証券用語解説

信用取引とは?仕組み・現物取引との違い・リスク

ヒナコ

ヒナコ

「信用取引」という言葉はよく聞きますが、普通の株取引とは何が違うんですか?

トシ

トシ

普通の株取引は「現物取引」と呼ばれ、自分の手持ち資金の範囲内で売買する。信用取引は証券会社から資金や株式を借りて、手持ち資金以上の取引を行う方法だ。保証金を担保に差し入れることで、その約3.3倍の金額まで取引ができる

ヒナコ

ヒナコ

手持ちの3倍以上の取引ができるということは、利益も3倍になるんですか?

トシ

トシ

利益が大きくなる可能性はある。だが損失も同じ倍率で拡大する。保証金50万円で150万円分の株を買い、株価が40%下落すれば60万円の損失だ。預けた保証金を超える損失が出る──これが信用取引の最大のリスクだ。仕組みを理解せずに使えば、資産を一瞬で失いかねない

信用取引とは

信用取引とは、証券会社に委託保証金(現金または代用有価証券)を担保として差し入れ、資金や株式を借りて売買を行う取引方法だ。

委託保証金は最低30万円以上、かつ約定代金の30%以上が必要だ。これは法令で定められた最低基準であり、保証金率30%の場合は保証金の約3.3倍まで取引が可能になる。FXのレバレッジと同じ「てこの原理」で、少ない資金で大きな取引ができる仕組みだ。

信用取引には「買建(かいだて)」と「売建(うりだて)」の2つの方向がある。買建は証券会社から資金を借りて株を買う方法、売建は株を借りて売る方法だ。現物取引では「自分の資金で株を買い、値上がりしたら売る」しかできないが、信用取引では「借りた株を売り、値下がりしたら買い戻す」こともできる。

信用取引を始めるには、通常の証券口座に加えて「信用取引口座」の開設が必要だ。口座開設時に投資経験や資産状況の審査がある。

証券会社 資金・株式を貸す 投資家 委託保証金を差し入れる 株式市場 売買を執行 資金・株式 保証金(担保) 保証金の約3.3倍 資金を借りて買う = 買建 株を借りて売る = 売建 委託保証金:最低30万円以上 かつ 約定代金の30%以上 保証金率30%の場合 → 約3.3倍まで取引可能

現物取引と信用取引── 5つの違い

①取引可能額

現物取引は自己資金の範囲内でしか売買できない。信用取引は委託保証金の約3.3倍まで取引可能だ。50万円の保証金で約165万円分の売買ができる。

②売りから入れるかどうか

現物取引は「買い→売り」の順番でしか取引できない。株価が下がる局面では利益を出す手段がない。信用取引は「売り→買い」もできる。株を借りて売り(売建)、値下がりしたところで買い戻せば利益になる。この仕組みを「空売り」と呼ぶ。

③同一資金による回転売買

現物取引では差金決済の禁止ルールにより、同一銘柄を同じ資金で1日に何度も売買することに制限がかかる。信用取引では同一資金で1日に何度でも売買可能だ。デイトレーダーが信用取引を使う主な理由の一つだ。

④保有コスト

現物取引では株を持っている間のコストは発生しない(売買手数料のみ)。信用取引では建玉を保有している間、金利(買建の場合)や貸株料(売建の場合)が日割りで発生する。

⑤返済期限

現物取引には保有期限がない。いつまでも持ち続けることができる。信用取引の制度信用取引は最長6ヶ月の返済期限がある。一般信用取引は証券会社により異なり、無期限のプランもある。

現物取引 取引可能額:自己資金の範囲内 取引方向:買いのみ 回転売買:制限あり 保有コスト:なし 保有期限:なし(無期限) リスクは投資金額まで 信用取引 取引可能額:保証金の約3.3倍 取引方向:買い+売り(空売り) 回転売買:自由 保有コスト:金利・貸株料(日割り) 返済期限:制度信用は最長6ヶ月 保証金を超える損失の可能性あり

買建と売建── 信用取引の2つの方向

買建(信用買い)── 資金を借りて株を買う

株価が上がると予想するときに使う。証券会社から資金を借りて株式を購入し、値上がりしたら売却して利益を得る。

利益 = 売却価格 − 購入価格 − コスト(金利・手数料)

損失は株価がゼロになった場合が最大だ。投資金額全額を失う可能性はあるが、それ以上の損失にはならない(現物取引と同じ方向)。ただしレバレッジをかけている分、同じ下落率でも損失の絶対額は大きくなる。

