移動平均線の使い方と期間設定・売買手法を図解で解説
移動平均線は、トレンドの向き・支持抵抗・売買サインを1本で読む指標です。使い方は相場環境で変えるのが基本。図解で順に解説します。
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まず結論:移動平均線は「相場環境」で使い方を変える指標です。 移動平均線は、1本の線でトレンドの向き・支持や抵抗・売買サインの3つを読み取れる、テクニカル分析の土台となる指標です。使いこなすコツは、線の本数や設定をむやみに増やすことではなく、相場環境に合わせて読み方を切り替えることにあります。方向がはっきり出たトレンド相場では、押し目買いやパーフェクトオーダーを使った「順張り」が向きます。反対に、値動きが一定の幅を行き来するレンジ相場では、ゴールデンクロスなどのサインがダマシになりやすいため深追いせず、乖離率で行きすぎ(過熱)を測るほうが無難です。この2つの使い分けを押さえるだけで、移動平均線を読む軸が定まります。
線の傾きで上昇・下降・横ばいを判断。
上向き=買い優勢、下向き=売り優勢(横ばいは方向感が薄い)。
上昇局面は下値の支え、下降局面は上値の抑えに。
押し目・戻りの目安として意識されやすい。
価格と線、線と線のクロス(GC/DC)で転換・継続を示唆。
レンジ相場では機能しにくい。
目次
ヒナコ
移動平均線って、チャートでよく見る波打った線ですよね。でも5日とか75日とか何本もあって、どれをどう使えばいいのか、正直こんがらがっちゃって……。
トシ
結論から言うと、線の本数や種類を増やすより、「相場環境で使い方を変える」ことが軸だ。トレンドが出ている相場なら押し目を狙う順張り、方向感のないレンジならクロスを鵜呑みにせず過熱だけを測る。まず「今がトレンドかレンジか」を見てから、線の読み方を決める。私はいつもそこから入っている。
ヒナコ
なるほど……。じゃあ、期間は何を選べばいいんですか?5日とか25日とか、数字がいっぱいで迷っちゃって。
トシ
定番はある。日足なら短期に5日か20〜25日、中期に75日、長期に200日あたりだ。ただ、数字を丸暗記する必要はない。5日は約1週間、25日は約1か月、75日は四半期、200日は約1年。区切りに意味があると分かれば、選びやすくなる。あとは自分の時間軸に合わせて、短期・中期・長期を1本ずつ置くことだ。
※FX取引はレバレッジを利用するため、投資元本を超える損失が発生する可能性があります。取引は余裕資金で行い、リスクを十分に理解したうえでご利用ください。レバレッジの仕組みはレバレッジでご確認いただけます。
1. 移動平均線とは(終値の平均を線で結んだトレンド系指標)
移動平均線(Moving Average)は、一定期間の終値の平均を計算し、その値を線で結んだテクニカル指標です。たとえば5日移動平均線なら、直近5日間の終値を平均した値を毎日つないでいきます。日々こまかく上下する価格をならして(平滑化して)、相場の大きな流れを一目で見えるようにするのが役割です。トレンド(方向性)をつかむのが得意な「トレンド系指標」の代表格として知られています。
移動平均線を1本引くだけで、読み取れることは大きく3つあります。①線の傾きで見るトレンドの向き、②線が支えや抑えになる支持・抵抗、そして③価格や線どうしのクロスが示す売買サインです。この3点が、これから解説する使い方すべての土台になります。冒頭の早見表で全体像を確認してから、順に見ていきましょう。
移動平均線はあくまで「過去の平均」をもとにした指標なので、値動きに対してどうしても少し遅れて動きます。この性質(遅行性)は弱点にもなりますが、だからこそダマシの少ない大きな流れを映してくれる、という表裏の関係にあります。テクニカル指標全体の中での位置づけや種類をおさらいしたい方は、テクニカル分析とはもあわせてご覧ください。
2. SMA・EMA・WMAの違いと計算式(なぜEMAは速く反応するのか)
移動平均線には、平均の取り方によっていくつかの種類があります。まず押さえたいのがSMA(単純移動平均線)とEMA(指数移動平均線)の2つ、そして補助的にWMA(加重移動平均線)です。
SMA(単純移動平均)は、期間内の終値をすべて均等に平均する、いちばん基本的なタイプです。計算はシンプルで、たとえば5日SMAなら「直近5日間の終値の合計 ÷ 5」で求めます。均等にならすため線がなめらかで安定する一方、直近の急な動きも過去と同じ重みで扱うので、反応はややゆっくりになります。
