iDeCo(イデコ)の始め方【図解】加入資格・掛金・申込手続きの流れ
iDeCo(イデコ)の始め方を図解で整理します。加入資格・掛金の上限・申込に必要なもの・商品の選び方を、順に確認していきます。
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※iDeCoの運用商品には、元本が確保されていないものがあります。受け取る額は運用成績によって変動します。積み立てた資産は、原則として60歳になるまで引き出せません。加入時と毎月に手数料もかかります。本記事は特定の金融機関・金融商品の勧誘を目的としたものではありません。制度の内容は2026年7月21日時点のもので、2026年12月1日には拠出限度額と加入可能年齢の改正の施行が予定されています(本記事作成時点では未施行)。
iDeCoは、公的年金に上乗せする自分でつくる年金です。掛金の額も、運用する商品も、受け取り方も自分で決めます。ただし「決められる範囲」は制度の側が先に決めていて、申し込む前に確認しておく順番があります。最初のつまずきは、ほぼ次の4点に集約されます。
- 掛金の上限は、職業と勤務先の企業年金で変わります:企業年金がある会社員・公務員の上限は「5.5万円 −(企業型DCの事業主掛金額 + DB等の他制度掛金相当額)」で決まります。最大でも月2.0万円で、それを下回ることもあります
- 掛金額の変更は年1回まで:引き落としができなかった月の追納もできません。だからこそ、最初に決める金額が長く効いてきます
- 原則として60歳になるまで引き出せません:しかも受け取りを開始できる年齢は、加入していた期間によって60歳から65歳まで段階的にずれます
- 手数料がまるごと0円になることはありません:運営管理機関の手数料が0円でも、加入時に2829円、掛金を拠出する月は毎月171円(拠出しない月は66円)がかかります
そして、入口の税制優遇(掛金の全額所得控除)は、課税所得がある人にだけ効きます。国民年金基金連合会も「課税所得がない方は、掛金の所得控除は受けられません」と明記しています。ここを先に押さえておくと、以降の判断がぶれません。
| ステップ | やること | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| STEP1 | 自分が加入できるかを確認する | 国民年金の被保険者であることが前提。保険料の免除・猶予を受けている場合などは加入できない |
| STEP2 | 掛金の額を決める(月5000円以上・1000円単位) | 上限は職業と勤務先の企業年金で変わる。変更は年1回まで |
| STEP3 | 運営管理機関(iDeCoを取り扱う金融機関)を1社選ぶ | 1人1社しか選べない。後から変えるときに手数料がかかることがある |
| STEP4 | 加入申出書と必要書類を提出する | 個人払込なら事業主の証明は不要(2024年12月〜)。給与天引きを選ぶ場合は今も必要 |
| STEP5 | 運用商品と配分を決める | 一定期間内に選ばないと、運営管理機関の指定運用方法が購入されることがある |
全体像だけをつかみたい方は、この早見表までで流れが追えます。ここから先は、各ステップで実際に何を確認して何を決めるのかを、図と表で1つずつ見ていきます。
ヒナコ
iDeCoは老後のお金を準備できる制度だと聞きました。でも「60歳まで引き出せない」とも聞いて、申込ページを開いたまま閉じてしまいました。何から確認すればいいんでしょうか。
トシ
順番がある。iDeCoは、商品を選ぶより先に「自分が加入できるか」と「自分の上限額はいくらか」を確かめる制度だ。上限は職業と勤務先の企業年金で変わる。しかも掛金額の変更は年1回に限られる。最初に決めた金額が、そのまましばらく続くことになる。
ヒナコ
上限が人によって違うんですね……。それって、会社に聞かないと分からないということですか?
トシ
勤務先に企業年金があるなら、その掛金額が計算に関わってくる。ただし書類の面では負担が軽くなった。2024年12月から、個人の口座で掛金を払う方式なら、会社に証明書を書いてもらう手続きは要らない。この記事では、確認する順番と、どの工程で待つことになるのかを一つずつ見ていく。
iDeCo(イデコ)とはどんな制度か
まず、iDeCoが何をする制度なのかを整理します。この章で分かるのは、iDeCoで自分が決めることは何か、そして銀行預金と何が決定的に違うのかの2点です。
iDeCoは、公的年金に上乗せする私的年金の制度です。国が用意した年金の外側に、自分専用の積み立て口座をもう1つ持つ、と考えると近いでしょう。掛金を出すのは自分、商品を選ぶのも自分、受け取り方を決めるのも自分。自分で決めることが3つあるのが、この制度のいちばんの特徴です。
- いくら出すか:月5000円から1000円単位で決めます。上限は職業や勤務先の企業年金の有無で変わります(→ 掛金はいくらから、いくらまで)
- 何で運用するか:元本確保型の商品(定期預金・保険商品)と投資信託の2系統から選びます(→ 運用商品の選び方)
- どう受け取るか:一時金として一括、年金として分割、またはその併用から選びます。併用を取り扱っているかは運営管理機関によります(→ いつ・いくらから受け取れるか)
そして、預金といちばん違うのがここです。iDeCoは、原則として60歳にならないと引き出せません。
国民年金基金連合会も「原則として60歳にならないと個人別管理資産(拠出した掛金とその運用益)を引き出すことができません」と説明しています。これは制度の欠陥ではありません。老後資金をつくるための仕組みとして、最初からそう設計されているという位置づけです。裏を返せば、近い将来に使う予定のあるお金を入れる場所ではないということでもあります。
なお、iDeCoの加入者は2026年1月末時点で387万人です(厚生労働省/2026年7月21日確認。加入者数は変動します)。
引き出しの自由度を優先したい場合は、いつでも売却できる別の非課税制度もあります。制度の仕組みは 新NISAとは にまとめています。
自分は加入できるか──加入資格と年齢の条件
制度の輪郭がつかめたら、次は入口の条件です。この章で分かるのは、iDeCoに加入できる人の要件と、区分ごとの年齢の上限、そして加入できないケースです。
iDeCoの基本要件はシンプルで、国民年金の被保険者であることです。加えて、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金をすでに受給していないことが条件になります(厚生労働省)。iDeCo公式サイトはこれを「基本的に20歳以上65歳未満の全ての方(※一定の条件あり)が加入でき」「掛金は65歳になるまで拠出可能」と表現しています。
ただし「65歳未満」は全員に当てはまるわけではありません。被保険者の区分ごとに、年齢の条件が異なります。
- 第1号被保険者(自営業・フリーランス・学生など):60歳未満
- 第2号被保険者(会社員・公務員):65歳未満
- 第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている配偶者。専業主婦(夫)など):60歳未満
- 任意加入被保険者(本記事では、手続きの説明で「第4号加入者」と表記します):65歳未満(保険料の納付済期間等が480月未満の方)
2022年5月の改正で、60歳以上65歳未満の第2号被保険者・任意加入被保険者・国民年金に任意加入している海外居住者も加入できるようになりました(施行済)。さらに2026年12月1日からは「70歳未満」へ拡大される予定です(本記事作成時点では未施行)。詳しくは 2026年12月からの改正で変わること で扱います。
加入できないケースもあります
要件を満たしていても、次に当てはまる場合は加入できません(国民年金基金連合会)。
- 国民年金保険料の免除・猶予を受けている方
- 農業者年金の被保険者
- 日本国内に住所を有しなくなった方 など
もう1点、加入前に知っておきたいことがあります。iDeCoは「60歳になったら誰でも受け取れる」制度ではありません。受給を開始できる年齢は、加入していた期間(通算加入者等期間)によって60歳から65歳まで段階的に変わります。始める年齢が遅いほどここが効いてくるため、受給開始年齢の逆算で表にして扱います。
掛金はいくらから、いくらまで
加入できることが分かったら、次は金額です。この章で分かるのは、掛金の下限と単位、区分別の上限(拠出限度額)、そして「決めた金額をあとから変えられる回数」です。
