国内株の信用取引 入門ガイド

信用取引とは?仕組み・現物との違い・保証金・費用・リスク

信用取引とは、委託保証金を担保として証券会社へ預け、買建では資金、売建では株式を借りて売買する取引です。新規建ての約定後、返済していない取引を建玉(たてぎょく)といい、反対売買または現引・現渡により、定められた期限までに返済します。

執筆・検証:トシ(運営者情報)

最初に確認する判断軸:信用取引を始める前に、注文ごとの取引区分(制度・一般)、必要保証金、返済期限、全費用、決済方法、保証金不足時の扱いを利用する証券会社の最新書面・画面で確認します。「保証金があれば一定倍率まで使える」とだけ考えると、銘柄規制、費用、期限を見落とします。

重要:信用取引では、相場急変や流動性低下により想定した価格で決済できず、損失が差し入れた委託保証金を上回ることがあります。口座開設審査を通過しても、取引が個々の資力・目的に適していることを意味しません。

信用取引の仕組み:保証金を預け、資金・株式を借りて返済する

現物の買付けでは代金の全額を用意します。信用取引では、証券会社との契約に基づき、買建なら買付資金、売建なら売付ける株式を借ります。買建で買った株式や売建の売却代金も、返済が終わるまで担保として扱われます。

適用される保証金率によっては、委託保証金額を超える売買や、条件を満たす銘柄の売建ができます。一方で、借りた資金・株式の返済、保有中の費用、担保の維持という義務も同時に生じます。

委託保証金を差し入れる

現金または利用会社が認める代用有価証券を担保として預けます。

取引区分を選ぶ

制度信用・一般信用、買建・売建、銘柄、数量などを指定します。

建玉を管理する

未決済の契約が建玉です。評価損益、費用、保証金、期限を確認します。

期限までに返済する

反対売買、または条件を満たす現引・現渡で借りた資金・株式を返します。

買建と売建

買建は証券会社から買付資金を借りて株式を買う取引、売建は株式を借りて売る取引です。どちらも未決済の間は「株を普通に保有している状態」と同じではなく、返済義務、費用、担保管理があります。売建の対象銘柄、在庫、価格規制などは空売り・売建の仕組みと注意点で詳しく扱います。

現物取引との違いは「資金・株式を借りる契約」が残ること

信用取引は、単に現物取引へ倍率を掛けたものではありません。借入れ、担保、返済期限、日々の費用が加わるため、注文時だけでなく建玉を保有している間も条件確認が必要です。

国内株の一般的な比較。実際の取扱いは商品、銘柄、証券会社で異なります。
比較項目現物取引信用取引
取引の前提買付代金の全額、または売却する株式を用意する委託保証金を預け、資金または株式を借りる
未決済の契約通常、受渡し後に借入れの返済義務は残らない建玉が残り、期限までに返済する必要がある
売りから始める取引原則として保有株式を売る条件を満たす銘柄では株式を借りて売建できる
費用売買手数料などが条件により発生する売買手数料に加え、金利・貸株料・品貸料・管理費等が発生し得る
損失と担保買付資金を全額用意し、保有株の値下がりを負担する建玉の損失と担保価値の低下が重なり、保証金を超える損失もあり得る
保有・返済保有を続けるか売却する。借入れの返済期限はない転売・買戻し、または現引・現渡で期限までに返済する

指値・成行など注文条件は株式の注文方法と注文条件、注文後に成立する仕組みは株式の約定と未約定の確認方法、売気配・買気配の見方は株式の板情報の読み方で詳しく解説します。このページでは、信用契約と建玉管理に範囲を絞ります。

委託保証金は「最初に入れる額」だけでなく、建玉中の担保

委託保証金は、信用取引の担保として証券会社へ差し入れる現金・有価証券です。JPXが示す通常銘柄の制度上の最低基準は、約定価額の30%以上、かつ30万円以上です。レバレッジ型・ダブルインバース型ETF・ETNは60%以上です。

30%・30万円だけで発注可否は決まりません。取引所が委託保証金率を引き上げる銘柄別規制を行う場合があり、証券会社もより厳しい必要率、最低額、現金比率、取引上限を定められます。注文前に、銘柄と取引区分を指定した状態で表示される最新の必要額を確認してください。

代用有価証券は時価全額で評価されない

証券会社が認める株式などは、現金の代わりに代用有価証券として差し入れられます。ただし評価額は時価に所定の掛目を掛けた額です。対象銘柄や掛目は固定ではなく、相場や発行会社の状況、証券会社の判断などで変更される場合があります。

担保の二重低下に注意:買建玉が値下がりして評価損が増えるのと同時に、代用有価証券も値下がりすると、保証金の余裕は両方向から減ります。建玉と同じ銘柄・同じ業種の株を代用にすると、同じ材料で同時に下がる可能性も確認が必要です。

