公式情報で制度比較

iDeCoと新NISAはどっちを優先?使う時期と所得控除で判断

「どちらが得か」だけでは決まりません。先に見るのは、そのお金をいつ使うか、本人の所得控除が働くか、勤務先の年金制度でiDeCoへいくら拠出できるかです。この3点から、片方を先にする場合と併用する場合を整理します。

最終更新日:

結論:年齢ではなく「使う時期」と「所得控除」で分ける

近い支出・生活防衛資金

どちらにも入れず、まず預貯金等で分けます。新NISAで選ぶ商品は価格が下がる可能性があるため、すぐ必要なお金の置き場ではありません。

60歳前にも使う可能性がある長期資金

売却できる新NISAが候補です。ただし売却時の価格によっては元本割れします。

受給年齢まで使わない老後専用資金

本人の所得控除が働き、手数料・受取時課税も確認できるならiDeCoが候補です。残りを新NISAへ分ける併用もできます。

重要:新NISAとiDeCoは税制上の制度です。中で株式や投資信託を選べば価格変動・元本割れがあります。iDeCoには預貯金等の元本確保型商品もありますが、手数料を含めて確認が必要です。

新NISAとiDeCoの違い:優先順位を決める9項目

最大の違いは、iDeCoには掛金の所得控除がある一方、資産を原則60歳前に引き出せないことです。新NISAは売却できますが、投資時の所得控除はありません。

iDeCoの中心

老後資金を自分で積み立てる私的年金です。掛金は本人の所得控除となり、運用益は運用中非課税です。受取は原則60歳以降で、60歳時点の通算加入者等期間が10年未満なら開始が遅れ、60歳以降の初加入は原則加入5年後です。

新NISAの中心

対象商品から生じる配当・分配金や売却益を非課税にする投資口座です。保有商品は売却できますが、価格下落時に売れば損失が確定し、NISAの損失は他口座と損益通算できません。

比較項目iDeCo新NISA
主な目的老後資金を積み立てる私的年金幅広いライフプランに使う長期の資産形成
利用できる人原則20歳以上65歳未満の公的年金被保険者。加入区分・受給状況等の条件あり利用する年の1月1日時点で18歳以上。同一年に新規買付できる金融機関は1つ
拠出・投資時本人が払った掛金は全額所得控除。課税所得がなければ控除効果なし投資額の所得控除はなし
運用中運用益は運用中非課税対象商品の配当等・売却益が非課税。例外・受取方式の条件あり
途中利用原則60歳前は引出不可。掛金停止はできるが資産は残る全部または一部を売却可能。売却時の価格に注意
受取・売却時年金は公的年金等控除、一時金は退職所得控除の対象。課税される場合あり対象利益は非課税。損失は損益通算・繰越控除不可
現行の上限月5,000円以上。月2万円・2.3万円・6.8万円等、加入区分と企業年金で異なる年360万円、総枠1,800万円(成長投資枠は1,200万円内数)
費用国民年金基金連合会等の制度手数料、運営管理機関、商品費用がある商品・取引・サービスに応じた費用があり得る
主な商品運営管理機関が提示する投資信託、保険、預貯金等つみたて投資枠の対象投信、成長投資枠の上場株式・投信等

※NISAで商品を売却すると、その商品の取得価額分の総枠は翌年以降に再利用できます。ただし、その年の年間360万円枠へ上乗せされるわけではありません。

どっちを先にする?5つの質問で判断

「節税額が大きい方」から選ぶと、必要なときに使えない資金までiDeCoへ入れるおそれがあります。次の順で確認します。

生活防衛資金と近い支出を預貯金等で確保したか

未確保なら、まず投資に回す額を見直します。住宅、教育、納税、医療、転職など近い支出も別にします。

そのお金を60歳前に使う可能性があるか

可能性があるならiDeCoへ固定せず、新NISA候補または預貯金等で持つ額を残します。

本人に課税所得があり、掛金の所得控除が働くか

iDeCoの軽減額は額面年収だけでは決まりません。掛金年額と本人に適用される所得税・住民税の状況で変わります。

勤務先制度を反映したiDeCoの実際の上限はいくらか

企業型DCやDB等がある人は、月2万円がそのまま使えるとは限りません。勤務先の掛金額・他制度掛金相当額を確認します。

手数料と受取時課税まで比べたか

iDeCoは制度手数料があり、受取額が無条件で全額非課税になるわけではありません。会社退職金や他の年金も含めます。

条件別:新NISA先・iDeCo先・併用・まず現金

新NISAを先に検討しやすい

  • 60歳前の住宅・教育・開業等に使う可能性がある
  • 本人の課税所得がなく、iDeCoの掛金控除が働かない
  • 勤務先制度によりiDeCoの拠出可能額が小さい、または拠出できない
  • 老後専用として固定できる金額がまだ小さい

iDeCoを先に検討しやすい

  • 受給年齢まで使わない老後専用資金を分けられる
  • 本人の課税所得があり掛金控除の効果を見込める
  • 勤務先制度を反映した拠出可能額を確認済み
  • 制度手数料と受取時課税も含めて納得できる