掛金の下限は月額5000円で、そこから1000円単位で設定します(国民年金基金連合会)。上限は区分によって大きく変わります。
表A|区分別の掛金上限(月額)
| 区分 | 現行の上限(2026年11月分の掛金まで) | 2026年12月分の掛金から(予定・未施行) |
|---|---|---|
| 第1号被保険者・任意加入被保険者 | 6.8万円(国民年金基金の掛金・国民年金付加保険料と合算して) | 7.5万円(国民年金基金と合わせて) |
| 第2号被保険者(企業年金のない会社員) | 2.3万円 | 6.2万円 |
| 第2号被保険者(企業年金のある会社員・公務員) | 最大2.0万円。実額は「5.5万円 −(各月の企業型DCの事業主掛金額 + DB等の他制度掛金相当額)」で決まる | 企業年金と合わせて6.2万円(iDeCo単独の2.0万円という上限は廃止される予定) |
| 第3号被保険者 | 2.3万円 | 2.3万円(据え置きの見込み) |
出典:厚生労働省「私的年金制度、iDeCoの改正のポイント」/同「iDeCoがパワーアップします!(令和8年12月から)」/同「DC拠出限度額(令和8(2026)年12月〜)」/同 2024年12月施行チラシ(DB等の他制度に加入している方へ/公務員の皆さまへ)/財務省「令和7年度税制改正の大綱」(いずれも2026年7月21日確認)
※「2026年12月分の掛金から」の欄に示した改正は、本記事作成時点で未施行です。内容・時期が変わる可能性があります。
※第3号被保険者について、財務省「令和7年度税制改正の大綱」一 6 その他(1)④ハは、月額6.2万円への引き上げの対象から第1号被保険者と第3号被保険者を明文で除いています。第3号被保険者の掛金の上限は据え置きとなる見込みですが、施行前にiDeCo公式サイトおよび申込先の運営管理機関の案内でご確認ください。
企業年金がある人の上限は「計算」で決まります
表Aの3行目が、いちばん分かりにくいところです。企業型DCやDB(確定給付企業年金)、公務員の共済に加入している方の上限は固定額ではありません。5.5万円から、勤務先が出している掛金の分を差し引いた残りになります。
この計算方法は、2024年12月分(2025年1月引落分)から変わりました。それまで一律「月額2.75万円」で評価されていた他制度の掛金相当額が、各制度ごとの個別評価になったためです。この改正で上限は月1.2万円から最大2.0万円へ引き上げられました。一方で、勤務先の掛金が大きい場合は2.0万円に届かないという結果にもなります。
掛金の納め方と、変更の回数
- 年単位拠出:平成30年1月から、年1回以上、任意に決めた月にまとめて拠出する方法も選べます
- その例外:DB等の他制度に加入している方(公務員を含む)は、2024年12月以降毎月定額の拠出のみになりました。年単位拠出のままだと掛金の拠出が一時停止されます
- 変更は年1回:掛金額の変更は、12月分の掛金から翌年11月分の掛金までを1区切りとして年1回に限られます(実際の納付月は1月〜12月)
- 追納はできません:残高不足などで引き落とせなかった場合、後からその月の分を納めることはできません
掛金額を決める前に:iDeCoの資産は原則として60歳になるまで引き出せません。掛金額の変更は年1回に限られ、引き落としができなかった月の追納もできません。生活費や、数年以内に使う予定のあるお金とは切り分けたうえで、続けられる金額から始めるという考え方が現実的です。金額は後から増やすこともできます(変更は年1回まで)。
参考までに、実際の加入者の平均掛金額を見ておきます。企業年金のない第2号被保険者(上限2.3万円)で13774円、企業年金のある第2号被保険者(上限2.0万円)で16483円です(2025年12月拠出分/厚生労働省・国民年金基金連合会調べ)。上限いっぱいで拠出している人ばかりではない、というのが実際のところです。
掛金額ごとに税負担がどのくらい軽くなるかの目安は iDeCoシミュレーション で試算できます。試算は前提条件によって結果が変わるため、目安としてご覧ください。
2026年12月からの改正で変わること
ここまで見てきた掛金の上限は、これから大きく変わる予定です。この章で分かるのは、2026年12月に予定されている改正の中身と、その改正が実際の掛金に反映される月です。この2つは同じ月ではありません。
根拠となる法律(社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律)は2025年6月13日に成立し、厚生労働省は施行を2026年12月1日(予定)としています。税制面についても、財務省「令和7年度税制改正の大綱」(令和6年12月27日閣議決定)で、確定拠出年金法等の改正を前提に現行の税制上の措置を引き続き適用する旨が示されています。ただし本記事作成時点(2026年7月21日)では未施行であり、以下は「予定されている内容」として読んでください。
変わる予定の内容
- 掛金の上限(拠出限度額):第1号被保険者・任意加入被保険者は6.8万円 → 7.5万円(国民年金基金と合わせて)。企業年金のない第2号被保険者は2.3万円 → 6.2万円。企業年金のある第2号被保険者は「企業年金と合わせて5.5万円」→「企業年金と合わせて6.2万円」となり、iDeCo単独の2.0万円という上限は廃止される予定です
- 企業型DCの拠出限度額:5.5万円 → 6.2万円
- 国民年金基金の掛金上限:6.8万円 → 7.5万円(iDeCoと国民年金基金の共通の枠が7.5万円になります)
- 加入可能年齢:働き方にかかわらず70歳になるまで加入・拠出できるようになります。対象は①iDeCo加入者 ②iDeCo運用指図者 ③企業年金からiDeCoに資産を移換する方で、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない方などです
- 経過措置:令和11年(2029年)11月末までは、上記の要件に該当しない60歳以上70歳未満の方でも新たにiDeCoに加入できます(老齢基礎年金の受給者等、一部を除く)
- 第5号加入者の新設:60歳以上70歳未満で国民年金被保険者以外の方のうち、上記①〜③のいずれかに該当し、老齢基礎年金・iDeCoの老齢給付金を受給しておらず、マッチング拠出を実施していない方が対象になります。拠出限度額は原則6.2万円です
「2026年12月に上限が上がる」と聞くと、その月の家計から増額できるように感じます。実際には、掛金は毎月分を翌月26日に口座振替する仕組みです。そのため2026年12月分の掛金=2027年1月26日の引落分から、新しい上限が反映される見込みです。加えて、掛金額の変更は12月分から翌年11月分までを1区切りとして年1回に限られます。これから始める方は「今の掛金をいくらにするか」と「改正後にいつ見直すか」を、この2つの日付の間で考えることになります。
これから始める人が確認しておきたいこと
改正の内容そのものより、実務で効いてくるのは手続きの時期です。マネックス証券は2026年5月14日の告知で「具体的なお手続き方法についての詳細は公表されておりません」と明記しています。つまり本記事作成時点では、増額したい人が何月までに何を出せばよいのかが分かっていません。
税制優遇は3段階──ただし効果が及ばない人もいる
掛金の話が済んだところで、iDeCoが「税制優遇のある制度」と呼ばれる理由を確認します。この章で分かるのは、優遇が働く3つの場面と、そのうち1つは人によって効果がゼロになるという事実です。
iDeCoの税制優遇は、お金を出すとき・増えるとき・受け取るときの3段階に分かれています。
- ①出すとき(拠出時):掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象になります。控除額は「その年に支払った掛金の全額」です(国税庁 タックスアンサー No.1135)
- ②増えるとき(運用時):運用益が非課税になります
- ③受け取るとき(受取時):一時金で受け取ると退職所得とみなされ退職所得控除の対象に、年金で受け取ると公的年金等控除の対象(雑所得)になります
3段階のうち、②と③は加入者に共通して働きます。一方、①だけは人によって効果が変わります。所得控除は「納めている税金を減らす」仕組みなので、そもそも課税所得がなければ減らす対象がありません。iDeCoを検討するときは、自分がどの段階の優遇を受けられるのかを先に確認しておきたいところです。
軽減額は「税率の仮定」つきでしか示せません