保証金率低下、追加保証金、入金・解消期限、強制決済の詳しい条件は証券会社ごとの差が大きいため、追証が発生する仕組みと強制決済の確認手順で確認してください。

制度信用と一般信用:期限だけでなく、銘柄・費用・返済条件を比べる

信用取引の注文では、制度信用または一般信用を選びます。制度信用は取引所ルールに沿う取引、一般信用は証券会社と顧客の契約条件に沿う取引です。「短期なら制度、長期なら一般」「制度はいつも安い」と一律には決められません。

JPXの制度概要を基にした比較。一般信用の実際の対象・期限・費用は利用会社の契約を優先します。
項目制度信用一般信用
制度上の条件対象銘柄、最長期限、品貸料・権利処理等は取引所規則に基づく。金利等の会社条件は別対象、期限、費用、権利処理等を証券会社と顧客の契約で定める
対象銘柄取引所が選定した制度信用銘柄。売建は貸借銘柄など条件が加わるJPXの概要では原則全上場銘柄だが、実際は証券会社の取扱い・在庫・規制による
返済期限最長6か月無期限、短期、日計りなど、証券会社との契約による
貸借取引証券金融会社との貸借取引を利用できる貸借取引を利用せず、証券会社が条件を定める
品貸料・固有費用貸借取引の株不足時に品貸料が発生する場合がある貸借取引の品貸料ではなく、費用・権利処理は契約による。会社独自の追加貸株料等があり得る
注文前の比較対象銘柄、規制、最終返済日、金利・貸株料、品貸料対象銘柄、売建在庫、期限、金利・貸株料、追加費用、期限短縮条件

制度信用でも、過度な利用や株不足に応じて委託保証金率の引上げ、貸株注意喚起、貸株申込みの制限・停止などが行われます。一般信用でも、在庫や企業再編等により注文・返済条件が変わる場合があります。発注画面の区分名だけでなく、当該注文に適用される最終返済日と費用明細を確認します。

信用取引の費用は率ではなく「発生条件と日数」まで確認する

信用取引の実費は、制度・一般、買建・売建、証券会社、手数料コース、銘柄、保有日数、株式の需給で変わります。相場として固定の年率を置くのではなく、注文前に適用率・計算日数・最低額・上限・優遇条件を見積もります。

主な費用の確認表。名称と計算方法は証券会社により異なります。
費用主に発生する場面確認すること
売買手数料新規建て・返済の約定取引区分、約定代金、コース、無料条件、強制決済時の扱い
買方金利買建で借りた資金適用年率、日数の数え方、受渡日・休日の扱い、優遇条件
貸株料売建で借りた株式制度・一般ごとの率、日数、短期・日計り条件
品貸料(逆日歩)制度信用で貸借取引の株不足が生じ、品貸料が付いた銘柄日証金の公表値と日数。売方が支払い、買方が受け取る。注文時点では将来分の実際の品貸料は確定しない
一般信用の固有費用証券会社が株式を調達する売建等追加貸株料・プレミアム料等の有無、計算単位、上限
管理費・権利調整等一定期間の保有、配当・分割等の権利処理、現引・現渡など管理費、名義書換料、権利処理費用、返済方法別費用。配当落調整金等は建玉方向による受払いを確認

金利・貸株料は、適用年率だけで計算しません。年率の日割り方法、日数の起算・終了、休日、端数処理を利用会社の公式計算式で確認します。売買手数料、品貸料、一般信用の固有費用、管理・権利処理費用も確認し、配当落調整金等は受払いの方向を分けて見積もります。証券会社の料金比較自体はネット証券の手数料比較で扱います。

返済方法は4つ:転売・買戻し・現引・現渡

信用取引は、借りた資金または株式を返して終了します。建玉の方向によって使える返済方法が異なります。

信用取引の基本的な返済方法。可否、受付時刻、必要資金・株式は利用会社で確認してください。
建玉返済方法何をするか
買建転売(反対売買)買建した株式を売り、その売却代金で借入金を返済する
買建現引融資相当額の現金を用意して返済し、同種同量の株式を現物として受け取る
売建買戻し(反対売買)同じ銘柄・数量を買い戻し、借りた株式を返済する
売建現渡同種同量の株式を用意して返済し、担保となっている売却代金を受け取る

制度信用の返済期限は最長6か月ですが、「新規建てから必ず6か月後の同じ時刻」とは限りません。一般信用の期限も無期限とは限らず、短期・日計りなどがあります。企業再編、上場廃止、銘柄規制、売建在庫などにより期限が短縮されることもあるため、注文画面に表示される最終返済日と証券会社の期限短縮条件を確認します。

