株式の板情報とは?売気配・買気配、成行、OVER・UNDERの見方と限界
板情報は、価格ごとの売気配・買気配と表示数量を一覧にした注文状況です。最初は、画面の取引状態、最良売気配・最良買気配、価格と数量、成行、OVER・UNDERの順に確認します。ただし、板は変更・取消しができる注文の一時点であり、将来の値動きや注文者を断定する情報ではありません。
最初に確認する判断軸:数字の大小を比べる前に、どの市場の板か、寄付き前・ザラバ・特別気配などどの状態か、表示は何本か、リアルタイムか遅延かを確認します。同じ数字でも、取引状態や証券会社の画面仕様が違えば意味が変わります。
発注時の注意:表示後に注文が追加・変更・取消し・約定するため、画面で見た価格や数量での成立は保証されません。特に成行注文は価格を指定しないので、想定外の価格で約定したり、一部だけ約定したり、相手注文が足りず成立しなかったりする場合があります。
この記事の対象:主に東京証券取引所へ発注された国内株と、一般的な証券会社の板画面です。PTS・SOR、外国株、単元未満株では表示条件が異なる場合があります。画面名、列の位置、色、記号、更新条件は利用する証券会社の凡例を優先してください。
板情報とは、価格別に整理された売注文・買注文の表示
JPXは板を、取引参加者からの売買注文を銘柄別に記録し、売り・買い別、値段別に整理して表示する注文控えと説明しています。一般的な板では、中央に価格、その両側に売数量と買数量が並びます。
売気配は売りたい側が示す価格、買気配は買いたい側が示す価格です。最も安い売り指値が最良売気配、最も高い買い指値が最良買気配です。この2つは直近に成立した現在値(約定値段)とは別の情報です。
数量の読み方:一般的な10本板では、同じ価格の注文数量が値段別に集計されます。ただし、MBO対応の全板は全値段を注文単位で配信します。板の数量だけでは、注文者の人数、氏名、売買目的は分かりません。
板の読み方:売気配・買気配、価格・数量を一つの例で確認
次の表はザラバ通常時の架空例です。まず中央の価格を見て、上側の売気配と下側の買気配から、最良売気配・最良買気配を探します。売りと買いの配置は証券会社によって左右または上下が入れ替わることがあります。
表は横にスクロールできます。
| 売数量 | 価格・区分 | 買数量 |
|---|---|---|
| 14,000株 | OVER | — |
| 1,000株 | 1,512円 | — |
| 5,000株 | 1,511円 | — |
| 3,000株(最良売気配) | 1,510円 | — |
| — | 1,509円 | 4,000株(最良買気配) |
| — | 1,508円 | 6,000株 |
| — | 1,507円 | 2,000株 |
| — | UNDER | 18,000株 |
この例の最良売気配は1,510円、最良買気配は1,509円で、表示上の差(スプレッド)は1円です。価格行の刻みである呼値は銘柄区分と価格水準で異なります。
買いたい場合は売数量側を最も安い価格から、売りたい場合は買数量側を最も高い価格から確認します。成行注文では、板が変わらないと仮定すれば相手数量を価格順にたどれますが、実際の約定価格や約定数量は保証されません。
| 要素 | この例で見えること | この例だけでは分からないこと |
|---|---|---|
| 最良売気配 | 1,510円に売注文3,000株が表示されている | 表示後も残るか、誰が何の目的で出したか |
| 最良買気配 | 1,509円に買注文4,000株が表示されている | この数量が価格を支えるか、次の値動き |
| 価格と数量 | 画面内の各価格に表示された注文数量 | 注文者数、他市場の注文、非表示範囲の個別内訳 |
| スプレッド | 最良売気配と最良買気配の表示上の差 | 自分の注文が最終的に成立する価格 |
成行、OVER・UNDERは取引状態と表示範囲を分けて読む
成行注文は「板に表示されない」とは限らない
成行注文は価格を指定しない注文です。ザラバ中に反対注文と対当できる成行注文は順次売買処理されるため、通常の価格行へ残り続けるものではありません。一方、東証の公式資料では、板寄せ方式のときに成行注文数量が表示されるとされています。寄付き前、プレ・クロージング、特別気配・連続約定気配などでは、板の「成行」欄に数量が見える場合があります。