EMA(指数移動平均)は、直近の終値ほど重みを大きくして平均します。計算の骨子は「EMA(本日)= α ×(本日の終値)+(1 − α)×(前日のEMA)」で、重みを決める平滑化係数 α = 2 ÷(期間 + 1)です。最新の価格を強く反映するため、トレンドの転換にSMAより速く反応するのがEMAの特徴です。ただし反応が速いぶん、こまかな値動き(ノイズ)も拾いやすく、ダマシが増えやすいという裏返しもあります。
計算の骨子:SMA=期間内の終値を均等平均/EMA=直近を重視(平滑化係数 α=2÷(期間+1))。
SMA(単純移動平均線):終値を均等にならすため線がなめらかで安定しますが、トレンド転換への反応はやや遅れます。
EMA(指数移動平均線):直近の価格を強く反映するため転換への反応が速い一方、こまかな値動きも拾いやすく、ダマシが増えやすい面もあります。
上図の転換点付近では、EMAがSMAより先に方向を変えています。反応の速さを重視する短期売買ではEMA、なめらかさを重視する中長期のトレンドフォローではSMAを選ぶ人が多いとされます。
WMA(加重移動平均)は、直近ほど大きい重みを順番に配分する(線形に加重する)タイプで、性質としてはSMAとEMAの中間にあたります。まずはSMAとEMAの2つを押さえておけば十分です。
どちらが優れているという話ではなく、「安定して滑らかなSMA」対「速く反応するEMA」というトレードオフとして理解するのがポイントです。仕組みがわかりやすいSMAから慣れ、反応の速さを重視する短期売買ではEMAを選ぶトレーダーもいます。なお、この移動平均線の考え方を発展させたのがMACDで、中心線に移動平均を使うのがボリンジャーバンドです。移動平均線は、多くのテクニカル指標の土台にもなっています。
3. 期間設定の選び方(定番の数字・その由来・スタイル別の目安)
移動平均線を引くとき、多くの人が最初に迷うのが「期間を何日にするか」です。結論から言えば、まずは定番の数字から始めるのが無難です。日足では、短期に5日・20日または25日、中期に75日、長期に200日がよく使われます。より長い視点で見るときは週足の13週・26週・52週が定番です。
これらの数字には、営業日のサイクルに対応しているという由来があるとされます。5日は約1週間、20〜25日は約1か月、75日は約3か月(四半期)、200日は約1年ぶんの営業日にあたる、という見方です。数字を丸暗記するより、この「区切りの意味」を知っておくほうが、時間足を変えても比率を揃えて応用しやすくなります。
短期線については、FXでは20日や21日、日本株では25日が伝統的な目安とされ、市場によって使われる数字が少し異なります。どちらが正しいというものではないので、自分が主に見る市場の慣行に合わせれば十分です。中期の75日は四半期の流れを、200日は長期トレンドの方向性を示す線として世界中のトレーダーに意識されます(俗に「生命線」と呼ばれることもあります)。
期間選びには、もう一つ知っておくと役立つ考え方があります。多くのトレーダーが見ている期間ほど、その線が意識されて機能しやすくなる、という側面です。25日線や200日線が節目として効きやすいのは、それだけ多くの市場参加者が同じ線を見て売買の判断材料にしているから、と一般に説明されます。奇をてらった設定より、まずは広く使われる定番を選ぶほうが理にかなっています。
なお、期間を短くするほど値動きに敏感になってサインは増えますが、ダマシも増えます。長くするほどなめらかで大きな流れを映しますが、シグナルは遅れがちになります。この方向性を踏まえ、スキャルピングやデイトレードなど、自分の取引スタイルに合わせて選びましょう。スタイル別の目安は、下の早見表にまとめます。
時間足・スタイル別の期間の目安
| トレードスタイル | 主な時間足の目安 | 期間の目安(短期/中期/長期) |
|---|---|---|
| スキャルピング | 1分〜5分足 | 5/20/75 |
| デイトレード | 15分〜1時間足 | 5〜20/75/200 |
| スイングトレード | 4時間〜日足 | 20〜25/75/200 |
| 長期・ポジション | 日足〜週足 | 25/75/200(週足は13/26/52週) |
