株の追証(おいしょう)とは?発生条件・計算例・解消期限と対処法
追証(おいしょう)は、信用取引の担保が所定の水準を下回り、追加の委託保証金を求められることです。通知が出た後は、口座画面に表示された確定額、期限の日付と時刻、認められる解消方法を先に確認します。発生基準も期限も証券会社で異なるため、「20%」「翌営業日」という数字だけでは判断できません。
すでに追証の通知がある方へ:メール内のリンクではなく、証券会社の公式サイトやアプリから直接ログインし、「確定額」「期日と時刻」「発生原因」「有効な解消方法」「解消済み表示」を確認してください。今回公式ルールを確認したSBI証券、楽天証券、松井証券、マネックス証券では、確定後に株価が戻っただけでは解消になりません。
この記事の範囲:国内株式の信用取引で生じる追証を扱います。信用取引全体の仕組みは信用取引と委託保証金の基礎、FXの追証・ゼロカットはFXのゼロカットと追証で確認してください。先物・オプション、CFD、米国株信用は判定ルールが異なります。
追証とは、信用取引の保証金不足を追加で埋める仕組み
追証は、信用取引で追加して差し入れる委託保証金の通称です。信用取引では、建玉の評価損や費用を保証金から差し引いて、建玉代金に対する保証金の割合を判定します。その割合などが契約先の基準を下回ると、現金の差し入れや建玉の返済などを求められます。
JPXの一般的な制度説明では、通常の新規建てに必要な委託保証金は約定価額の30%以上で、その額が30万円に満たない場合は30万円です。また、委託保証金から損失や費用を差し引いた額が売買代金の20%を下回ると追加保証金が必要です。ただし、証券会社はこれより厳しい基準を定められ、商品による例外や銘柄別の増担保規制もあります。
| 水準 | 何を判定するか | 注意点 |
|---|---|---|
| 新規建て基準 | 新しい建玉を持つために必要な委託保証金 | 制度上の通常基準は30%、最低30万円ですが、商品例外、会社基準、増担保規制で上がります。 |
| 追証発生基準 | 保有中の保証金が不足したか | 一般説明の20%未満を基礎にしつつ、会社独自条件や最低保証金額があります。 |
| 解消・回復水準 | いくら差し入れ、または返済すれば解消になるか | 発生基準と同じとは限りません。20%回復の会社例と30%回復の会社例があります。 |
20%ちょうどと20%未満は別です。制度の一般説明は「20%未満」であり、表示上20.0%でも内部の未丸め値が下回っている場合があります。追証の有無は、自分で丸めた計算ではなく契約先の確定表示を優先してください。
追証はいつ判定される?
SBI証券は大引け後、楽天証券と松井証券は大引け時、マネックス証券は毎営業日の終値を基に追証を判定すると案内しています。日中の維持率や概算額が表示される会社でも、追証の確定時点と金額更新の時刻は会社ごとに異なります。大引け後から翌朝にかけて、公式の口座画面と通知を確認してください。
追証が発生する条件は、建玉の損失だけではない
買建の値下がりは典型例ですが、売建、代用有価証券、費用、個別規制も保証金余力を減らします。相場全体が急落すると、買建の評価損と担保株の評価減が同時に進むことがあります。
買付価格より現在値が下がり、建玉の評価損が保証金から差し引かれます。
売建は株価上昇で評価損が増えます。売建固有のリスクは空売りの仕組みと注意点で扱います。
担保株の時価が下がると代用評価額も減ります。掛目は80%が保証されるものではなく、引下げや0%評価もあり得ます。
金利、貸株料、品貸料、手数料、受渡前の決済損など、何をいつ反映するかは会社規定で異なります。
増担保規制と代用掛目の変更は分けて確認する
JPXの増担保措置は、新規の売付け・買付けに必要な保証金率や現金比率を引き上げるものです。これとは別に、証券会社が代用掛目を引き下げると、保有口座の実質保証金が減る場合があります。新規建て前はJPXの信用取引規制銘柄、保有中は代用掛目と証券会社からの通知を分けて確認します。
追証はいくら必要?維持率と回復水準を分けて計算する
概算は「現在の実質保証金」と「契約先が求める回復水準」の差で考えます。ただし、確定額の計算式に含まれる費用、決済損益、代用評価、最低保証金額は証券会社で異なります。
実質保証金の概念 = 保証金現金 + 代用有価証券の評価額 − 評価損 − 諸費用 ± 会社が算入する受渡前の決済損益
保証金維持率 = 実質保証金 ÷ 建玉代金合計 × 100
必要な現金の概算 = max(0円、回復目標額 − 実質保証金)
最低保証金額も回復条件になる場合は、率による目標額と最低保証金額の大きい方を回復目標額にします。
計算例:維持率18%から、20%または30%へ戻す場合
建玉代金200万円、保証金現金20万円、代用株の時価50万円・掛目80%、評価損22万円、諸費用2万円、受渡前の決済損益0円とします。
- 代用評価額:50万円 × 80% = 40万円