所得控除でどのくらい税負担が軽くなるかは、その人に適用される税率で決まります。厚生労働省が公表している例示は次の2つです。
- 毎月5000円を拠出し、所得税率5%・住民税率10%と仮定した場合 → 年間9000円の軽減
- 毎月1万円を拠出し、所得税率20%・住民税率10%と仮定した場合 → 年間36000円の軽減
国民年金基金連合会は「課税所得がない方は、掛金の所得控除は受けられません」と明記しています。さらに「所得控除は、本人の所得からのみ控除されます。配偶者の所得からは控除されません」とも説明しています。
配偶者の扶養に入っている方や、その年の課税所得がない方がiDeCoに加入した場合、①の優遇は働きません。②の運用益非課税と③の受取時の控除だけが残ります。手数料は同じようにかかるため、この点は加入前に確認しておきたいところです。
なお、iDeCo公式サイトには第3号被保険者の所得控除について「年収103万円以上130万円以下」という記述がありますが、この金額の基準は税制改正で変動しています。最新の基準は国税庁の情報でご確認ください。
「掛金が所得控除の対象になるか」と「いつでも引き出せるか」のどちらを優先するかは、人によって答えが変わります。NISAとの優先順位や併用時の考え方は iDeCoと新NISAはどっちを優先?目的別の選び方 で整理しています。
iDeCoにかかる手数料は3層構造
税制優遇の話とセットで確認しておきたいのが手数料です。この章で分かるのは、iDeCoの手数料が誰に払うものなのか、そして掛金のうちいくらが実際に買付けに回るのかです。
iDeCoの手数料は「金融機関に払うもの」だけではありません。3つの層に分かれています。
- 第1層:国民年金基金連合会(全員共通)… 加入時と、掛金を拠出した月にかかります
- 第2層:事務委託先金融機関(信託銀行。全員共通)… 資産を管理する費用として毎月かかります
- 第3層:運営管理機関=申し込んだ金融機関(ここだけが各社で異なります)… 0円の機関もあります
つまり、運営管理機関の手数料が0円でも、iDeCoが「手数料無料」になるわけではありません。第1層と第2層は、どこで申し込んでも共通してかかります。
表B|iDeCoの手数料一覧(税込)
| 手数料の種類 | 金額 | かかるタイミング |
|---|---|---|
| 加入時・移換時手数料(国民年金基金連合会) | 2829円 | 初回1回のみ |
| 掛金の収納にかかる手数料(国民年金基金連合会) | 月105円 | 掛金を拠出した月のみ(掛金がない月は徴収されません) |
| 資産管理手数料(事務委託先金融機関) | 月66円 | 掛金の有無にかかわらず毎月 |
| 運営管理機関手数料 | 金融機関により異なる(0円の機関もあります) | 毎月 |
| 給付事務手数料 | 440円/回 | 給付の振込1回につき |
| 還付事務手数料 | 1048円 + 440円 = 合計1488円/回 | 掛金が還付される都度 |
| 運営管理機関の変更・他制度への移換 | 4400円(SBI証券・松井証券の例) | 移換の都度(金額は機関ごとに異なります) |
| 自動移換時の管理手数料 | 月51円 | 企業型DCの資格喪失後6か月以内に手続きをしなかった場合 |
出典:三菱UFJ銀行「iDeCoの手数料」(2026年4月1日現在)/松井証券「iDeCoの手数料を教えてください。」/SBI証券「iDeCo 必要諸経費」/国民年金基金連合会(いずれも2026年7月21日確認)
※給付事務手数料の支払先については資料により表記が分かれるため、本記事では金額のみを示しています。
※「還付」とは、国民年金保険料に未納が判明した場合など、いったん納めた掛金が返還される手続きのことです。
毎月かかるのは、最低でも171円です
運営管理機関手数料が0円の場合、毎月かかるのは 105円 + 66円 = 月171円(年2052円)です。掛金の拠出を止めて運用だけを続ける「運用指図者」になると、105円が不要になり、月66円 + 運営管理機関手数料が続きます。掛金を止めても、口座を持っているかぎり費用はゼロになりません。
毎月引かれる171円は、掛金がいくらでも同じ金額です。そのため掛金が小さいほど、掛金に対する手数料の比率は大きくなります。ただしこれは「少額で始めるべきではない」という意味ではありません。掛金を増やせば所得控除の対象額も増えますが、同時に60歳まで動かせない資金が増えます。比率の数字だけで金額を決めるのではなく、手元にどれだけ余裕があるかと合わせて判断する材料としてご覧ください。
始める前に押さえておきたい制約とリスク
- 元本が確保されていない商品があります。国民年金基金連合会は「運用商品の中には、元本が確保されていないものもあります」「受け取る額は運用成績により変動します」と説明しています。
- 原則として60歳になるまで引き出せません。途中で解約して現金化することは原則できません(きわめて限定的な要件をすべて満たす場合の脱退一時金を除きます)。
- 掛金を止めても費用はかかり続けます。運用指図者になった場合も、月66円と運営管理機関手数料が続きます。
- 課税所得がない場合、掛金の所得控除は受けられません。手数料は同じようにかかります。
- 元本確保型でも受取額が元本を下回る場合があります。iDeCoで扱う保険商品は元本確保型ですが、運用商品を変更する目的で積立金を取り崩す場合、市中金利と残存年数等に応じて解約控除が適用され、受取金額が元本を下回ることがあります(三菱UFJ銀行)。
- 老齢給付金を受給すると、それ以降は掛金を拠出できなくなります。
どこで申し込むか──運営管理機関の選び方
制度と費用の輪郭がつかめたら、次は窓口選びです。この章で分かるのは、金融機関を選ぶときに見る3つのポイントと、なぜ最初の1社選びが後から効いてくるのかです。
iDeCoを取り扱う金融機関(運営管理機関)は約160あり、そのなかから1社だけを選ぶことになります(国民年金基金連合会)。複数の機関に口座を持つことはできません。厚生労働省は「運営管理機関登録業者一覧」(2026年6月10日現在)を公表しており、取扱機関の全体像はここで確認できます。
見るポイントは3つです
国民年金基金連合会と厚生労働省が挙げている金融機関選びのポイントは、次の3点です。
- ①魅力的な商品はあるか(運用商品のラインナップ)
- ②サービスは充実しているか(Webサイト・アプリ・コールセンターなど)
- ③手数料はどのくらいか(運営管理機関手数料)
このうち③だけが数字で比較できる項目です。①は「商品数の多さ」ではなく中身を見る必要があります。運営管理機関が提示する運用商品は3〜35商品で、機関ごとに異なります(国民年金基金連合会)。
表C|運営管理手数料(2026年7月21日確認)
| 金融機関 | 運営管理手数料 | 出典 |
|---|---|---|
| SBI証券 | 0円(加入者・運用指図者とも) | SBI証券「iDeCo 必要諸経費」(資料の基準日2022年6月1日) |
| 松井証券 | 0円(加入者・運用指図者とも・条件なし) | 松井証券「iDeCoの手数料を教えてください。」 |
| マネックス証券 | 無料 | マネックス証券 お知らせ(2026年5月14日配信) |
| 楽天証券 | 0円(加入者・運用指図者とも/残高・積立額・期間による条件なし) | 楽天証券「楽天証券が選ばれる理由」 |
| 三菱UFJ銀行(比較のための一例) | 現行プランは0円。募集を停止しているプランでは月260〜385円 | 三菱UFJ銀行「iDeCoの手数料」(2026年4月1日現在) |
※掲載順は優劣を示すものではありません。本表は「運営管理手数料」という単一の事実のみを掲載しており、総合評価や順位付けは行っていません。
※運営管理手数料は変更されることがあります。申し込む前に、各社公式サイトで最新の手数料をご確認ください。
後から変えることはできますが、コストがかかります
運営管理機関は後から変更できます。ただし手続きが煩雑なうえ、移換時に手数料がかかる場合があります(SBI証券・松井証券はいずれも4400円。金額は機関ごとに異なります)。「とりあえず決めて、合わなければ変える」という進め方でも制度上は問題ありません。それでも、最初にラインナップまで見ておくほうが手戻りが少ない、というのが実務的な感覚です。
iDeCoの内容を確認できる窓口(掲載順は優劣を示すものではありません)
ヒナコ
手数料が0円の会社が何社もあるなら、どこを選んでも同じということですか?
