かどうかを整理できます。

フィボナッチの数学的な成り立ちは、将来の価格がその比率で反転する証明ではありません。売買条件の検証には、反発した例だけでなく、通過した例、コスト、損失も同じ基準で記録することが必要です。分析全体の入口はFXテクニカル分析の基礎にまとめています。

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