成行欄の位置、名称、更新方法はツールによって異なります。成行注文を選ぶ場面や指値との違いは指値・成行・逆指値など注文方法の違いで確認してください。
OVER・UNDERは画面外の累計数量
東証のFLEX Standardは、売り・買いそれぞれ10値段と、その外側の注文数量を配信します。一般的な証券会社画面では、OVERは表示された上限価格より高い売注文の累計、UNDERは表示された下限価格より低い買注文の累計です。
OVER・UNDERで見えること
- 表示範囲の外側にある売注文・買注文の累計数量
- 現在の画面が価格帯の一部だけを示していること
OVER・UNDERでは分からないこと
- 注文が最良気配からどれだけ離れているか
- 価格別の内訳、注文件数、注文者、注文目的
- OVERとUNDERの大小から見た将来の上昇・下落
5本板と10本板ではOVER・UNDERの集計範囲が異なり、全板ではOVER・UNDERを表示しないツールもあります。表示本数と定義を証券会社のヘルプで確かめず、数量だけを比較しないことが大切です。
注文の優先順位:板の並びは価格優先、同じ価格では通常は時間優先
東証の競争売買では、売注文は低い価格、買注文は高い価格が優先され、成行注文は指値注文より優先されます。同じ価格の指値注文は、通常は東証へ先に届いた注文が優先されます。
| 原則 | 板での意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 価格優先 | 売りはより安い価格、買いはより高い価格が相手注文に近い | 成行は指値より優先するが、成立数量や価格は保証されない |
| 時間優先 | 同じ価格では、通常は先に東証へ届いた注文が先に並ぶ | 自分より前の注文数量や全注文件数を一般的な値段別板だけで把握できない |
| 同時呼値の例外 | 寄付きや売買再開前など、価格決定前までの注文は同時に出されたものとして扱う | 通常の時間優先をそのまま当てはめず、板寄せ方式で価格を決める |
現在値が自分の指値と同じでも、先に並ぶ注文や反対数量によって未約定・一部約定になることがあります。詳しくは注文が約定する価格優先・時間優先の仕組みで解説しています。
板寄せ・ザラバ、特別気配・連続約定気配で板の状態は変わる
板の数字を読む前に、画面の気配区分や取引状態を確認します。同じ数量でも、売買を順次成立させているザラバと、注文を集めて一つの価格を決める板寄せでは意味が異なります。
注文を集め、売注文と買注文から合致する一つの約定値段を決める段階です。成行数量が表示される場合があり、予想される気配は注文の追加・取消しで変わります。
価格優先・時間優先に従い、条件が合う注文を順次成立させる段階です。表示と発注の間にも板は変わります。
直前の値段から急に離れた価格で売買が成立しそうな場合などに、すぐ成立させず気配を表示し、反対注文を呼び込みながら価格を段階的に更新する仕組みです。
売買が成立しながら短時間に価格が急変する場面で、連続約定を一時中断して表示する気配です。約定前に表示される特別気配とは発生の仕方が異なります。
画面記号は会社固有:「前」「特」「連」などの略号、矢印、色を使う画面がありますが、表記は統一されていません。制度名はJPX資料、実際の記号は利用ツールの凡例で確認します。
板寄せ・ザラバ・特別気配・連続約定気配の詳しい売買制度は約定ガイドで扱っています。板ページでは、数字を読む前に状態を見分けることが要点です。
板を見る手順:数字の大小より先に5項目を確認
証券会社の銘柄詳細や注文画面で「板」「気配」などを開いたら、次の順で確認します。名称は会社・アプリで異なります。
東証かPTSか、5本・10本・全板のどれか、リアルタイムか遅延か、値段別か注文単位かを確認します。SOR利用時は実際の執行市場も別に確認します。
寄付き前、ザラバ、プレ・クロージング、特別気配、連続約定気配、売買停止などを見分けます。分からない記号は画面の凡例を開きます。
現在値は直近の約定値段です。最良売気配・最良買気配は現在表示されている最も近い売り・買いの指値で、同じとは限りません。
自分の注文数量と比べ、画面が変わらないと仮定した場合にどの価格行まで相手注文が表示されているかを確認します。累計数量から将来方向は決めません。