※上記はあくまで一般的な目安です。市場(FXは20日・21日、日本株は25日が伝統)や通貨ペアの値動きによって調整するもので、決まった正解はありません。まずは短期・中期・長期を1本ずつ表示し、慣れてから微調整するとよいでしょう。
4. 傾きと位置・ゴールデンクロスとデッドクロス(信頼度の見極め)
移動平均線でトレンドを読む基本は、線の「傾き」と、価格の「位置」の2つを合わせて見ることです。線が上を向いていて価格がその上にあれば上昇、線が下を向いていて価格がその下にあれば下降。線が横ばいのときは方向感が乏しく、無理に方向を決めつけないのが安全です。相場の方向をより厳密に定義したい方は、ダウ理論もあわせて確認するとよいでしょう。
売買サインとして有名なのが、ゴールデンクロス(GC)とデッドクロス(DC)です。短期線が長期線を下から上に抜けるのがゴールデンクロスで、上昇への転換を示す買いの目安。反対に、短期線が長期線を上から下に抜けるのがデッドクロスで、下降への転換を示す売りの目安とされます。定番の組み合わせは、日足なら25日線と75日線、週足なら13週線と26週線。世界的に広く引用されるのは50日線と200日線のクロスです。
ここで大切なのが、クロスなら何でも信頼できるわけではないという点です。効きやすいクロスかどうかは、次の4点でチェックします。①クロスの角度がはっきりしているか(浅く絡むだけのクロスは弱い)、②長期線が横ばいでなく、抜ける方向へ傾いているか、③上位の時間足も同じ方向を向いているか、④クロスしたあと、価格がその水準に定着したか。この4つがそろうほど、信頼できるクロスに近づきます。
ゴールデンクロス(GC):短期線(25日)が中期線(75日)を下から上に抜ける動き。上昇への転換を示す買いの目安です。
デッドクロス(DC):短期線(25日)が中期線(75日)を上から下に抜ける動き。下降への転換を示す売りの目安です。
長期の線どうしのクロスほどダマシが少ない傾向がある一方、シグナルの発生は遅れます(遅行)。特定のペアが常に信頼できると決まっているわけではありません。
信頼度チェックの4点:①クロスの角度がはっきりしているか/②長期線が横ばいでなく抜ける方向へ傾いているか/③上位の時間足も同じ方向か/④クロス後に価格がその水準へ定着したか。
なお、レンジ相場ではGC・DCが頻発し、ダマシになりやすい点に注意します。
この見極め方を、次の§5で1枚のフローにまとめます。まずは「今がトレンドか、レンジか」を確認する習慣が、ダマシを避ける土台になります。
5. 相場環境の判別と使い分けフロー(トレンドか、レンジか)
移動平均線でいちばん大切なのは、サインを読む前に「今はトレンドか、レンジか」を見極めることです。ここを飛ばしてゴールデンクロスや押し目だけで売買すると、方向感のない相場でダマシを重ねやすくなります。まず相場環境を仕分け、それに応じて使い方を切り替えましょう。
相場環境は、移動平均線そのものからある程度読み取れます。判断の手がかりは主に2つ。①中長期線の傾き——はっきり上や下を向いていればトレンド、水平に近ければレンジの目安です。そして②短期・中期・長期の線の「帯(間隔)」の広がり——複数の線が同じ方向へ間隔を保って並んでいればトレンド、線どうしが絡み合って何度も交差していればレンジの目安になります。
見極めがついたら、使い方は次のように分かれます。
- トレンドと判断したとき → 順張りが基本。上昇なら押し目買い、下降なら戻り売り。線がきれいに整列したパーフェクトオーダー(§7)は、その順張りを後押しする形です。
- レンジと判断したとき → ゴールデンクロス・デッドクロスは深追いしない。代わりに、価格が移動平均線からどれだけ離れたかを測る乖離率(§10)で、行きすぎ(過熱)の反転を狙います。
「移動平均線をどう使うか」ではなく、「今の相場で移動平均線をどう読むか」。この順番を守ることが、ダマシを避ける最初の一歩です。
6. グランビルの法則(8つの売買パターンと実践的な2つ)
移動平均線と価格の位置関係から売買ポイントを体系化したのが、グランビルの法則です。これは、米国のチャート分析家ジョゼフ・E・グランビル(Joseph E. Granville)が1960年に著書『グランビルの投資法則』で示したもので、200日移動平均線と日足を基準に、買い4パターンと売り4パターンの計8つの売買ポイントを定義しています。根っこにある考え方は「移動平均線から大きく離れた価格は、やがて平均へ戻ろうとする」というものです。