トシ
同じにはならない。運営管理手数料が横並びでも、選べる商品の本数と中身、Webやアプリの使い勝手は機関ごとに違う。しかもiDeCoの口座は1人1社で、後から変えるときには手数料がかかることがある。最初に商品のラインナップまで見ておきたいところだ。
ヒナコ
商品の中身、ですか……。まだ何を買えばいいのか分からないのに、先に見るんですか。
トシ
見る観点は決まっている。信託報酬の低い投資信託が選べるか、元本確保型の商品が用意されているか。まずはこの2点で足りる。個別の商品名を今日決める必要はない。中身の見方は、このあとの章で扱う。
申込から運用開始までの流れ
申し込む先が決まったら、いよいよ手続きです。この章で分かるのは、申込から初回の買付けまでに何が起きるのか、どの工程で待つことになるのか、そして何を用意すればよいのかです。
「申し込んだのに何も起きない」と感じる期間は、多くの場合③です。ここでは国民年金基金連合会が加入資格を確認しており、申込者の側でできることはありません。標準的な所要期間について、iDeCo公式サイト・厚生労働省とも具体的な日数を示していないため、本記事でも日数は書きません。ただし公式サイトには「申出書の提出のタイミングなどにより、翌月の初回の掛金の引落しの手続きに間に合わない場合、翌々月に2ヶ月分の掛金をまとめて引落しすることがあります」との記載があります。初回の引き落としが2か月分になっても、手続きが失敗したわけではありません。
掛金が引き落とされる日
掛金は原則として、毎月の掛金を翌月26日(休業日の場合は翌営業日)に口座振替で納付します。たとえば4月分の掛金は5月26日の引き落としです。この「1か月ずれる」仕組みは、2026年12月からの改正で見た反映月とも関係しています。
引落口座は、第1号・第3号・第4号(任意加入)の加入者は本人名義の口座です。第2号被保険者(会社員・公務員)は、個人払込(本人名義の口座から引き落とす方法)と事業主払込(給与天引き)のどちらかを選びます。この選択が、次に扱う「会社に依頼する書類」の要否を分けます。
表D|申込に必要なもの
| 必要なもの | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 基礎年金番号 | 年金手帳や基礎年金番号通知書などで確認できる番号 | 手元にない場合は年金事務所に照会します |
| 本人確認書類 | 運営管理機関が指定する書類 | 必要な書類の種類は機関により異なります |
| 掛金の引落口座の情報 | 第1号・第3号・第4号加入者は本人名義の口座。第2号加入者は個人払込(本人名義口座)または事業主払込(事業主の口座) | 事業主払込を選ぶと、掛金払込証明書は発行されません |
| 加入申出書 | 運営管理機関から取り寄せて記入・押印します | インターネットだけで手続きを完了できるかは機関により異なります |
| (事業主払込を選ぶ場合のみ)事業主の証明書 | 勤務先に記入してもらう書類 | 個人払込を選ぶ場合は不要です(2024年12月〜) |
出典:国民年金基金連合会「iDeCoをはじめよう」「加入者の方へ」/厚生労働省「私的年金制度、iDeCoの改正のポイント」(2026年7月21日確認)
※申込方法について、国民年金基金連合会は「インターネットだけで申込み手続きを完了することはできません」、厚生労働省は「加入手続きをオンラインで行うことのできる運営管理機関もあります」としており、一次情報の間で記載が分かれています。実際に何が必要かは、申込先の運営管理機関の案内でご確認ください。
会社に依頼する書類は要るか
「iDeCoを始めると会社に書類を頼まないといけない」——これは長く、会社員にとって最大のハードルでした。ここは2024年12月に変わっています。ただし全面的に不要になったわけではありません。正確に押さえます。
厚生労働省の資料は、こう書いています。
つまり、個人払込(本人名義の口座から引き落とす方法)を選べば、事業主の証明書は要りません。一方で、事業主払込(給与天引き)を選ぶ場合は、今も必要です。この非対称が、実務でいちばん間違えられているところです。
背景は手続きのデジタル化にあります。国民年金基金連合会が「企業年金プラットフォーム」で企業年金の加入状況を確認できるようになったため、勤務先に証明してもらう必要がなくなりました。
証明書が今も必要な場面(国民年金基金連合会)
- ①事業主払込を希望するとき、または事業主払込へ変更するとき
- ②第1号・第3号・第4号の加入者から第2号加入者に変更となるとき
- ③勤務先の企業年金制度への加入状況等に変更があったとき
運用商品の選び方──元本確保型と投資信託
口座ができたら、最後に決めるのが中身です。この章で分かるのは、iDeCoで選べる商品が2系統しかないこと、それぞれの性質、そして何も選ばなかった場合に何が起きるかです。
iDeCoの運用商品は、大きく2つに分かれます(国民年金基金連合会)。
- ①元本確保型商品:定期預金・保険商品など。所定の利息が上乗せされる仕組みです
- ②投資信託:複数の資産にまとめて投資する商品。元本は確保されていません
提示される商品の数と中身は、運営管理機関ごとに異なります。ここが、運営管理機関の選び方で「手数料が同じなら次は商品ラインナップ」と書いた理由です。
商品を選ばないと、どうなるか
指定運用方法を提示している運営管理機関では、一定期間(特定期間3か月以上+猶予期間2週間以上)内に商品を選ばないと、その運営管理機関が定めた指定運用方法が購入されます(国民年金基金連合会)。「決められないから放っておく」という状態は、何も買われない状態ではありません。何が指定運用方法になっているかは、申込先の資料で確認しておきたいところです。
商品を選ぶときの注意
- 元本確保型でも、受取額が元本を下回る場合があります。iDeCoで扱う保険商品は元本確保型ですが、運用商品を変更する目的で積立金を取り崩す場合、市中金利と残存年数等に応じて解約控除が適用され、受取金額が元本を下回ることがあります(三菱UFJ銀行)。
- 手数料は、どの商品を選んでも同じようにかかります(iDeCoにかかる手数料)。受け取る利息の水準によっては、利息より手数料の合計が上回ることもあり得ます。
- 投資信託は元本が確保されていません。国民年金基金連合会は「受け取る額は運用成績により変動します」と説明しています。60歳まで引き出せない資産である以上、値動きの幅と、受け取るまでの残り年数を合わせて考える必要があります。
商品を見るときの2つの観点
個別の商品名をこの記事で挙げることはしません。商品ラインナップは変更されますし、どの商品が合うかは人によって変わるためです。代わりに、どの機関のラインナップでも使える見方を2つ示します。
- 信託報酬(運用中に毎年かかる費用)の水準:同じ対象に投資する商品でも、信託報酬は商品によって差があります。iDeCoは長期間続ける制度なので、毎年かかる費用の差は積み重なります。投資信託そのものの仕組みは 投資信託 で解説しています
- 何に投資する商品か:国内株式・先進国株式・全世界株式・債券・バランス型など、投資先の対象を確認します。値動きの幅は投資先によって変わります。指数に連動するタイプの考え方は インデックス投資 にまとめています
節税分を受け取る手続き(年末調整・確定申告)
ここまでで、加入して運用を始めるところまでが揃いました。ここからは、始めたあとに待っている手続きです。この章で分かるのは、掛金を所得控除に反映させる方法と、そのために必要な書類です。
iDeCoの掛金は、払い込んだだけでは税金が軽くなりません。年末調整か確定申告で「掛金を払いました」と申告して、はじめてその年の所得から差し引かれます。ここを飛ばすと、いちばん大きなメリットが手つかずのまま残ります。
控除の正式名称は「小規模企業共済等掛金控除」
iDeCoの掛金は、所得税法上の小規模企業共済等掛金控除という所得控除の対象です(国税庁 タックスアンサー No.1135/令和7年4月1日現在法令等)。控除の対象になるのは「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」で、控除額はその年に支払った掛金の全額です。