信用取引の主要リスク:価格だけでなく、担保・期限・流動性を見る

利用前に把握する主なリスク。発生条件は契約締結前交付書面を優先してください。
リスク何が起きるか事前の確認
価格変動とレバレッジ保証金を上回る取引が可能な場合は、損益の金額も大きくなり得る最大建玉ではなく、許容損失額から数量を決める
担保価値の低下建玉の評価損や費用に加え、代用有価証券の値下がり・掛目変更で余裕が減る維持率の計算方法、代用掛目、追加差入れの判定時刻と期限
流動性・価格飛び特別気配、売買停止、ストップ高・安などで希望価格・時刻に返済できない出来高、注文状況に加え、成立しない場合の損失余力
期限・強制決済返済期限や保証金不足の条件により、意図しない時点・価格で決済される場合がある最終返済日、期限短縮、追加保証金、任意決済の条件
費用の不確実性保有日数、金利改定、株不足による品貸料等で費用が増える予定日と延長時の総費用、日々公表される品貸料
銘柄・取引規制必要保証金の引上げ、新規建て・現引・転売等の制限、売建在庫不足が起こり得るJPX、日証金、証券会社の最新規制・注意喚起

売建は株価上昇時の損失構造や株式調達に固有の注意があります。詳しくは空売りの損失・貸株・規制を確認してください。追証・保証金率低下・強制決済は追証ガイドで詳しく扱います。

利用前の確認手順:口座開設時と注文ごとを分ける

信用取引の確認書面は、一度読めば終わりではありません。口座の共通条件と、銘柄・取引区分・時点で変わる条件を分けて確認します。

口座開設前に契約書面と開始基準を読む

契約締結前交付書面、信用取引口座設定約諾書、取引開始基準で、元本超過損、費用、保証金、期限、強制決済を確認します。国内株の信用取引はクーリング・オフの対象外です。

注文画面で制度・一般と最終返済日を確認する

同じ銘柄でも取引区分により、対象、売建在庫、金利・貸株料、期限、返済方法が変わります。

必要保証金と規制を銘柄単位で確認する

証券会社の必要額・現金比率・代用掛目とJPXの増担保規制を確認します。制度信用の貸借銘柄等に関係する場合は、日証金の貸借規制・品貸料も確認します。

全費用と終了方法を先に見積もる

予定保有日数と延長時の費用、転売・買戻し・現引・現渡の必要資金、受付時刻、注文が成立しない場合を確認します。

許容損失額から数量を決め、建玉を日々確認する

発注可能額を上限にせず、価格が想定外に動いたときの損失と追加資金を先に決めます。建玉、保証金、期限、費用、規制は保有中も更新します。

注文前に整理し、保有中も更新する4項目

1. 契約

制度・一般、買建・売建、対象銘柄、最終返済日、期限短縮、権利処理。

2. 担保

必要保証金、現金比率、維持率の計算、代用掛目、判定時刻、追加差入れ期限。

3. 費用

手数料、買方金利、貸株料、品貸料、追加調達費用、管理・権利処理費用。

4. 出口

許容損失、転売・買戻し・現引・現渡、必要資金・株式、成立しない場合の余力。

目的別に確認する専門ガイド

追証・保証金率低下・強制決済

追加保証金の判定と解消、証券会社による任意決済の確認項目を整理します。

空売り・貸株・売建固有の注意

売建から始める仕組み、損失、価格規制、株式調達を確認します。

指値・成行など株式の注文方法

注文価格、執行条件、有効期限の選び方を確認します。

注文が約定する仕組み

注文受付と売買成立の違い、一部約定、未約定の確認手順を扱います。

株式の板情報の読み方

売気配・買気配、価格・数量、注文の優先順位を確認します。

デイトレ向け証券会社比較

短期売買で使う証券会社を、手数料・ツール等の条件から比較します。

まとめ

信用取引は、委託保証金を担保に資金・株式を借り、建玉を期限までに返済する取引です。現物取引との違いは、取引額だけでなく、借入れ・担保・返済期限・保有中の費用があることです。

利用前は、制度・一般、必要保証金、最終返済日、全費用、返済方法、保証金不足時の扱いを注文単位で確認します。30%・30万円などの制度上の基準だけで発注可否を判断せず、銘柄規制と証券会社の最新条件を優先してください。

公式一次情報

制度、保証金、費用、返済、規制は本ページの最終更新日時点で、以下の原資料を再確認しました。数値・条件は変更されるため、注文時はリンク先と利用する証券会社の最新書面・画面を確認してください。

制作方針:JPXの制度基準と、日本証券業協会・日本証券金融・金融庁の公式情報を基礎に、「注文前に何を確認するか」の順序へ整理しました。証券会社固有の率、最低額、期限、費用、画面仕様は一般ルールとして断定せず、契約締結前交付書面と注文画面を優先する構成です。

あわせて読みたい