米国株の始め方【図解】口座開設から1株買うまでの5ステップ
米国株は日本の証券会社で、円のまま1株から買えます。口座開設から最初の1株を買うまでの5ステップを図解で解説します。
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米国株は「①口座を用意する → ②資金を入れる → ③銘柄を探して注文する → ④取引時間を知る → ⑤約定を確認する」の5ステップで始められます。日本語の画面で、円のまま、1株(銘柄により数千円〜数万円・2026年7月時点)から購入でき、英語力は不要です。
ただし配当には、米国10%+日本20.315%の二重課税という米国株ならではの税金の癖があります。買い方とあわせて、税金の流れまで本記事で押さえておきましょう。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| STEP1 | 口座を用意する(総合口座+外国株式口座。必要ならNISA口座も) | 総合口座を開設すると外国株式口座も自動的に、または同時申込で開設でき、開設料・維持費は無料の会社が主流(2026年7月時点) |
| STEP2 | 資金を入れる──円のまま使うか、先にドルへ両替するかを決める | 円貨決済なら両替は自動。主要ネット証券は米ドルの為替手数料0銭が主流(2026年7月時点) |
| STEP3 | 銘柄を探して注文する──ティッカー(例:AAPL)で検索し6項目を入力 | 株数・成行/指値・決済方法・口座区分などを順に選ぶだけ |
| STEP4 | 取引時間を知る──日本時間の深夜が立会時間 | 標準時間23時30分〜翌6時/夏時間22時30分〜翌5時。予約注文で昼間に発注できる |
| STEP5 | 約定を確認する──約定通知と口座残高、配当の入金を確認 | 配当は米ドルで支払われ、米国10%+日本20.315%の税金が引かれる |
全体像だけつかみたい方は、この早見表までで流れが追えます。ここから先は、各ステップで何を入力し、何に気をつけるのかを図と表で1つずつ確認していきます。
ヒナコ
トシさん、私、英語もできないしドルも持っていないんですけど……そんな状態でアメリカの株なんて本当に買えるんですか?
トシ
買える。日本のネット証券なら日本語の画面で、日本円のまま、1株から注文できる。英語の決算書を読む必要もない。この記事の5ステップを順に進めれば、初めてでも最初の1株を買うところまで到達できる。まずは、日本株と何が違うのかから確認していく。
米国株投資の基本──日本株と違う4つのこと
結論から言うと、米国株の売買は日本株よりも「小さく始めやすい」仕組みになっています。最大の違いは売買単位です。日本株は原則100株単位(単元株)での取引ですが、米国株には単元株制度がなく、どの銘柄も1株から買えます。1株あたりの金額は株価と為替レートで変わり、銘柄により数千円〜数万円が目安です(2026年7月時点)。
一方で、日本株にはない特徴もあります。米国株は米ドル建ての資産なので、株価だけでなく為替レートの変動も円換算の損益に影響します(詳しくは「為替リスクとどう付き合うか」で解説します)。また、日本株のようなストップ高・ストップ安(値幅制限)がなく、1日の値動きの上限が定められていません。配当は四半期ごと(年4回)に支払う企業が一般的とされ、配当を重視する投資家に受け取りの機会が多い市場です。
表A:日本株との違い4点(優劣ではなく事実の並記)
| 項目 | 米国株 | 日本株 |
|---|---|---|
| 売買単位 | 1株から | 原則100株単位 |
| 取引通貨 | 米ドル(円のままの注文も可) | 日本円 |
| 値幅制限 | なし | あり(ストップ高・ストップ安) |
| 配当の回数 | 年4回が一般的 | 年1〜2回が一般的 |
出典:マネックス証券「米国株の配当金」・マネックス証券FAQ(値幅制限)・SBI証券 外国株式取引ルール(2026年7月21日確認)