年末調整の書類にも確定申告書にも「小規模企業共済等掛金控除」という欄があります。生命保険料控除の欄やiDeCo専用の欄を探しても見つかりません。この名前を先に覚えておくと迷いません。
なお、この所得控除は本人の所得からのみ差し引かれます。配偶者の所得から差し引くことはできず、課税所得がない場合は控除を受けられません(税制優遇は3段階を参照)。
手続きは3つに分かれます
自分がどれに当てはまるかで、やることも、届く書類も変わります。
- 会社員・公務員で、掛金を自分の口座から払っている(個人払込)→ 年末調整
秋に届く払込証明書を「給与所得者の保険料控除申告書」に添付、または提出時に提示して、勤務先に出します。勤務先が年末調整で所得控除を適用します。国税庁は、年末調整で控除を受けた場合は確定申告書への添付が不要であるとしています。 - 自営業・フリーランス・専業主婦(夫)など(第1号・第3号・第4号加入者)→ 確定申告
確定申告書の小規模企業共済等掛金控除の欄に金額を記入し、払込証明書(または電磁的記録印刷書面)を添付または提示します。 - 会社員で、掛金が給与から天引きされている(事業主払込)→ 自分の手続きは不要
給与から天引きされる時点で勤務先が所得控除を適用するため、払込証明書は発行されません。証明書が届かないのは手違いではなく、この方式を選んでいるためです。
払込証明書は毎年10月頃に届きます
正式名称は小規模企業共済等掛金払込証明書で、国民年金基金連合会から送られてきます。送付時期は毎年10月頃です。ただし、その年の初回の掛金納付が10月以降になった場合は、翌年1月の送付になります。年の後半に加入した人が「証明書が来ない」と感じるのは、多くがこのケースです。
この証明書は、マイナポータルから電子的に受け取ることもできます(国民年金基金連合会)。紙の郵便物を管理するのが不安な場合は、こちらも選択肢になります。
証明書を紛失した場合や、年末調整の締切に間に合わなかった場合の取り扱いは、加入している運営管理機関または所轄の税務署にご確認ください。
令和7年度税制改正で、将来この手続きは少し変わります
財務省「令和7年度税制改正の大綱」により、小規模企業共済等掛金控除などについて、控除証明書の添付・提示に代えて、記載事項を記載した明細書を確定申告書に添付できるようになります。
ただし適用は令和8年分以後の確定申告書を令和9年(2027年)1月1日以後に提出する場合です。2026年7月21日時点では、まだ適用されていません。現時点では従来どおり証明書が必要になります。
株式の売買や配当の確定申告は、iDeCoの所得控除とは別の制度です。特定口座や損益通算については 株式投資の税金と確定申告 で扱っています。
ヒナコ
所得控除って、手続きをしなくても自動で戻ってくるものだと思っていました。会社員なら年末調整でいい、とは聞いたのですが、結局なにを出せばいいんでしょう。
トシ
掛金を自分の口座から払っているなら、秋に国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届く。それを保険料控除申告書に添えて勤務先に出す。ここまでやって、はじめてその年の掛金が所得から引かれる。
ヒナコ
届いた封筒、うっかり捨ててしまいそうです……。
トシ
毎年10月頃に届くものだと先に知っておくことだ。マイナポータルで受け取ることもできる。給与天引きにしている人には、そもそも証明書が発行されない。自分がどの方式で払っているかを、加入の時点で確認しておきたい。
掛金を変えたい・払えなくなったときの3つの出口
手続きの話が済んだところで、続けられなくなったときの話をします。この章で分かるのは、掛金を止めたいときに選べる3つの道と、それぞれにかかる費用です。
「60歳まで引き出せない」と聞くと、収入が減ったときに身動きが取れなくなるように感じます。実際には、掛金を減らす/拠出をやめて運用だけ続ける/例外的に脱退するという3つの道があります。ただし、それぞれに条件と費用が付いてきます。
表E|掛金を続けられなくなったときの3つの出口
| 出口 | 手続きと反映のタイミング | その間にかかる費用 | 元に戻す方法 |
|---|---|---|---|
| 掛金を減らす(減額) | 運営管理機関に掛金額の変更を届け出る。変更できるのは12月分〜翌年11月分の掛金の間で年1回のみ(実際の納付月は1月〜12月)。下限は月5000円・1000円単位 | 掛金を拠出した月は国民年金基金連合会105円+事務委託先金融機関66円。掛金を減らしても手数料の額は変わらないため、掛金に対する比率は上がる | 次の変更できる期間に、あらためて変更を届け出る(同じく年1回) |
| 拠出をやめる(運用指図者になる) | 「解約」という手続きは存在しない。加入者資格を喪失する手続きを行い、掛金を出さずに運用だけを続ける「運用指図者」になる | 月66円(事務委託先金融機関)+運営管理機関の手数料。掛金がない月は国民年金基金連合会の105円は徴収されない | 拠出を再開する場合は、あらためて加入者となる手続きが必要 |
| 脱退一時金を受け取る | 7つの要件をすべて満たす場合に限られる(下記)。ひとつでも欠けると請求できない | 脱退事務手数料がかかる(例:事務委託先金融機関440円/回、特定運営管理機関4180円/回) | 資産を受け取って終了するため、戻す対象がない。再開する場合は新規に加入手続きを行う |
※手数料は2026年7月21日時点で各金融機関の公式サイトを確認した金額です。運営管理機関の手数料は各社で異なります。
減額の欄にある「年1回」は、iDeCoを続けるうえでいちばん効いてくる制約です(掛金はいくらから、いくらまでを参照)。一度減らすと、その区切りのなかではもう戻せません。逆に、増やしたあとで負担が重いと感じても、次の変更時期まで待つことになります。だからこそ、始めるときの金額は「今の収入で無理なく続けられる額」に置いておく考え方があります。
拠出をやめても、口座は残り続けます
iDeCoには途中解約という手続きがありません。掛金を止める場合は、加入者資格を喪失する手続きをして運用指図者になります。運用指図者になると新しい掛金は入りませんが、それまでに積み上げた資産の運用は続きます。
このとき見落としやすいのが、掛金を出していなくても月66円の事務委託先金融機関の手数料がかかり続けることです。運営管理機関の手数料が別途かかる場合は、それも上乗せされます。掛金を止めている間も残高は少しずつ削られていく、という前提で考えておく必要があります。
脱退一時金は例外的な制度です
iDeCoの資産を60歳前に受け取れる脱退一時金は、次の7つの要件をすべて満たす場合に限られます(国民年金基金連合会)。
- 60歳未満であること
- 企業型年金加入者でないこと
- 国民年金保険料免除者、外国籍の海外居住者等、iDeCoに加入できない者であること
- 日本国籍を有する海外居住者(20歳以上60歳未満)でないこと
- 通算拠出期間が5年以下、または個人別管理資産が25万円以下であること
- 確定拠出年金の障害給付金の受給権者でないこと
- 最後に企業型DCまたはiDeCoの加入者資格を喪失した日から2年以内であること
要件を並べると分かるとおり、これは「掛金が払えなくなったから解約する」ための制度ではありません。原則として、60歳前に資金を引き出すことはできないと考えたうえで、生活資金とは分けて始めるのが前提になります。
引き落とせなかった月の掛金は、あとから払えません
残高不足などで掛金を引き落とせなかった場合、その月の分をあとから追納することはできません(国民年金基金連合会)。「来月まとめて」という対応ができない仕組みです。
また、国民年金保険料に未納があることが判明した場合や、加入資格の変更手続きをしていなかった場合には、掛金の還付や一時停止になることがあります。還付が発生すると、還付事務手数料として1回あたり合計1488円がかかります。区分が変わったときの届出を忘れないことが、余計な費用を避ける手段になります。
転職・退職したとき/勤務先に企業型DCがある場合
出口の話に続いて、働き方が変わったときの話をします。この章で分かるのは、区分が変わったときに必要な届出と、企業型DCの資産を放置した場合に起きることです。