- 実質保証金:20万円 + 40万円 − 22万円 − 2万円 = 36万円
- 保証金維持率:36万円 ÷ 200万円 = 18%
20%までの回復が必要なら4万円です。200万円 × 20% − 36万円 = 4万円。
30%までの回復が必要なら24万円です。200万円 × 30% − 36万円 = 24万円。
この20万円の差が、「追証ラインは20%」だけでは必要額を判断できない理由です。さらに、最低保証金30万円への回復を求める条件では、率から計算した不足額より大きくなる場合があります。建玉100万円・実質保証金19万円なら、20%回復だけなら1万円ですが、30万円への回復が必要な原因なら11万円です。
「あといくら下がると追証か」と「発生後にいくら必要か」は別
追証発生までの概算余力は、現在の実質保証金から「建玉代金 × 発生基準率」を差し引いて考えます。ただし、買建・売建・代用株が同時に動く口座では、株価変動額と保証金の減少額は一対一になりません。発生後の必要額は回復水準や30万円条件で改めて計算されるため、口座画面の請求額を確認してください。
例えば、建玉代金200万円、現在の実質保証金50万円、発生基準20%と単純化すると、20%に当たる40万円までの概算余力は10万円です。ほかの要因がなく評価損だけが増える想定なら、追加損失が10万円を超えると20%未満になります。これは「株価があと10万円下がる」という意味ではなく、口座全体の実質保証金があと10万円減るという目安です。
計算例は概算です。表示の丸め、評価益の扱い、代用掛目、決済損益、費用、必要返済建玉の換算は会社ごとに異なります。追証額や必要返済建玉の確定値として使わないでください。
追証が発生したらどうする?通知後の6ステップ
焦って入金だけを済ませても、入金先や振替方法が違えば解消にならないことがあります。「入れた」ではなく「解消済みになった」まで確認します。
通知メールのリンクは使わず、普段利用している公式サイトまたは公式アプリを開きます。追証画面に「概算」「確定」の区別があれば確定値を確認します。
率割れか最低保証金額割れか、現金差入額と必要返済建玉はいくらか、期限は何月何日の何時かを確認します。
買付代金不足や決済損などが同時にあると、入金が別の不足へ先に充当される会社があります。追証額だけを見ないことが大切です。
現金差し入れ、建玉の反対売買、預り金・代用有価証券からの振替など、使える方法と充当額は会社・発生原因で異なります。現引・現渡や決済益を見込む前に規定を確認します。
例としてSBI証券では、連携預金への銀行内資金移動だけでは追証入金にならず、買付余力へ即時反映されても入金計上日が翌営業日なら当日分に使えない場合があります。楽天証券では、入金後に預り金から信用保証金への振替が必要です。
入金や返済注文を出した時点で終わりにせず、反映後の追証画面を確認します。表示が変わらないときは、期限前に証券会社の公式窓口へ確認します。
入金したのに解消されない主な理由
| 行ったこと | 見落としやすい点 |
|---|---|
| 銀行から入金した | SBI証券では連携預金への移動だけでは追証入金にならず、楽天証券では入金後に信用保証金への振替が必要です。契約先の入金先・計上日・振替要否を確認します。 |
| 建玉を一部返済した | 返済代金の全額が追証へ充当されるわけではありません。会社画面の「必要返済建玉」と対象の返済方法を確認します。 |
| 株価が戻った | 今回確認した主要4社では、追証確定後の値戻りだけでは解消しません。期限までに所定の方法が必要です。 |
| 請求額だけ入れた | ほかの不足金へ先に充当されたり、費用や決済損の更新で必要額が変わったりする場合があります。 |
追証の期限はいつまで?4社の公式ルールで違いを確認
「翌営業日まで」と一律には言えません。2026年8月30日に各社の公式ルールを確認すると、回復水準も時限も異なりました。以下は優劣を付ける比較ではなく、契約差を示す代表例です。実際の請求額と期限はログイン後の画面、契約締結前交付書面、最新ルールを優先してください。
| 証券会社 | 発生・回復水準 | 期限・解消方法 |
|---|---|---|
| SBI証券 | 大引け後、委託保証金率20%未満、または委託保証金30万円未満で発生。前者は20%、後者は30万円まで回復 | 対応期限:発生日の翌営業日まで。 未解消時:発生日から2営業日後12時までに解消確認できない場合、同日後場寄り付きで全建玉を決済。 解消:率割れは現金入金または反対売買した建玉代金の20%相当。30万円割れは口座画面の指定方法を優先。現引・現渡と反対売買益は控除対象外。 |
| 楽天証券 | 大引け時20%未満、または委託保証金30万円未満。20%および/または30万円まで回復 | 対応期限:発生日の翌々営業日12時。 未解消時:証券会社が当日または翌営業日に全建玉を処分できる。 解消:入金した現金は預り金から信用保証金への振替が必要。建玉を決済した場合、当該建玉の約定代金×20%が追証解消額に充当。 |