この4つの違いを押さえておけば、このあとの手順で迷いません。次のセクションでは、そもそもなぜ多くの投資家が米国株を選ぶのかを、データで短く確認します。
なぜ米国株が選ばれるのか──データで見る3つの理由
米国株が選ばれる理由は、データで3つに整理できます。なお、日本株も2024年2月に日経平均が史上最高値を更新し、2026年7月時点では7万円前後の水準にあります。「日本株か米国株か」の二者択一ではなく、米国市場が持つ固有の強みとして読んでください。
第一に、長期の成長実績です。米国の代表的な株価指数であるS&P500(S&P500とは何かの解説はこちら)は、1996年末の740.74から2026年7月17日終値の7457.69まで、約30年で約10倍に成長しました(配当を含まない指数値ベース)。過去の実績が将来を約束するものではありませんが、複数の暴落を乗り越えて水準を切り上げてきた事実は、長期投資の対象として評価されてきた理由そのものです。
配当を含まない指数値ベース。起点は1996年末終値740.74、直近は2026年7月17日終値7457.69。途中にITバブル崩壊・リーマンショック・コロナショックによる大きな下落を挟みながら、約30年で約10倍の水準に達しています。出典:FRED(セントルイス連銀)・SEC収載歴史データ(2026年7月21日確認)。過去の実績は将来の成果を保証しません。
第二に、企業の規模と株主還元の文化です。AppleやNVIDIAなど「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれる巨大企業群が市場を牽引しています。AppleとNVIDIAの2社の時価総額合計は、東京証券取引所の全上場企業約3900社の合計(約1385兆円・2026年6月末)をドル換算で上回ります(2026年7月時点・為替160円前後での試算)。また、コカ・コーラやP&Gのように60年以上連続で増配を続ける企業が複数ある増配文化も特徴です(2026年時点。連続増配企業や高配当株の始め方はこちら)。
第三に、人口と市場ウェイトです。米国の人口は3億4178万人(2025年7月推計)で先進国では珍しく増加を続けており、日本は1億2281万人(2026年5月概算)で減少しています。人口は消費と労働力の土台です。さらに、MSCIの全世界株価指数に占める米国の比率は約6割(63.6%・2026年6月末)で、全世界に分散する投資信託を買っても、その中身の6割強は米国株です。
出典:JPX市場別時価総額統計(2026年6月末)・U.S. Census Bureau・総務省統計局・MSCI ACWIファクトシート(いずれも2026年7月21日確認)
最初に決めること──米国株を買う2つのルート
手順に入る前に、一つだけ決めることがあります。米国株への投資には大きく2つのルートがあり、どちらを選ぶかで開く画面も手順も変わるからです。
ルートAは「投資信託を通じて買う」方法です。S&P500や全世界株式(全世界株式(オルカン)の解説はこちら)に連動する投資信託を、NISAのつみたて投資枠などで毎月自動的に積み立てます。個別企業を選ぶ必要がなく、少額の自動積立で米国市場全体の成長に乗る方法で、手間をかけたくない人に向いています。このルートの具体的な積立設定の手順はインデックス投資の始め方で解説しています。どの指数を選ぶか迷う場合はS&P500と全世界株式の選び分けが参考になります。
ルートBは「個別株やETFを直接買う」方法です。Appleの株主になる、特定のETF(ETFの仕組みはこちら)を自分のタイミングで買う、といった選び方ができ、1株単位で金額を調整できます。そのかわり、銘柄選び・注文・為替の判断を自分で行います。
投資信託を通じて買うルートAと、個別株・ETFを直接買うルートB。本記事がこのあと扱うのは、ルートB=「直接買う」ための実務手順です。
本記事がこのあと扱うのは、ルートB=「直接買う」ための実務手順です。どちらのルートでも、株式は価格変動と為替変動により元本割れの可能性がある点は変わりません。