併用を検討しやすい

  • 60歳前にも使える長期資金と老後専用資金を分けられる
  • iDeCoの所得控除と新NISAの柔軟性を別の役割で使いたい
  • 片方を満額にするより、両方を無理なく続けたい

どちらより先に現金を確保

  • 当面の生活費や近い支出を投資資金と分けていない
  • 借入返済や家計赤字を優先する必要がある
  • 収入変動が大きく、まず現金余力を厚くしたい
  • 価格下落時にも売らずにいられる金額が分からない

これらは制度を比較するための条件整理であり、特定の商品・配分を推奨するものではありません。

併用時の配分:固定比率ではなく家計から逆算する

「新NISA70%、iDeCo30%」のような比率には全員共通の根拠がありません。iDeCoへ回せる金額の上限候補を先に絞り、残りの長期資金を新NISA候補として考えます。

併用額を決める4ステップ

  1. A:毎月の長期投資予算を、生活防衛資金・近い支出を除いて決める。
  2. B:受給年齢まで使わなくてよい金額を決める。
  3. C:勤務先制度を反映したiDeCoの実際の上限を確認する。
  4. A・B・Cの最小額をiDeCoの「検討上限」とし、所得控除・手数料・受取時課税を見て実額を決める。
iDeCoの検討上限 = A・B・Cのうち最も小さい金額

算出額が月5,000円未満ならiDeCoの最低掛金を満たせないため、その時点ではiDeCoを0円として、新NISA候補または預貯金等に回す金額を検討します。実際にiDeCoへ回すと決めた額をAから引いた残りが、新NISAへ回せる候補額です。新NISAも値下がりするため、A自体を無理のない範囲にします。

考え方の例:Aが月5万円、Bが月1.5万円、Cが月2万円なら、iDeCoの検討上限は月1.5万円です。iDeCoを月1.5万円と決めた場合、新NISA候補は月3.5万円です。これは理想配分ではなく、税効果・費用・商品リスクを入れる前の上限整理です。

掛金による税負担軽減を個別に確かめる場合は、前提を入力できるiDeCo節税シミュレーターを使います。運用結果を比べる場合は、利回りが保証されないことを理解した上でNISA積立シミュレーターを利用してください。

職業・企業年金・課税所得で変わる確認点

以下はページ上部の最終更新日時点です。詳しい加入資格、最低掛金、受給開始年齢、手続きはiDeCoの仕組みと始め方で確認できます。

主な区分現行の月額上限優先順位を決める確認点
自営業・フリーランス等6.8万円。国民年金基金掛金または付加保険料との共通枠上限の大きさだけで決めず、収入変動、近い事業資金、本人の課税所得を確認
企業年金なしの会社員2.3万円老後まで固定できる額と、本人の所得控除の効果を確認
企業年金ありの会社員・公務員最大2万円。5.5万円-企業型DC事業主掛金-DB等掛金相当額で減る場合あり各月拠出、マッチング拠出の有無、実際の拠出可能額、退職給付を確認
第3号被保険者2.3万円本人に課税所得がなければ掛金控除はなく、配偶者の所得からも控除不可
退職が近い人加入区分による通算加入者等期間による受給開始年齢、会社退職金、受取順・時期を確認

古い情報に注意:公務員やDB等加入者の上限を月1.2万円とする情報は、2024年12月改正前のものです。また、企業型DC加入者のiDeCo併用要件が原則緩和されたのは2022年10月で、2024年12月ではありません。

積立を止める・資金を使うときの違い

新NISA:買付停止と売却ができる

積立設定を止めても、保有商品を売る必要はありません。必要額だけ部分売却もできます。ただし、売却価格は変動し、取得価額分の総枠を再利用できるのは翌年以降です。

iDeCo:掛金停止はできても引出しは別

掛金を止めて運用指図者になることはできますが、原則として受給年齢までは現金化できません。資産運用と所定の管理手数料は続きます。

2026年12月1日のiDeCo改正予定は現行と分けて見る

施行予定の主な上限変更

  • 第1号・第4号(自営業者等・国民年金任意加入者):国民年金基金等との共通枠が月6.8万円から月7.5万円へ。
  • 第2号:企業年金との共通枠が月6.2万円へ。企業年金ありの人は、6.2万円から企業型DC事業主掛金・DB等掛金相当額を引くため、iDeCoへ一律6.2万円拠出できるわけではありません。
  • 第3号:月2.3万円で据え置き。
  • 新たな第5号:国民年金被保険者ではない60歳以上70歳未満のうち、iDeCo加入者・運用指図者・企業年金からの移換者のいずれかで、老齢基礎年金とiDeCo老齢給付金を受給しておらず、マッチング拠出をしていない人が対象。原則の上限は月6.2万円です。