売建(信用売り・空売り)── 株を借りて売る

株価が下がると予想するときに使う。証券会社から株式を借りて売却し、値下がりしたら買い戻して株を返却する。差額が利益になる。

利益 = 売却価格 − 買い戻し価格 − コスト(貸株料・手数料)

株価には下限(0円)があるため利益は有限だが、上限がないため損失は理論上無限大だ。これが空売り最大のリスクだ。空売りの仕組みとリスクの詳細は空売り(ショート)とはで解説している。

買建(信用買い) 安く買う 高く売る = 差額が利益 損失の上限 = 投資額 売建(信用売り・空売り) 高く売る 安く買い戻す = 差額が利益 損失の上限 = 理論上なし

制度信用取引と一般信用取引

制度信用取引

証券取引所が定めたルールに基づく信用取引だ。返済期限は最長6ヶ月で、期限までに決済しなければならない。

取引できる銘柄は取引所が指定した「制度信用銘柄」に限定される。空売りができる銘柄はさらに絞られ「貸借銘柄」と呼ばれる。金利は一般信用より低い傾向がある。

空売りが集中して証券金融会社の株式が不足した場合、「逆日歩(ぎゃくひぶ)」という追加コストが発生する可能性がある。

一般信用取引

証券会社が独自に設定するルールに基づく信用取引だ。返済期限は証券会社により異なり、無期限のプランもある。

取引できる銘柄は証券会社が指定する。制度信用では取引できない銘柄を扱える場合もある。金利は制度信用より高い傾向がある。逆日歩は発生しない。

どちらを選ぶか

短期トレードでコストを抑えたいなら制度信用取引が基本だ。ただし逆日歩リスクと6ヶ月の返済期限に注意が必要だ。返済期限を気にせず中長期で保有したいなら一般信用取引(無期限タイプ)が選択肢になる。ただし金利コストは高い。

デイトレード向けには「一日信用取引」(金利・貸株料0%)を提供する証券会社もある。

制度信用取引 ルール策定:証券取引所 返済期限:最長6ヶ月 対象銘柄:取引所が指定 金利:低め 逆日歩:あり(株不足時) 短期トレード向き・コスト低め 一般信用取引 ルール策定:証券会社 返済期限:証券会社により異なる 対象銘柄:証券会社が指定 金利:高め 逆日歩:なし 期限の自由度が高い
ヒナコ

ヒナコ

信用取引のコストは手数料だけではないんですか?

トシ

トシ

手数料以外にも日々かかるコストがある。買建なら金利、売建なら貸株料だ。さらに制度信用の売建では逆日歩が発生することもある。建玉を持ち続ける日数が長くなるほど、コストは積み上がっていく

ヒナコ

ヒナコ

信用取引で一番怖いのは何ですか?

トシ

トシ

追証(おいしょう)だ。建玉の含み損が拡大して委託保証金率が一定水準を下回ると、追加で保証金を差し入れなければならない。期限までに入金できなければ建玉は強制決済される。しかも相場が回復しても、一度発生した追証は自然に消えない。信用取引で退場する個人投資家の多くは、この追証への対応を誤っている

信用取引のコストとリスク

コスト

信用取引には売買手数料以外にも複数のコストが発生する。

買方金利(買建時)── 証券会社から借りた資金に対して日割りで発生する。年率2%〜3%台が多い。

貸株料(売建時)── 証券会社から借りた株式に対して日割りで発生する。年率1%〜2%台が多い。

逆日歩(制度信用の売建時のみ)── 株式の調達コストだ。金額は日によって変動し、予測が難しい。

売買手数料── 証券会社によっては現物取引と同額、または無料の場合もある。

管理費・権利処理手数料── 建玉を1ヶ月以上保有した場合などに発生する場合がある。

コスト構造の詳細は証券会社によって異なる。ネット証券の手数料比較で確認できる。

リスク

レバレッジリスク── 利益も損失も保証金に対して約3.3倍に拡大する。保証金を超える損失が発生する可能性がある。

追証リスク── 委託保証金率が最低維持率(多くの証券会社で20%)を下回ると追加保証金(追証)が発生する。追証の仕組みと対処法は追証(おいしょう)とはで解説している。