ステップ1 口座を用意する(総合口座+外国株式口座・NISA口座)
最初のステップは口座の用意です。米国株の取引には、証券会社の総合口座に加えて「外国株式取引口座」が必要です。名前は仰々しいですが、多くのネット証券では、総合口座を開設すると外国株式取引口座も自動的に、または同時申込で開設でき、口座開設料・維持費もかかりません(2026年7月時点)。すでに総合口座を持っている場合も、会員画面から外国株式口座を追加で開設できます。
このとき一緒に決めておきたいのが「どの口座区分で買うか」です。非課税で買いたいならNISA口座が選択肢になります(制度の全体像は新NISAの解説へ。米国株ならではの注意点は本記事の「NISAで米国株を買うときの注意点」で扱います)。課税口座で買うなら、税金の計算と納税を証券会社に任せられる特定口座(源泉徴収あり)を選ぶと、原則として確定申告が不要になります(特定口座と源泉徴収の仕組みはこちら)。
表B:口座と枠の選択
| 口座・枠 | 何ができるか | ポイント |
|---|---|---|
| 総合口座+外国株式口座 | 米国株取引の土台 | 自動開設または同時申込の会社が主流で、開設料・維持費は無料(2026年7月時点) |
| NISA口座(成長投資枠) | 米国の個別株・ETFを非課税で購入 | つみたて投資枠は対象の投資信託のみで個別株は買えない |
| 特定口座(源泉徴収あり) | 課税口座での取引 | 税金の計算・納税を証券会社が代行し、原則確定申告不要 |
出典:SBI証券FAQ(WEB申込は外国株式口座を自動開設)・マネックス証券 口座開設ページ・楽天証券 外国証券取引口座の案内(2026年7月21日確認)
口座開設の申込はスマホと本人確認書類(マイナンバー関連書類など)があれば完結し、ネット申込なら最短翌営業日〜1週間程度で取引を始められる会社が主流です(申込方法により異なります)。
ステップ2 資金を入れる──円のままでいいかを決める
口座ができたら資金を入れます。ここで初めての人がつまずくのが「先にドルへ両替しておく必要があるのか」という点ですが、結論はシンプルで、両替しなくても買えます。米国株の代金の払い方(決済方法)には次の2つがあり、注文時にどちらかを選ぶだけです。
どちらの方式でも、同じ株を買えることに変わりはありません。違いが出るのは「円とドルを交換する場所とタイミング」、つまり為替コストと為替レートの適用時点です。なお、かつては両替コストの節約術が語られましたが、2026年7月時点では主要ネット証券の米ドル為替手数料は0銭(無料)が主流になっており、初心者が両替コストのために複雑な手順を踏む必要性は小さくなっています(会社・取引方向により異なり、売却時に25銭かかる会社もあります。詳しくは「手数料の全体像」)。
どちらの方式でも同じ株を買えます。違いは円とドルを交換するタイミングと、為替コスト・レートの適用時点です。2026年7月時点、主要ネット証券の米ドル為替手数料は0銭が主流です(会社・取引方向により異なる)。出典:SBI証券FAQ(決済方法)・各社公式手数料ページ(2026年7月21日確認)。
ステップ3 銘柄を探して注文する──画面で聞かれる6項目
いよいよ注文です。米国株の注文画面は日本株より項目が多く見えますが、実質的に聞かれるのは6項目だけです。上から順に一つずつ選んでいけば迷いません。
ティッカーシンボルの読み方(AAPL等)
米国株の銘柄検索には、日本株の証券コード(4桁の数字)の代わりに「ティッカーシンボル」というアルファベットの略称を使います。たとえばAppleは「AAPL」、Microsoftは「MSFT」です。とはいえ暗記は不要で、日本のネット証券なら検索窓に日本語の会社名を入れれば候補が表示されます。ETF(上場投資信託)にも同様にティッカーがあり、注文手順は個別株と同じです。
表C:注文画面で聞かれる6項目
| 項目 | 何を入力・選択するか | 迷ったときの考え方 |
|---|---|---|