| 松井証券 | 大引け時20%未満、20%回復相当 | 対応期限:発生時10%以上20%未満は翌々営業日11時30分、10%未満は翌営業日11時30分。 未解消時:全信用建玉を証券会社が任意決済。 解消:現金差し入れ、または反対売買した建玉代金の20%相当。 |
| マネックス証券 | 20%未満で発生し、30%まで回復。最低保証金割れは別判定 | 対応期限:発生日の翌営業日24時。 未解消時:原則、期日の翌営業日寄り付きで全建玉を強制決済。 解消:率割れは入金または画面表示の必要返済建玉を決済。最低保証金割れは入金のみで、現引・現渡は不可。 |
同じ会社でも例外があります。商品、信用コース、銘柄規制、保証金率の水準、休日、入金経路により扱いが変わることがあります。比較表だけで対応を決めず、ログイン後画面に表示された自分の期日と方法を確認してください。
追証を放置すると、強制決済後も不足金が残ることがある
期限までに解消が確認されない場合、証券会社は利用者の注文を待たずに建玉を決済できる旨を定めています。どの建玉をいつ処分するか、手数料や注文制限をどう扱うかは会社規定によります。
強制決済は損失上限を保証する仕組みではありません。発注時刻や注文方法は会社規定に従い、執行時の市場状況によって約定価格や注文の成立が保証されるものでもありません。決済後の損失が預り金や保証金を上回れば、追証とは別に不足金の入金が必要になる場合があります。
| 用語 | 状態 | 確認すること |
|---|---|---|
| 追証 | 信用建玉を保有中に、保証金率や最低保証金額が所定の基準を下回った状態 | 確定額、期限、認められる差入れ・返済方法 |
| 証券会社による強制決済 | 未解消などの契約条件により、証券会社が建玉を処分すること。会社の規定では「任意決済」と呼ぶ場合があります。 | 執行予定、対象建玉、注文制限、費用、取消し可否 |
| 不足金 | 決済損や買付代金などで、受渡しに必要な現金が不足している状態 | 不足額、入金期限、計上日、追証入金との充当順序 |
追証を避けるには、固定の安全率より「余力が減る経路」を管理する
全員に共通する安全率や建玉倍率はありません。値動き、代用有価証券、売買単位、資金移動の時間、会社基準が違うためです。次の確認を、建てる前と保有中に分けて行います。
追証の発生率、回復率、最低保証金額、判定時刻、期限、解消方法、入金計上日を確認します。
口座画面の保証金率に加え、追証ラインまであと何円あるかを見ます。費用と未受渡損益も含めて確認します。
同じ相場要因で下がりやすい建玉と代用株に偏ると、評価損と担保価値の低下が重なります。
損失許容額、返済注文、即時入金の受付時間を先に確認します。注文方法は株の指値・成行・逆指値、約定条件は株の約定と未約定で確認できます。
保有中は、大引け後の保証金画面、証券会社からの重要なお知らせ、JPXの規制銘柄を確認します。相場急変時は注文が成立しない可能性も含めて、建玉を持つ前の段階で余力を決めておくことが重要です。
まとめ
株の追証は、信用取引の保証金が契約先の基準を下回り、追加差し入れや建玉返済を求められることです。追証の発生基準、解消に必要な回復水準、期限、認められる方法は証券会社で異なります。
通知が出たら、計算サイトの概算ではなく、公式の口座画面で確定額・期日時刻・発生原因・入金経路を確認し、期限前に「解消済み」の表示まで確かめてください。
公式一次情報と確認方法
制度の共通部分は法令・JPX、期限や解消方法は各証券会社の公式ルールで確認しました。数値や運用は変更されるため、実際の対応では契約先の最新書面とログイン後画面を優先してください。
- e-Gov法令検索:金融商品取引法第161条の2に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令
- 日本取引所グループ:信用取引の目的・仕組み
- 日本取引所グループ用語集:委託保証金
- 日本取引所グループ用語集:追証
- 日本取引所グループ:現在の信用取引規制銘柄
- 日本証券業協会:代用有価証券の管理に関する規則
- SBI証券:追証が発生した場合の対応
- SBI証券:委託保証金率と最低委託保証金の維持
- SBI証券:追証発生後のスケジュール
- SBI証券:連携預金と追証入金の扱い
- SBI証券:即時入金の計上日
- 楽天証券:信用取引の基本ルール
- 松井証券:制度信用取引・無期限信用取引のルール
- マネックス証券:追証発生の条件
- マネックス証券:追証の解消方法
- マネックス証券:追証の解消期限と未解消時の扱い(2026年3月18日)
情報の確認について:2026年8月30日に、e-Gov・JPXと代表4社の公式ページを照合しました。制度上の基準と会社固有の条件を分けています。注文時や追証発生時は、この確認日より後に変更された条件を含め、契約先の最新書面とログイン後画面を確認してください。