米国のジョゼフ・E・グランビルが1960年に提唱した法則で、200日移動平均線と日足を基準にしています。
買い①(新規買い):下向きだった移動平均線が横ばい〜上向きに転じ、価格が線を下から上へ抜けた場面。
買い②(押し目買い):上向きの線を価格が一度下抜けしたあと、再び上抜けして戻った場面。実践でよりどころにされやすいパターンです。
買い③(買い増し):上向きの線の手前まで下げるが、下抜けせずに反発した場面。
買い④(乖離買い):下降中の線から価格が大きく下に離れ、平均への戻りを狙う逆張り。
買い②と買い③は「線を下抜けしたかどうか」で区別します(②=一度下抜け→再上抜け/③=下抜けせず手前で反発)。売り⑤〜⑧は買い①〜④を上下反転させた対称パターンです。
8つのパターンは、いつも番号順に現れるとは限りません。
買いの4パターンは次のとおりです。
- 買い①(新規買い):下向きだった移動平均線が横ばい〜上向きに転じ、価格がその線を下から上へ抜けた場面。
- 買い②(押し目買い):上向きの移動平均線を、価格が一度下抜けしたあと、再び上抜けして戻った場面。
- 買い③(買い増し):上向きの移動平均線の手前まで価格が下げるが、下抜けはせずに反発した場面。
- 買い④(乖離買い):下降中の移動平均線から価格が大きく下に離れ、平均への戻りを狙う逆張り。
買い②と買い③は混同されやすいので、「線を下抜けしたかどうか」で区別すると分かりやすくなります。②は一度下抜けしてから戻るタイプ、③は下抜けせず手前で反発するタイプです。売り⑤〜⑧は、買い①〜④をそのまま上下反転させた対称パターンで、⑤新規売り・⑥戻り売り・⑦追加売り・⑧乖離売りとなります。
8つのうち、実践でよりどころにされやすいのが押し目買いの買い②と、戻り売りの売り⑥です。どちらも移動平均線の向き(トレンド)に順行する場面で、§5でいうトレンド相場の順張りにあたります。ただし、8つのパターンはいつも①→②→③…と番号順に現れるわけではありません。相場はいつも教科書どおりに進むわけではないので、「今どのパターンに近いか」を落ち着いて見分けることが大切です。
7. パーフェクトオーダーと「崩れ」(強いトレンドと転換の予兆)
パーフェクトオーダーとは、短期・中期・長期の移動平均線が期間の順にきれいに並び、すべてが同じ方向を向いている状態を指します。上昇なら「価格>短期線>中期線>長期線」がすべて上向き、下降ならその逆順です。3本の線が乱れなく整列しているため、トレンドが強く出ている局面の目印になり、§5でいう順張り(押し目買い・戻り売り)を後押しします。
この呼び名は日本の個人投資家の間で広く使われていますが、英語圏でも「Perfect Order」というトレード戦略として知られており、日本だけの造語というわけではありません。呼び方より、「線が順番に整列=トレンドが強い」という中身を押さえておけば十分です。
実務で本当に役立つのは、むしろパーフェクトオーダーが「崩れる」瞬間です。整列していた線の順番が乱れ始めたら、それはトレンドの終盤や転換の予兆であることが少なくありません。順張りで乗っている場合は、崩れが見えたところが利益確定や警戒を強めるタイミングになります。
整列の初期〜中盤で順張りし、崩れの兆しが出たら引く——この出入りの意識が、パーフェクトオーダーを味方につけるコツです。なお、崩れは転換の「予兆の一つ」であって、そのまま反転すると決まっているわけではない点も、あわせて覚えておきましょう。
8. 支持・抵抗と押し目買いの実務(なぜ線が節目になるのか)
移動平均線が支えや抑えとして働くのには、理由があります。移動平均線は、その期間に売買した多くの参加者の平均コストをおおまかに表しています。上昇トレンド中に価格が線まで下がってくると、「この水準は多くの買い手の平均値だから」と買いが入りやすく、結果として線が下値の支え(サポート)になります。下降トレンドでは逆に、線が上値の抑え(レジスタンス)として意識されます。多くの人が同じ線を見ているほど、この効果は働きやすくなります。サポートやレジスタンスの基礎は、チャートの見方でも確認できます。
これを使ったのが、順張りの王道である押し目買い・戻り売りです。上昇トレンドで価格が中期線(たとえば25日線)まで押してきて、そこで反発の兆し(下ヒゲやコマ足など)が出たところが、買いを検討する場面です。線に触れた瞬間に飛びつくのではなく、「触れて、反発を確認してから」入るほうが、ダマシを減らしやすくなります。押し目や戻りの目標値をより細かく測りたい場合は、フィボナッチも参考になります。