| ① 銘柄(ティッカー) | 買いたい銘柄を検索して選ぶ | 日本語名での検索でも候補が出る |
| ② 株数 | 何株買うか(1株から) | 予算÷(株価×為替レート)で無理のない株数に |
| ③ 注文方法 | 成行(値段を指定しない)か指値(上限価格を指定) | 初回は「この価格までなら買う」と決められる指値が落ち着いて発注しやすい |
| ④ 注文期間 | 当日限りか、期間を指定するか | 指値で数日待つなら期間指定が便利 |
| ⑤ 決済方法 | 円貨決済か外貨決済か | ドルを持っていなければ円貨決済でよい(ステップ2参照) |
| ⑥ 口座区分 | NISA(成長投資枠)か特定口座か | 非課税で買うならNISA。課税口座なら特定(源泉あり)が申告の手間が少ない |
※注文の有効期間は当日限りのほか、最長90日まで指定できる会社が主流です(選択肢・上限は会社により異なります)。出典:SBI証券FAQ・マネックス証券・楽天証券 各公式ヘルプ(2026年7月21日確認)
6項目を入力して注文内容を確認すれば発注完了です。市場が開いていない時間帯(日本の昼間)でも、予約注文として受け付けられ、次の立会時間に執行されます。では、その「市場が開く時間」はいつなのか。次のステップで確認します。
ステップ4 取引時間を知る──日本時間でいつ買えるか
米国市場(ニューヨーク証券取引所・NASDAQ)の立会時間は現地時間9時30分〜16時00分です。日本との時差の関係で、日本時間では深夜〜早朝にあたります。さらに米国には夏時間(サマータイム)があり、時期によって1時間ずれる点だけ押さえてください。
表D:取引時間の日本時間換算
| 区分 | 現地時間 | 日本時間 |
|---|---|---|
| 標準時間(冬時間) | 9時30分〜16時00分 | 23時30分〜翌6時00分 |
| 夏時間 | 9時30分〜16時00分 | 22時30分〜翌5時00分 |
※夏時間はおおむね毎年3月〜11月(2026年は3月8日〜11月1日)に適用されます。出典:NYSE公式 Markets Hours & Calendars(2026年7月21日確認)
「深夜しか取引できないのか」と不安になるかもしれませんが、前のステップで見たとおり、注文自体は日本の昼間に予約として出せます。指値注文にしておけば、寝ている間に指定価格へ届いたときだけ約定します。また、証券会社によっては立会時間の前後に取引できる「プレ・マーケット」「アフター・マーケット」(時間外取引)を提供しており、対応する会社では日本の夜の早い時間帯から指値で取引できます(2026年7月時点)。
もう一つ、日本と祝日が異なる点にも触れておきます。米国市場は独立記念日や感謝祭など米国の祝日に休場し、日本の祝日には通常どおり開いています。「注文したのに約定しない」ときは、休場日でないかを確認してください。
ステップ5 約定を確認する──買ったあとのお金と配当の流れ
注文が成立(約定)すると、証券会社から約定通知が届き、会員画面の口座残高に保有株として反映されます。円貨決済で買った場合は、約定金額に応じた円が差し引かれ、必要な両替は自動で処理されています。ここまでで「最初の1株を買う」は完了です。
買ったあとのお金の流れも確認しておきましょう。保有中の米国株から配当が出る場合、配当金は米ドルで支払われ、税金(詳細は次のセクション)が差し引かれたうえで証券口座に入金されます。外貨のまま次の買付に使うことも、円に両替することもでき、受取通貨をあらかじめ選べる会社もあります。配当利回りの見方は配当利回りの読み方で解説しています。
売却も手順は購入と同じで、注文画面で株数と注文方法を選ぶだけです。売却代金は米ドルで受け取るか円に両替するかを決済方法で選べます。ここまでが5ステップの全体像です。残りのセクションでは、米国株と長く付き合ううえで避けて通れない「税金」「NISA」「為替」「手数料」を順に整理します。
ヒナコ
手順は分かったんですけど……取引時間が日本の夜中ですよね。毎回、夜中に起きて注文しないとダメなんですか?