iDeCoは、口座を持ったまま働き方が変わることを想定した制度です。ただし、区分が変わると掛金の上限も変わり、そのつど届出が必要になります。放置すると、資産が動かないまま費用だけがかかる状態にもなり得ます。
区分が変わると、上限額も変わります
会社員から自営業へ、自営業から会社員へ、あるいは退職して国民年金の第1号被保険者になるなど、被保険者の区分が変わると、iDeCoの掛金の上限も変わります。区分の変更があったときは、運営管理機関に「加入者登録事業所変更届(K-011)」などの届出を提出します(国民年金基金連合会)。
このとき、事業主の証明書が必要になる場合があります。該当するのは、申込から運用開始までの流れで挙げた3つの場面です。転職・退職の局面で関わりやすいのは、第1号・第3号・第4号加入者から第2号加入者に変わるときと、勤務先の企業年金制度への加入状況等に変更があったときの2つになります。個人払込を選んでいれば申込時の証明は不要ですが、証明書が完全になくなったわけではありません(厚生労働省・国民年金基金連合会)。
退職して収入がなくなった場合は、掛金を払い続けても課税所得がなければ所得控除の効果は及びません。掛金の減額や運用指図者への変更を含めて、3つの出口を検討する場面になります。
企業型DCの資産を放置すると「自動移換」になります
企業型DCに加入していた人が退職し、資格喪失後6か月以内に移換の手続きをしなかった場合、個人別管理資産は自動的に国民年金基金連合会(特定運営管理機関)へ移されます。これが自動移換です。自動移換されると、次の状態になります(国民年金基金連合会)。
- 運用が止まったまま、資産が置かれる
- 月51円の管理手数料を継続して負担する
- 自動移換されている期間は、通算加入者等期間に算入されない
3つ目が特に重要です。通算加入者等期間は、次章で扱う受給を開始できる年齢を決める要素になります。放置した期間は、その計算に入りません。転職先に企業型DCがある場合は移換の手続きを、ない場合はiDeCoへの移換手続きを、期限内に行う必要があります。
勤務先に企業型DCがある場合の併用
企業型DCに加入していても、iDeCoを併用できる場合があります。要件は次の2つです(厚生労働省)。
- iDeCoの掛金が各月拠出であること
- 企業型DCのマッチング拠出を利用していないこと
マッチング拠出(企業型DCに従業員が自分で上乗せする仕組み)を選んでいる場合、iDeCoとの併用はできません。どちらを使うかを選ぶことになります。なお、マッチング拠出の掛金額の制限は2026年4月に撤廃されています(2026年12月からの改正を参照)。
併用する場合に拠出できる金額は、掛金の章で見た「5.5万円 −(各月の企業型DCの事業主掛金額 + DB等の他制度掛金相当額)」で決まります。この計算結果とiDeCoの上限(月額最大2.0万円)のうち、小さいほうが自分の上限です。事業主掛金が大きい場合、上限が2.0万円を大きく下回ることがあり、下限の月5000円に届かず拠出できなくなる場合もあります。
また、DB等の他制度に加入している方(公務員を含む)は、2024年12月以降、毎月定額での拠出のみとなっています。年単位拠出のままにしていると、掛金の拠出が一時停止されることがあります(厚生労働省)。
いつ・いくらから受け取れるか──受給開始年齢の逆算
ここからは出口の話です。この章で分かるのは、受け取りを開始できる年齢がどう決まるのか、いつまでに請求すればよいのか、そして受け取り方の選択肢です。
「60歳まで引き出せない」は、裏を返せば「60歳になれば受け取れる」という意味ではありません。受け取りを開始できる年齢は、通算加入者等期間の長さで決まります。
表F|通算加入者等期間と、受給を開始できる年齢
| 通算加入者等期間 | 受給を開始できる年齢 | 60歳の時点でこの期間に達する加入年齢の目安 |
|---|---|---|
| 10年以上 | 60歳 | 50歳になるまでに加入 |
| 8年以上10年未満 | 61歳 | 50歳以上52歳未満で加入 |
| 6年以上8年未満 | 62歳 | 52歳以上54歳未満で加入 |
| 4年以上6年未満 | 63歳 | 54歳以上56歳未満で加入 |
| 2年以上4年未満 | 64歳 | 56歳以上58歳未満で加入 |
| 1月以上2年未満 | 65歳 | 58歳以上で加入 |
出典:国民年金基金連合会(iDeCo公式サイト・2026年7月21日確認)
※「60歳の時点でこの期間に達する加入年齢の目安」は、他に確定拠出年金の加入者期間・運用指図者期間がない場合の目安として本サイトが計算したものです。加入する月によって前後します。企業型DCの期間や過去のiDeCoの期間がある場合は通算加入者等期間に含まれるため、目安は変わります。ご自身の受給開始可能年齢は運営管理機関にご確認ください。
50歳を過ぎてから始めると、60歳では受け取れません。たとえば53歳で加入した場合、60歳の時点での通算加入者等期間は7年です。受け取りを開始できるのは62歳以降になります。
50代から始めることが不利だという意味ではありません。ただし「60歳で使うつもりの資金」を入れる場所としては合わない、ということです。
なお、60歳以上で初めて加入した場合は、通算加入者等期間を持たなくても、加入から5年を経過した日から受給できます(国民年金基金連合会)。
50代からの資産形成の考え方は シニア世代の資産運用 でも扱っています。
受け取り開始は75歳になるまでの間で選べます
受給権が発生したあと、実際に受け取りを始める時期は75歳になるまでの間で選べます。厚生労働省の資料では「60歳〜74歳の間で受給開始時期を選択可能、75歳到達時には自動的に裁定」と説明されています。
ただし、75歳までに受給の請求をしなかった場合、資産は法務局に供託されます(国民年金基金連合会)。「そのうち手続きしよう」と置いておける期限がある点は、押さえておきたいところです。
また、iDeCoの老齢給付金を受給すると、それ以降は掛金を拠出できなくなります(国民年金基金連合会)。受け取りを始める時期は、拠出を終える時期でもあります。
受け取り方は3つ。ただし併用の扱いは金融機関によります
- 一時金:全額を一括で受け取る。税制上は退職所得の扱いになります(次章)
- 年金:5年以上20年以下の有期年金として分割で受け取る(金融機関によっては終身年金の取り扱いもあります)。税制上は公的年金等控除の対象です
- 併用:一時金と年金を組み合わせる。ただし併用を取り扱っているかどうかは運営管理機関によって異なります
3つ目は見落とされやすい点です。受け取り方の選択肢は、加入している金融機関がどこまで用意しているかに左右されます。金融機関を選ぶ段階で確認しておくと、20年後、30年後に選択肢が狭まる事態を避けられます。
受け取るときにも手数料がかかります
給付事務手数料として、振込1回につき440円(税込)がかかります。年金として何回にも分けて受け取る場合、この440円は受け取りのたびに発生します。回数が多いほど、手数料の合計は増えていきます。受け取り方を決めるときは、税金だけでなくこの費用も並べて見ておきたいところです。
なお、一定以上の障害状態になった場合や死亡した場合には、60歳前でも障害給付金・死亡一時金を受け取れる仕組みがあります(国民年金基金連合会)。
退職金と重なるときの考え方(2026年1月からのルール変更)
受け取り方の話の続きです。この章で分かるのは、iDeCoの一時金と会社の退職金が近い時期に重なるとどうなるか、そして2026年1月から変わったルールの中身です。
ここは、iDeCoの情報のなかでもっとも古い記述が残りやすい領域です。2026年1月から適用が始まったルール変更により、これまで広く紹介されてきた「受け取り時期を5年ずらす」という説明は、現在の制度に合っていません。
一時金は「退職所得」として扱われます
iDeCoを一時金で受け取る場合、確定拠出年金法に基づいて老齢給付金として支給される一時金は退職所得とみなされます(国税庁 タックスアンサー No.1420)。退職所得の金額は、次のように計算されます。
退職所得控除額は、勤続年数(iDeCoの場合は加入年数)に応じて次のとおりです。