空売りの無限損失リスク── 売建の場合、株価上昇に上限がないため、損失は理論上無限大だ。詳細は空売り(ショート)とはで解説している。

強制決済リスク── 追証の入金が期限に間に合わなければ、証券会社の判断で全建玉が強制的に決済される。

逆日歩リスク── 制度信用の売建で予想外の逆日歩が発生し、想定以上のコストが発生する場合がある。

コスト ① 買方金利(年率2%〜3%台) ② 貸株料(年率1%〜2%台) ③ 逆日歩(制度信用のみ) ④ 売買手数料 ⑤ 管理費・権利処理手数料 保有日数が長いほどコスト増 リスク ① レバレッジ損失(約3.3倍) ② 追証(追加保証金) ③ 空売りの無限損失 ④ 強制決済 ⑤ 逆日歩変動 保証金を超える損失の可能性

【プロの視点】信用取引は「道具」であって「近道」ではない

証券会社のセミナーで「信用取引を使えば少ない資金で大きく稼げる」と聞いた人が、翌週に信用取引口座を開設して全力でレバレッジをかける──この光景を何度も見てきた。そして多くの場合、半年以内に退場していった。

信用取引は、正しく使えば投資の幅を広げる強力な道具だ。下落局面で空売りを使えばヘッジになる。差金決済の制約がないため、日中の短期売買にも適している。制度信用の低い金利で効率的にレバレッジをかけ、投資資金の回転率を上げる使い方もある。

だが道具を持った瞬間に勝てるようになるわけではない。信用取引で利益を出し続けている投資家は、例外なく損切りのルールを持っている。いくらまでなら許容するのか、どの水準で撤退するのか──このルールなしに信用取引を始めるのは、ブレーキのない車でアクセルを踏むようなものだ。

まず現物取引で自分の投資判断の精度を確認し、損切りの習慣を身につけてから信用取引に移行する。この順番を飛ばすべきではない。

次に読むべきページ

信用取引の基本を理解した上で、関連するテーマを深掘りしたい場合は以下のページを参照してほしい。

まとめ

信用取引は、証券会社に委託保証金(最低30万円以上・約定代金の30%以上)を差し入れ、資金や株式を借りて手持ち資金の約3.3倍まで売買できる取引方法だ。現物取引との最大の違いは「レバレッジ」「空売り」「回転売買」の3点。

制度信用取引(取引所ルール・返済期限6ヶ月・金利低め・逆日歩あり)と一般信用取引(証券会社ルール・無期限もあり・金利高め・逆日歩なし)の2種類がある。短期なら制度信用、期限を気にしたくないなら一般信用が基本の使い分けだ。

レバレッジは利益も損失も拡大する。保証金を超える損失が出る可能性があり、保証金率が低下すれば追証(追加保証金)が発生する。信用取引は投資の幅を広げる強力な道具だが、損切りルールなしに使うべきではない。

よくある質問

信用取引を始めるにはいくら必要?

委託保証金として最低30万円以上が必要だ。加えて、約定代金の30%以上に相当する保証金を維持しなければならない。30万円の保証金で約100万円分の取引が可能になる計算だ。

信用取引の金利はどのくらいかかる?

買建の場合、年率2%〜3%台が一般的だ。例えば100万円の買建玉を30日間保有すると、金利は約1,600円〜2,500円になる(年率2%〜3%の場合)。金利は日割りで計算され、建玉を保有する日数分だけ発生する。証券会社ごとの手数料比較はネット証券の手数料比較で確認できる。

信用取引はNISA口座で使える?

使えない。NISA口座は現物取引専用であり、信用取引はNISAの対象外だ。信用取引を行うには、特定口座または一般口座で別途「信用取引口座」を開設する必要がある。

保証金は現金以外でも差し入れられる?

保有している株式を「代用有価証券」として差し入れることができる。ただし株式の評価額は時価の80%程度(証券会社により異なる)に掛け目が適用されるため、額面通りには使えない。代用有価証券の株価が下がると保証金が減り、追証が発生するリスクがある。

信用取引で株主優待や配当は受け取れる?

買建の場合、配当金に相当する「配当落調整金」を受け取ることはできるが、株主優待は受け取れない。売建の場合は逆に配当落調整金を支払う必要がある。株主優待や議決権を得るには現物で株式を保有する必要がある。

出典・参考情報

リスクに関する重要事項:信用取引は預託した委託保証金を上回る損失が生じる可能性がある。株式投資は元本保証ではなく、株価の変動により投資元本を下回る損失が生じる可能性がある。投資判断はすべて自己責任で行うこと。

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