トシ
起きる必要はない。注文は市場が閉まっている昼間でも予約として出せる。成行なら次の立会開始後に、指値なら指定した価格に届いたときに執行される。翌朝に約定通知を確認すれば十分だ。生活リズムを崩してまで張り付くものではない。
米国株の税金──配当の二重課税と外国税額控除
米国株の税金で押さえるポイントは、次の3つに整理できます。米国株ならではの癖が集まった、この記事で一番丁寧に読んでいただきたいセクションです。
- ① 売却益(譲渡益)は日本でのみ課税される
- ② 配当は米国と日本で二重に課税される
- ③ 二重課税は確定申告の「外国税額控除」で一部を取り戻せる
まず売却益です。米国株を売って得た利益は、米国側では課税されず、日本で20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が課税されます。特定口座(源泉徴収あり)なら証券会社が源泉徴収するため、原則として確定申告は不要です(特定口座の仕組みと確定申告の関係)。
次に配当です。配当には、まず米国で日米租税条約に基づく10%が源泉徴収され、その残りに対して日本で20.315%が課税されます。配当100ドルで計算すると、米国で10ドルが引かれて90ドルになり、90ドルに20.315%(約18.28ドル)が課税されて、手取りは約71.7ドルです。つまり配当の約28%が税金として引かれる構造で、これが「二重課税」と呼ばれるものです。
米国で10%、日本で20.315%が順に引かれ、手取りは約71.7ドルになります。確定申告の外国税額控除を使うと、米国で納めた10%分の一部が限度額の範囲で戻ります(全額が戻るとは限りません)。税率は2026年7月時点。出典:財務省(日米租税条約)・国税庁タックスアンサーNo.1240・No.1463。NISA口座は日本側非課税のため、この控除は使えません(次セクション参照)。
この二重課税を調整する制度が「外国税額控除」です。確定申告で申請すると、米国で納めた税額を、その年の所得税額などに応じた限度額の範囲で日本の所得税から差し引けます。限度額は所得の構成によって変わるため全額が戻るとは限りませんが、控除しきれなかった分は3年間の繰越が認められています。
申告には外国税額控除に関する明細書などの添付が必要です。ご自身の所得状況でいくら戻るかなど個別の税務については、税務署または税理士に確認してください。
表E:確定申告の要否分岐
| あなたの状況 | 確定申告 | 補足 |
|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり)で取引のみ | 原則不要 | 税金は源泉徴収で完結(二重課税は残ったまま) |
| 配当の外国税額控除を受けたい | 申告する | 米国10%分の一部が所得税から控除される |
| NISA口座での取引 | 対象外 | 日本側が非課税のため申告の対象にならない(次セクション参照) |
出典:国税庁タックスアンサーNo.1240「居住者に係る外国税額控除」・No.1463「株式等を譲渡したときの課税」(2026年7月21日確認)
NISAで米国株を買うときの注意点
NISA口座でも米国株は買えます。ただし「どの枠で買えるか」と「税金がどこまで非課税になるか」に、米国株ならではの癖が2つあります。ここだけは買う前に知っておいてください。
1つ目は枠の違いです。米国の個別株・ETFを買えるのは「成長投資枠」です。「つみたて投資枠」の対象は積立・分散投資に適した一定の投資信託のみで、個別株は買えません。S&P500連動の投資信託をつみたて投資枠で買う(ルートA)ことと、Apple株を成長投資枠で買う(ルートB)ことは、同じNISAでも使う枠が異なります。制度の全体像(年間投資枠や非課税保有限度額)は新NISAの仕組みの解説で確認してください。
2つ目は税金です。NISA口座で受け取る配当は、日本側の20.315%は非課税になりますが、米国側の10%の源泉徴収は残ります。NISAは日本の制度なので、米国の税金までは非課税にできないためです。さらに注意したいのは、この10%を取り戻す手段がないことです。外国税額控除は「二重課税の調整」の制度であり、NISAでは日本側が非課税で二重課税が発生していないため、控除の適用を受けられません。配当100ドルなら、NISA口座での手取りは90ドルです。