- 20年以下:40万円 × 年数(計算結果が80万円に満たない場合は80万円)
- 20年超:800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年)
この式で計算すると、30年で1500万円になります。ただし、「30年加入なら1500万円まで非課税」という説明は、他に退職手当等を受け取っていない場合の計算例です。会社の退職金を同じ年や近い年に受け取ると、後述の調整によって使える控除枠は1500万円より小さくなります。この前提を外して覚えると、受け取りの段階で計算が合わなくなります。
なお、「特定役員退職手当等」に該当する場合は1/2の計算が適用されません。「短期退職手当等」に該当する場合は、控除後300万円を超える部分に1/2の計算が適用されません(国税庁)。iDeCoの一時金で通常該当するものではありませんが、退職金側の判定に関わることがあります。
【重要】「前年以前4年内」から「前年以前9年内」へ
令和7年度税制改正により、退職所得課税の見直しが行われました。根拠は所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号・令和7年3月31日公布)で、個人住民税についても同様の改正が行われています。
改正の内容は、国税庁『令和8年版 源泉徴収のあらまし』で次のように整理されています。
- 2026年1月1日以後に支払を受けたiDeCo等の老齢一時金について、その後に老齢一時金以外の退職手当等の支払を受ける年の前年以前9年内にその老齢一時金を受けていた場合、退職所得控除額の計算で勤続期間等の重複を排除する特例の対象になります(改正前は前年以前4年内)
- この改正は令和8年分以後の所得税について適用されます
- 重複排除の対象となる過去の退職手当等の範囲は、受け取った時期で分かれます。2026年1月1日以後に受け取った退職手当等は受給年の前年以前9年内のもの、2026年1月1日前に受け取った退職手当等は受給年の前年以前4年内のものが対象です(国税庁)。なお、この特例の入口となる老齢一時金は、2026年1月1日以後に支払を受けたものに限られます
つまり、「iDeCoを60歳で受け取り、退職金を65歳で受け取れば控除枠を二重に使える」という、かつて「5年ルール」と呼ばれた説明は、2026年1月1日以後に受け取るiDeCoの一時金には当てはまりません。5年空けても、調整の対象期間(前年以前9年内)に入ります。
このほか、令和8年1月1日以後に支払を受けるべき老齢一時金については、「退職所得の受給に関する申告書」の保存期間が10年(改正前7年)になりました。あわせて、退職手当等の支払者は、支払を受ける全ての居住者に係る退職所得の源泉徴収票を税務署長に提出することになっています。
会社の退職金が先で、iDeCoが後の場合
今回確認できたのは、iDeCoの一時金を先に受け取り、そのあとに退職手当等を受け取る方向についての改正です。
会社の退職金を先に受け取り、その後にiDeCoを一時金で受け取る場合にも、退職所得控除の計算で調整が入る仕組みがあります。ただし、調整の対象となる期間について、今回の調査では国税庁・財務省の一次情報を確認できませんでした。受け取る順序によって調整の対象期間が異なるため、ご自身のケースについては税理士または所轄の税務署にご確認ください。
国税庁の説明を、そのまま押さえておく
国税庁は、退職所得控除額の計算について次のように説明しています。
本記事では、「何年ずらせば控除枠を二重に使える」という受け取り方の指南は行いません。退職所得控除の調整は、勤続年数・iDeCoの加入年数・受け取る順序・受け取る年・企業年金の有無によって結果が変わります。加えて、この領域は制度改正の対象になりやすく、2026年1月からの変更もその一例です。
具体的な受け取りプランは、税理士・FP・所轄の税務署にご相談ください。相談の前に、会社の退職金規程(支給時期と概算額)と、自分のiDeCoの加入年月を手元に用意しておくと、話が早く進みます。
年金で受け取る場合に確認しておきたいこと
年金として分割で受け取る場合は、公的年金等控除の対象となり、雑所得として扱われます(国税庁/国民年金基金連合会)。公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であれば、確定申告は不要とされています(国税庁)。
一方で、公的年金等に係る雑所得は、多くの自治体で国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の算定基礎に含まれます。ただし、保険料の算定方法は市区町村・広域連合の条例によって定まり、全国一律ではありません。影響の有無や程度については、お住まいの市区町村にご確認ください。
「一時金と年金のどちらが有利か」は、退職金の有無・公的年金の受給額・お住まいの自治体の保険料算定方法によって変わります。この記事では制度の仕組みまでを扱います。金額の比較は、ご自身の条件を確認したうえで専門家と行うことをおすすめします。
iDeCoが向く人・向かない人
制度の入口から出口まで一通り見てきました。この章では、ここまでの内容を「自分に当てはまるか」という視点で整理し直します。
iDeCoは、誰にとっても同じ効果が出る制度ではありません。年代ではなく、次の条件で整理すると判断しやすくなります。
制度の効果が働きやすい条件
- 所得税・住民税を納めている。iDeCoの掛金は所得控除の対象で、控除額はその年に支払った掛金の全額です。納めている税金があってはじめて、軽減という形で効果が出ます(軽減額の目安は税制優遇の章、ご自身の条件での試算は iDeCoシミュレーション)
- 60歳まで使う予定のない資金がある。原則として60歳前に引き出せないため、使う時期が決まっていない長期の資金と相性があります
- 生活防衛資金を別に確保できている。急な支出に対応できる現金を別に持ったうえで、余力の範囲で拠出できる状態です
効果が及びにくい・別の方法を検討したい条件
- 課税所得がない。3つある税制上の優遇のうち、拠出時の所得控除は働きません。国民年金基金連合会が「課税所得がない方は、掛金の所得控除は受けられません」と明記しているとおりです
- 数年以内に使う予定のある資金しかない。住宅の頭金、教育費、独立資金など、時期が決まっている資金は、60歳まで引き出せない制度とは合いません
- 50代後半で、通算加入者等期間が短くなる見込みがある。受給開始年齢の逆算のとおり、受給を開始できる年齢が61歳〜65歳に繰り下がる可能性があります
どちらに当てはまるかで「やるべき/やめるべき」が決まるわけではありません。たとえば課税所得がない場合でも、運用益が非課税になる仕組みそのものは働きます。自分がどの効果を使えて、どの効果は使えないのかを分けて把握することが、判断の出発点になります。
なお、運用商品に投資信託を選んだ場合は価格変動があり、受け取る額が掛金の合計を下回ることがあります。元本確保型を選んだ場合も、毎月の手数料が続くため、その分は資産から差し引かれます。投資信託そのものの仕組みは 投資信託、インデックス投資の考え方は インデックス投資 で扱っています。
NISAとどちらを先に始めるか
向き不向きの整理に続けて、よく並べて語られるNISAとの関係を確認します。この章で示すのは、どちらを先に始めるかを決める判断軸です。
iDeCoとNISAは、どちらか一方を選ぶ制度ではありません。併用できます。そのうえで「どちらから始めるか」を考えるとき、判断の軸は次の1点に集約されます。
NISAはいつでも売却して現金化できますが、掛金が所得控除の対象になる仕組みはありません。iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象になる一方、原則として60歳前には引き出せません。この2つは、同じ「非課税制度」という言葉でくくられていても、性格が正反対です。
そのため、次のような整理になります。使う時期が決まっていない資金があり、所得税・住民税を納めているなら、iDeCoの所得控除は使える効果です。一方、数年以内に使う可能性がある資金や、生活防衛資金がまだ十分でない段階なら、引き出せることの価値が大きくなります。