受付、未約定、一部約定、約定済み、取消済みを板の変化だけで推測せず、注文状態、約定数量、残数量を証券会社の照会画面で確認します。
板で分かること・分からないこと:厚さや大口だけで方向を決めない
板から条件付きで確認できること
- 表示中の価格と注文数量、最良売気配・最良買気配
- 表示範囲、成行欄、気配区分など画面に明示された状態
- 表示が変わらないと仮定した場合の、相手注文が並ぶ価格帯
- 価格行の間隔と表示上のスプレッド
板だけでは確認できないこと
- 将来の上昇・下落、表示数量が価格を支えるか抑えるか
- 注文者の氏名、人数、機関投資家かどうか、注文の目的
- 注文が残る時間、取消し・変更・消失の理由
- 他市場や表示範囲外を含む市場全体の注文状況
「板が厚い・薄い」は表示深度の説明にとどめる
各価格に表示される数量が多い状態は「板が厚い」、少ない状態は「板が薄い」と呼ばれます。これは一時点の表示された注文の深さを表す言い方です。板が変わらないという仮定では、成行注文が複数の価格行へ進む可能性を考える材料になりますが、厚い板が残ること、希望価格で成立すること、価格の方向は保証しません。
板の数字が消えても原因は一つに決められない
数量は、新規注文、訂正、取消し、約定、注文の失効、取引状態や配信方法の変化で増減します。売気配が減った事実だけから「大口の買い成行」、買気配が減った事実だけから「急落の前兆」とは断定できません。
大口注文の取消しだけで見せ玉とは判断できない
JPXは、約定させる意思がなく、他の投資者の注文を誘引する目的で注文を出す行為を相場操縦規制の対象として説明しています。ただし、規制上の判断は発注・取消しの反復、数量、売買状況、目的などを総合して行われます。個別の大口注文が消えたことだけで、見せ玉や特定の売買主体と推測しないでください。
板数量、出来高、歩み値、チャートは示す時点が違う
板は未成立の注文状況を見る資料です。成立した取引を確認する出来高・歩み値や、過去の値動きを示すチャートとは役割が異なります。
| 情報 | 主に示すもの | 確認先 |
|---|---|---|
| 板情報 | 現在表示されている価格別の注文数量と気配状態 | このページ |
| 出来高 | 一定期間に実際に成立した株数 | 成立した株数を示す出来高の見方 |
| 歩み値 | 約定した価格・数量・時刻の履歴 | 約定履歴を時系列で見る歩み値とフル板 |
| チャート | 過去の価格・出来高を時間軸で表したもの | ローソク足など株式チャートの基本 |
| 注文・約定照会 | 自分の注文状態、約定数量、残数量 | 株式注文の約定・未約定の確認手順 |
目的別に確認する専門ガイド
まとめ
板情報は、価格ごとの売気配・買気配と表示数量を見る注文状況です。画面では、取引状態、最良売気配・最良買気配、価格・数量、成行、OVER・UNDERの順に確認します。
板の厚さ、大口注文、OVER・UNDERの大小は、将来の値動きや売買主体を示しません。発注後は板の変化から結果を推測せず、注文・約定照会で約定数量と残数量を確認してください。
公式一次情報
板の定義、東証の売買制度、配信仕様、画面表示は2026年8月30日に以下の原資料を再確認しました。呼値、気配制度、配信内容、証券会社画面は変更されるため、実際の発注時はJPXと利用する証券会社の最新情報を確認してください。
- 日本取引所グループ用語集:板
- 日本取引所グループ用語集:気配
- 東京証券取引所:東証公式株式サポーター 株式取引編 第8版
- 日本取引所グループ:売買成立の方法
- 日本取引所グループ:リアルタイム情報の配信内容
- JPXサービスデスク:FLEX StandardとMarket by Orderの違い
- 日本取引所グループ:呼値の単位
- 日本取引所グループ:相場操縦規制
- SBI証券:OVER・UNDERの表示例
- マネックス証券:板画面の表示例
- 楽天証券:板画面のヘルプ
制作方針:JPXの制度と配信仕様を基礎に、証券会社固有の列配置・表示本数・記号を全社共通ルールとして扱わず、「画面をどの順で確認し、何を推測しないか」に整理しました。競合記事は疑問の発見にだけ使い、制度・数値・条件の根拠には使用していません。