出典:金融庁 NISA特設ウェブサイト・SBI証券FAQ(NISA口座の外国税額控除)(2026年7月21日確認)
為替リスクとどう付き合うか
米国株はドル建て資産なので、円とドルの為替レートが円換算の損益を左右します。仕組みは単純で、買ったときより円高になれば円換算の資産価値は目減りし、円安になれば膨らみます。たとえば1ドル160円のときに1000ドル分(16万円)の株を買い、株価が変わらないまま1ドル144円(10%の円高)になると、円換算では14万4000円に減ります(試算)。株価が上がっていても、為替次第で円ベースでは元本割れすることがある。これが為替リスクです。
では、円安のときは買うのを控えるべきなのでしょうか。この問いに対して本記事は「為替のタイミング予測はしない」という立場を取ります。為替レートが今後どちらへ動くかを継続的に当てることは、プロの投資家でも困難だからです。円高を待つ判断は、それ自体が「これから円高になる」という予測への賭けになってしまいます。
タイミングを読む代わりに検討したいのが「時間分散」です。購入時期を複数回に分けると、円高の時期と円安の時期の両方で買うことになり、購入レートが平均化されて高値掴みへの偏りを抑えられます。毎月一定額を買い続ける方法の理屈と具体的な試算はドルコスト平均法の解説に譲ります。なお、為替変動の影響を抑える「為替ヘッジあり」の投資信託も存在しますが、円金利がドル金利より低い局面では金利差に相当するヘッジコストが継続的にかかります。
ヒナコ
2026年の今って円安だと聞きます。円高になるまで待ってから始めた方がいいんでしょうか?
トシ
その気持ちは分かる。ただ、為替の先行きはプロでも当てられない。待つという判断も「これから円高になる」という予測に賭けることに変わりはない。タイミングを読むより、購入時期を分けて平均を取る時間分散が現実的だ。予測ではなく、仕組みでリスクと付き合うことだ。
手数料の全体像──かかるコストは3種類
米国株投資でかかるコストは、整理すると3種類だけです。それぞれ「いつ・何に対してかかるのか」を押さえれば、全体を見通せます。
表F:米国株投資のコスト3種類
| コストの種類 | 目安(2026年7月時点) | 発生するタイミング |
|---|---|---|
| 取引手数料 | 約定代金の0.495%(税込)・上限22ドル(税込)が主要ネット証券の骨格。NISA口座なら米国株売買手数料を無料とする会社が主流 | 買うとき・売るとき |
| 為替コスト | 米ドルの為替手数料は0銭(無料)が主流。ただし会社・取引方向により異なり、売却時(ドル→円)に25銭かかる会社もある | 円とドルを両替するとき |
| 保有コスト | 投資信託・ETFの場合の信託報酬など(例:S&P500連動の低コスト投信で年率0.08140%以内) | 保有している間ずっと |
出典:SBI証券・楽天証券・マネックス証券 各公式手数料ページ・三菱UFJアセットマネジメント月報(2026年7月21日確認)
個別株を直接買う場合、保有中のコストは基本的にかからず、売買時の取引手数料と両替時の為替コストだけを見ればよい構造です。なお、売却時には別途SEC Fee(米国の取引所関連費用)が少額かかります。
ここまで「種類」を解説しましたが、具体的な手数料体系や取扱銘柄数は証券会社ごとに異なり、改定もあります。会社ごとの詳しい比較は米国株の証券会社比較にまとめているので、口座選びの際はそちらを確認してください。本記事では、米国株投資の入り口として口座開設の候補になりやすい2社を紹介します。
SBI証券──米ドルのリアルタイム為替手数料が0銭で、NISA口座なら米国株の売買手数料も無料です(2026年7月時点)。投資信託の積立から個別株まで一つの口座で完結させたい人の候補になります。