年齢やライフステージ別の考え方、併用する場合の資金の振り分けは、比較専門ページで扱っています。→ iDeCoと新NISAはどっちを優先?目的別の選び方
NISA制度そのものの仕組みと始め方については 新NISAとは をご覧ください。
よくある質問
始める前によく出てくる疑問を、7つに絞って答えます。
Q. iDeCoは月5000円でも意味がありますか?
掛金の下限は月5000円で、1000円単位で設定できます。厚生労働省は、毎月5000円を拠出し所得税率5%・住民税率10%の場合の軽減額として年間9000円という例を示しています(税率を仮定した試算です)。一方で、毎月の手数料は掛金の額にかかわらず同額のため、掛金が小さいほど掛金に対する手数料の比率は高くなります。運営管理機関の手数料が0円の場合でも、掛金を拠出する月は国民年金基金連合会105円と事務委託先金融機関66円の合計171円がかかります。掛金額を決めるときは、この2つを並べて確認してください。掛金額の変更は年1回に限られるため、続けられる金額から始める考え方があります。
Q. 自分の掛金の上限額はどこで確認できますか?
国民年金の被保険者区分と、勤務先の企業年金の有無で決まります。自営業・フリーランス(第1号)と任意加入被保険者は月6.8万円(国民年金基金の掛金・国民年金付加保険料と合算)、企業年金のない会社員(第2号)と専業主婦(夫)(第3号)は月2.3万円です。企業型DCや確定給付企業年金(DB)、公務員の共済に加入している場合は、5.5万円から各月の企業型DC事業主掛金額とDB等の他制度掛金相当額を差し引いた額と、月2.0万円のうち小さいほうが上限になります。事業主掛金の額によっては2.0万円を大きく下回ることがあります。ご自身の金額は、勤務先の人事・福利厚生の担当部署と、企業型記録関連運営管理機関にご確認ください。なお、2026年12月1日に掛金の上限を引き上げる改正の施行が予定されています(2026年7月21日時点では未施行)。
Q. 会社に知られずに始められますか?
2024年12月から、掛金を自分の口座から払う「個人払込」を選ぶ場合は、勤務先が記入する事業主の証明書が不要になりました(厚生労働省)。国民年金基金連合会が企業年金プラットフォームで企業年金の加入状況を確認できるようになったためです。ただし、掛金を給与から天引きする「事業主払込」を希望する場合は、現在も事業主の証明書が必要です。また、第1号・第3号・第4号加入者から第2号加入者に変わるときや、勤務先の企業年金制度への加入状況等に変更があったときにも証明書が必要になります。
Q. 掛金を払えなくなったらどうなりますか?
3つの選択肢があります。①掛金を減らす(下限は月5000円。変更は12月分から翌年11月分までの間で年1回のみ)、②加入者資格を喪失する手続きをして「運用指図者」になり、掛金を出さずに運用だけを続ける、③7つの要件をすべて満たす場合に限り脱退一時金を請求する、の3つです。iDeCoに「解約」という手続きはありません。運用指図者になった場合も、事務委託先金融機関の月66円と運営管理機関の手数料は続きます。なお、残高不足などで引き落とせなかった月の掛金を、あとから追納することはできません。
Q. 60歳になったら受け取れますか?
通算加入者等期間によって、受け取りを開始できる年齢が変わります。10年以上あれば60歳から、8年以上10年未満なら61歳から、6年以上8年未満なら62歳から、4年以上6年未満なら63歳から、2年以上4年未満なら64歳から、1月以上2年未満なら65歳からです(国民年金基金連合会)。50歳を過ぎてから加入した場合、60歳の時点では10年に届かないため、受け取り開始は61歳以降になります。60歳以上で初めて加入した場合は、加入から5年を経過した日から受給できます。受け取りを開始する時期は75歳になるまでの間で選べますが、75歳までに請求しなかった場合、資産は法務局に供託されます。
Q. 手数料が無料の金融機関を選べば、費用はかからないのですか?
無料になるのは「運営管理機関手数料」の部分だけです。運営管理機関手数料が0円の金融機関を選んでも、加入時に2829円(国民年金基金連合会・初回1回のみ)、掛金を拠出した月に105円(国民年金基金連合会)、拠出の有無にかかわらず毎月66円(事務委託先金融機関)がかかります。毎月拠出する場合、運営管理機関手数料が0円なら月171円・年2052円が最低限のコストです。このほか、受け取り時に給付事務手数料440円が振込1回につき、掛金の還付が発生した場合に合計1488円が1回につきかかります。金融機関を変更する場合の手数料は各社で異なります(例:SBI証券・松井証券とも4400円)。手数料は変更されることがあるため、最新の金額は各社の公式サイトでご確認ください。
Q. 専業主婦(夫)でもiDeCoに入るメリットはありますか?
第3号被保険者も加入でき、掛金の上限は月2.3万円です。ただし、国民年金基金連合会は「課税所得がない方は、掛金の所得控除は受けられません」と明記しており、さらに「所得控除は、本人の所得からのみ控除されます。配偶者の所得からは控除されません」としています。つまり、iDeCoの3つの税制優遇のうち、拠出時の所得控除は課税所得がなければ働きません。運用益が非課税になる仕組みと、受け取り時の控除は適用されます。なお、所得控除が受けられる年収の基準については、税制改正により基礎控除・給与所得控除の水準が変わっているため、最新の基準は国税庁の情報をご確認ください。
まとめ
iDeCoは、加入資格の確認から受け取りまでが1本の制度でつながっています。長く感じたかもしれませんが、始める前に決めることは多くありません。次の3つを順番に確認するところから始めてください。
1. 自分の区分と掛金の上限を確認する
国民年金の被保険者区分と、勤務先の企業年金の有無で上限が決まります。企業年金がある場合は、この記事の表だけでは金額が確定しません。勤務先の人事・福利厚生の担当部署と、企業型記録関連運営管理機関にご確認ください。この1本の問い合わせが、掛金を決める土台になります。
2. 「60歳まで動かさない資金か」を確かめる
iDeCoに入れた資金は、原則として60歳前に引き出せません。脱退一時金は7つの要件をすべて満たす場合に限られる例外です。さらに、通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受け取りを開始できる年齢が61歳〜65歳に繰り下がります。急な支出に対応できる現金を別に確保したうえで、その外側にある資金で始めるという順番が、途中で止めずに済む条件になります。
3. 金融機関は1社だけ。手数料と商品を先に見る
iDeCoの口座は1人1社で、あとから変更するときには手数料と手間がかかります。運営管理機関手数料の額、商品ラインナップの中身、一時金と年金の併用を取り扱っているかどうか。この3点を、申し込む前に各社の公式サイトで確認しておくと、あとから困る場面が減ります。
掛金の額は、あとから年1回変えられます。金額で悩んで止まるより、下限の月5000円で始めて、続けられると分かってから増やすという進め方もできます。反対に、まだ生活防衛資金が十分でない、数年以内に使う予定の資金しかない、という段階であれば、今は始めないという判断もひとつの結論です。
なお、2026年12月1日に掛金の上限の引き上げと加入可能年齢の拡大が施行される予定です(掛金への反映は2026年12月分=2027年1月引落分から)。具体的な手続き方法は運営管理機関から案内される予定のため、施行前にご自身の金融機関からの案内をご確認ください。
まずは、自分の区分と上限を確認するところから。そこが決まれば、残りは順番に片づきます。
信頼できる情報源
本記事は、以下の一次情報をもとに作成しています(いずれも2026年7月21日確認)。
制度・加入資格・掛金・改正について(厚生労働省・財務省)
- 厚生労働省 私的年金制度、iDeCoの改正のポイント(PDF)
- 厚生労働省 iDeCoがパワーアップします!(令和8年12月から)(PDF)
- 厚生労働省 DC拠出限度額(令和8(2026)年12月〜)(PDF)
- 厚生労働省 DB等の他制度に加入している方へ(2024年12月施行)(PDF)
- 厚生労働省 公務員の皆さまへ(2024年12月施行)(PDF)
- 厚生労働省 iDeCo加入者向け(2022年5月・10月、2024年12月施行)(PDF)
- 厚生労働省 2025年の制度改正(2026年12月1日施行予定)
- 厚生労働省 確定拠出年金制度
- 厚生労働省 運営管理機関登録業者一覧(2026年6月10日現在)(PDF)
- 財務省 令和7年度税制改正の大綱(1/9)
手続き・受け取り・脱退一時金について(国民年金基金連合会)
税金について(国税庁)
- 国税庁 No.1135 小規模企業共済等掛金控除
- 国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
- 国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
- 国税庁 令和8年版 源泉徴収のあらまし/税制改正等の内容(PDF)
手数料について(各金融機関公式)
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