ページ上部の最終更新日時点では施行前です。施行後3年間は第5号の対象歴に関する経過措置がありますが、受給状況等の除外条件は残ります。申込時には厚生労働省、iDeCo公式、勤務先、運営管理機関の最新案内を再確認してください。

手数料も変更予定です。国民年金基金連合会の加入中手数料は現在105円/掛金納付ですが、2027年1月26日引落分から120円/月へ変更予定です。加入・移換時2,829円、運営管理機関・信託銀行・商品の費用は別に確認します。

優先順位で避けたい5つの誤解

「生活防衛資金を新NISAへ」

新NISAは預貯金ではありません。必要時に価格が下がっている可能性があるため、当面使う現金と分けます。

「節税になるから全員iDeCo先」

課税所得がなければ掛金控除は働きません。資金拘束、制度手数料、受取時課税もあります。

「新NISAを満額にしてからiDeCo」

満額にする義務はありません。資金の役割が分かれていれば、少額で併用する選択肢もあります。

「iDeCoは受取時も全額非課税」

控除の対象ですが、会社退職金や他の年金、受取順・時期で課税結果が変わります。

「同じ投信を両口座で持てば分散」

口座が2つでも投資先が同じなら、資産そのものの分散が増えるわけではありません。

優先順位を決めた後の確認先

制度を詳しく確認:iDeCoの加入資格・掛金・受取新NISAの仕組み・枠・始め方

金額を試算:iDeCo節税シミュレーターNISA積立シミュレーター

口座の候補を比較:新NISAを使う証券会社の比較。iDeCoの運営管理機関選びはiDeCo専門ページで扱います。

受取時の税:会社退職金や他制度を含むため、iDeCoの受取・税制の解説と国税庁情報を確認し、必要に応じて税務署・税理士へ相談します。

iDeCoと新NISAのよくある質問

iDeCoと新NISAは結局どっちを先に始めればよいですか?

全員に共通する順番はありません。60歳前に使う可能性がある長期投資資金は新NISA、受給年齢まで使わない老後資金で本人の所得控除が働くならiDeCoが候補です。生活防衛資金や近い支出は、どちらへも入れず預貯金等で分けておきます。

iDeCoと新NISAは両方同時に利用できますか?

併用できます。新NISAは60歳前にも使う可能性がある長期資金、iDeCoは受給年齢まで動かさない老後専用資金というように役割を分けます。両方を満額にすることや、一定比率で分けることが正解とは限りません。

新NISAを満額にしてからiDeCoを始めるべきですか?

満額を先に埋める必要はありません。本人の所得控除の効果があり、受給年齢まで使わない金額を確保できるなら、新NISAとiDeCoを同時に少額から使う考え方もあります。資金を使う時期と実際のiDeCo上限から判断します。

企業型DCに加入していてもiDeCoを利用できますか?

企業型DCの事業主掛金とiDeCoが各月拠出で、本人がマッチング拠出を利用していない等の条件を満たせば利用できます。ページ上部の最終更新日時点では、企業年金がある人のiDeCoは月2万円が上限で、企業型DCの事業主掛金やDB等の掛金相当額によって2万円未満または拠出できない場合があります。

所得税や住民税を払っていない人でもiDeCoに入る意味はありますか?

加入条件を満たせば利用できる場合はありますが、本人に課税所得がなければ掛金の所得控除は受けられません。配偶者の所得から控除することもできません。資金拘束、手数料、運用商品、受取時課税まで含めて新NISAと比較します。

積立を続けられなくなったらどうなりますか?

新NISAは買付を止め、必要に応じて保有商品を売却できます。iDeCoは掛金拠出を止めて運用指図者になることはできますが、原則として受給年齢まで資産を引き出せず、運用と所定の手数料は続きます。

iDeCoは受取時も非課税ですか?

受取額が無条件で全額非課税になるわけではありません。年金受取は公的年金等控除、一時金受取は退職所得控除の対象ですが、会社の退職金や他の年金、受取順・時期によって課税結果が変わります。受取前に個別確認が必要です。

まとめ:使う時期で分け、所得控除と実際の上限で調整する

生活防衛資金と近い支出は預貯金等で確保し、60歳前にも使う可能性がある長期資金は新NISA候補、受給年齢まで使わない老後資金で本人の所得控除が働くならiDeCo候補です。どちらかを全員一律に先にするのではなく、資金の役割で併用できます。

併用額は、長期投資予算、受給年齢まで固定できる額、勤務先制度を反映したiDeCo上限のうち最も小さい額から検討します。そのうえで手数料、商品リスク、iDeCo受取時課税を確認してください。

公式一次情報

制度・税制はページ上部の最終更新日時点で以下の公式情報を照合しています。将来の施行予定は現行制度と分けて記載しています。

あわせて読みたい