マネックス証券──無料の分析ツール「銘柄スカウター米国株」で日本語の業績データを確認でき、プレ・アフターの時間外取引にも対応しています(2026年7月時点)。個別株をじっくり選びたい人の候補になります。
米国株投資のリスクと限界
ここまで手順を解説してきましたが、始める前にリスクの全体像を一度まとめておきます。良い面だけを見て始めると、最初の下落で慌てて手放すことになりかねないからです。
第一に価格変動リスクです。株価は企業業績や景気、金利などで大きく変動し、元本保証はありません。米国株には日本株のようなストップ高・ストップ安(値幅制限)がないため、悪材料が出た銘柄が1日で大きく下落することもあります。一方、市場全体が急落した場合には取引を一時停止する仕組み(サーキットブレーカー。S&P500の下落率7%・13%・20%で発動)や、個別銘柄の価格急変時に取引を一時停止する制度が設けられています。
第二に為替リスクです。「為替リスクとどう付き合うか」で見たとおり、株価が上がっても円高で円換算の損益がマイナスになることがあります。株と為替、2つの変動を同時に引き受けるのがドル建て投資です。
第三に情報と時差のハンデです。日本語の情報環境は年々充実しているものの、決算発表や重要ニュースの一次情報は英語で、市場が動くのは日本の深夜です。翌朝に状況が大きく変わっている可能性は、日本株より高いと考えておくべきです。
第四に集中のリスクです。米国は世界の株式指数の6割強を占める巨大市場ですが、それでも一つの国への投資であることに変わりはありません。米国の景気後退や政策変更の影響を全面に受けます。過去約30年で約10倍という実績(「なぜ米国株が選ばれるのか」)も、その間に何度も大きな下落を挟んでおり、今後も同じペースで成長する保証はありません。
これらのリスクは、なくすことはできませんが、長期・分散・余裕資金という基本で影響を抑えることはできます。リスクを知ったうえで、自分に向いているかを次のセクションで確認してください。
出典:SEC Investor.gov(サーキットブレーカー・個別銘柄の取引一時停止)(2026年7月21日確認)
米国株投資が向く人・向かない人
最後に、ここまでの内容を「向き・不向き」の形で整理します。優劣ではなく、性格と目的の相性の問題です。
米国株投資(直接購入・ルートB)が向く人
- 応援したい企業・保有したい企業が米国にあり、株主としてその成長に付き合いたい人
- 1株数千円〜数万円の少額から、自分のペースで買い増していきたい人
- 配当を受け取る楽しみを重視し、増配文化のある市場に魅力を感じる人
- 税金や為替の仕組みを学ぶことを負担ではなく面白さと感じられる人
向かない人(または投資信託ルートAが向く人)
- 銘柄選びに時間を使いたくない人、何を買うか決められない人
- 日々の値動きや為替のニュースで気持ちが大きく揺れてしまう人
- 生活費や近い将来に使う予定のあるお金で投資しようとしている人
- 確定申告や外国税額控除といった手続きに一切関わりたくない人
「向かない」に当てはまった人も、米国株投資そのものを諦める必要はありません。投資信託を通じた自動積立(インデックス投資の始め方)なら、銘柄選びも深夜の取引時間も為替の両替も意識せずに米国市場へ投資できます。自分に合うルートを選ぶことが、長く続けるための一番の工夫です。
よくある質問
記事全体を通して、読み終えたあとに残りやすい疑問を7つに絞って答えます。
Q1. 米国株はいくらから買えますか?
1株から買えます。米国株には日本株のような100株単位の制度がなく、1株あたりの金額は株価と為替レートで決まります。銘柄により数千円〜数万円が目安です(2026年7月時点)。
▶ 日本株との違いは本文「米国株投資の基本」を参照してください。
Q2. 取引時間が深夜ですが、夜中に起きないと買えませんか?
起きる必要はありません。市場が閉まっている日本の昼間でも予約注文を出せます。取引時間は日本時間で標準時間23時30分〜翌6時、夏時間22時30分〜翌5時ですが、指値注文にしておけば指定価格に届いたときに自動で約定します。
▶ 換算表は本文「ステップ4 取引時間を知る」の表Dを参照してください。
Q3. ドルを持っていなくても、円のままで買えますか?
買えます。注文時に「円貨決済」を選べば、円からドルへの両替は約定にあわせて証券会社が自動的に行います。あらかじめ自分でドルに両替しておく「外貨決済」との違いは、両替のタイミングと為替レートの適用時点です。
▶ 2方式の図解は本文「ステップ2 資金を入れる」を参照してください。
Q4. NISAで米国株は買えますか?
成長投資枠で個別株・ETFを買えます(つみたて投資枠は対象の投資信託のみ)。NISAでは日本側の税金20.315%が非課税になりますが、配当にかかる米国側の10%は差し引かれ、この10%を取り戻す外国税額控除も使えません。
▶ 詳しくは本文「NISAで米国株を買うときの注意点」を参照してください。
Q5. 配当の税金はどうなりますか?確定申告は必要ですか?
配当はまず米国で10%が源泉徴収され、残りに日本で20.315%が課税されます(配当100ドルなら手取り約71.7ドル)。特定口座(源泉徴収あり)なら原則確定申告は不要ですが、確定申告で外国税額控除を申請すると米国分の一部を取り戻せます。
▶ 税金フローの図解と要否分岐は本文「米国株の税金」を参照してください。
Q6. 英語ができなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。日本のネット証券なら取引画面は日本語で、銘柄検索も日本語の会社名で行えます。業績データを日本語で確認できる無料の分析ツールを提供する会社もあり、英語の資料を読まなくても取引は完結します。
▶ 銘柄検索のやり方は本文「ステップ3 銘柄を探して注文する」を参照してください。
Q7. 配当はドルと円のどちらで受け取りますか?
配当は米ドルで支払われ、税金が引かれたうえで証券口座に入金されます。外貨のまま次の買付に使うことも、円に両替することもでき、受取通貨をあらかじめ選べる会社もあります。
▶ 配当受け取りまでの流れは本文「ステップ5 約定を確認する」を参照してください。
まとめ
米国株の始め方を、口座の用意から約定の確認まで5つのステップで解説してきました。振り返ると、手順そのものに難しい要素はありません。口座を用意し、円のまま資金を入れ、ティッカーで銘柄を探して6項目を入力すれば、最初の1株は買えます。深夜の取引時間は予約注文と指値で乗り越えられ、英語もドルも準備は不要です。
一方で、米国株には米国株の「作法」がありました。配当には米国10%+日本20.315%の二重課税があり、外国税額控除で一部を取り戻せること。NISAでは日本側が非課税になっても米国の10%は残ること。そして株価と為替という2つの変動を引き受ける以上、元本割れの可能性とは長く付き合っていくことになります。この作法を最初に知っているかどうかが、続けられる投資家とそうでない投資家の分かれ目だと考えています。
仕組みは、もうあなたの手の中にあります。あとは金額でも銘柄でもなく、「自分はどのルートで、どんな距離感で米国市場と付き合うか」を決めるだけです。あなたの最初の1株は、どの企業でしょうか。
信頼できる情報源
本記事は、以下の一次情報をもとに作成しています(いずれも2026年7月21日確認)。
税金・制度について
- 国税庁 タックスアンサーNo.1240「居住者に係る外国税額控除」
- 国税庁 タックスアンサーNo.1463「株式等を譲渡したときの課税」
- 財務省「日米租税条約のポイント」(配当の源泉地国限度税率10%)
- 金融庁 NISA特設ウェブサイト(成長投資枠・つみたて投資枠の対象商品)
市場・統計データについて
- NYSE:Markets Hours & Calendars(取引時間・休場日)
- 米国証券取引委員会(SEC)Investor.gov(サーキットブレーカー)
- FRED(セントルイス連銀)S&P500
- 日本取引所グループ(JPX)市場別時価総額統計
- MSCI ACWI Index ファクトシート(PDF)
- U.S. Census Bureau 人口推計
- 総務省統計局 人口推計(PDF)
取引の仕組み・手数料について
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