入るときは、同時に撤退ラインも決めておくことが欠かせません。押し目買いなら、支えになるはずの線を価格が明確に下抜けて定着したら、想定が崩れたサインです。そこを損切りの目安にしておくと、支えが破られたときの損失を小さく抑えられます。「入る理由」と「撤退する理由」をセットで持つのが、実務のコツです。
9. よくある失敗と回避策(負けパターンを先に知る)
移動平均線でつまずく負けパターンは、大きく3つに整理できます。原因と回避策をセットで、先に知っておきましょう。
失敗1:レンジ相場でのクロス往復ダマシ
方向感のないレンジで、ゴールデンクロスを見て買い、すぐデッドクロスが出て売り……とサインに振り回され、往復で損を重ねる負け方です。原因は、レンジなのにクロスを信じたこと。回避策は、§5の判別で「レンジならクロスは深追いしない」を徹底し、中長期線が横ばいのあいだは手を出さないことです。
失敗2:横ばいの長期線でのゴールデンクロスに踏まれる
長期線が横ばいのまま短期線がゴールデンクロスしたのを見て買い、上がらずに反落して損切り、という流れです。原因は、クロスの「形」だけを見て信頼度チェック(§4)を省いたこと。回避策は、長期線がしっかり上を向いているか、上位の時間足も同じ方向か、を確認してからにすることです。
失敗3:パーフェクトオーダー末期の飛び乗り→逆行
きれいに整列した強いトレンドを見て、遅れて飛び乗ったとたんに崩れて逆行する負け方です。原因は、トレンドがどこまで進んでいるかを見ずに乗ったこと。回避策は、整列の初期〜中盤で入る意識を持ち、崩れの兆しが出たら引くことです。
3つに共通するのは、移動平均線のサインを「エントリーの合図」ではなく「注目すべき場面の目印」として扱うことです。環境を認識し(§5)、RSIや一目均衡表のような別系統の指標で方向を裏づけ、読みが外れたら損切りで早めに撤退する。この3点をセットにするだけで、負けパターンにはまる回数はぐっと減らしやすくなります。
10. 移動平均線だけの限界と乖離率・組み合わせ
ここまで見てきたとおり、移動平均線はトレンドの向きや支持・抵抗をつかむのが得意な一方、単体では万能ではありません。過去の平均をもとにするため反応が遅れがちで(遅行性)、レンジや横ばいの局面ではダマシが増え、選ぶ期間しだいで見え方が変わる、という弱点があります。実戦では、複数の根拠を重ねて判断するのが定石です。
この弱点を補う手軽な道具として、移動平均乖離率を覚えておくと便利です。これは、価格が移動平均線からどれだけ離れているかをパーセントで表したもので、レンジ相場での行きすぎ(過熱)を測るのに向きます。一般に、乖離が±3%程度まで開くと反転しやすいと言われますが、適正な幅は通貨ペアや時間足によって変わるため、あくまで目安です。レンジでは「乖離が開いたら平均への戻りを狙う」「順張りの利益確定の目安にする」といった使い方ができます。
そして、より確度を高めたいなら、別系統の指標との組み合わせが近道です。移動平均線を発展させたMACDや、中心線に移動平均を使うボリンジャーバンド、勢いを測るオシレーターなどと重ねると、ダマシをふるいにかけやすくなります。具体的な組み合わせのロジック(移動平均線×人気指標の併用手順)は、人気指標の組み合わせ方でくわしく解説しています。まずは移動平均線単体を使いこなし、次のステップとして組み合わせに進むのがおすすめです。
移動平均線に関するよくある質問(FAQ)
Q. 移動平均線の期間は何を選べばいいですか?
まずは定番から始めるのが無難です。日足では、短期に5日や20〜25日、中期に75日、長期に200日がよく使われます。短期線はFXでは20日や21日、日本株では25日が伝統的な目安とされ、市場によって少し異なります。週足なら13週・26週・52週が定番です。期間を短くするほど値動きに敏感でダマシが増えやすく、長くするほどなめらかですがシグナルは遅れがちになります。取引スタイルと時間軸に合わせて、まずは短期・中期・長期を1本ずつ表示するとよいでしょう。
Q. SMAとEMAはどちらを使えばいいですか?
どちらが優れているというより、性質の違いで選びます。SMA(単純移動平均)は期間内の終値を均等に平均するため動きがなめらかで安定しますが、反応はやや遅れます。EMA(指数移動平均)は直近の価格に大きな重みを置くため、トレンド転換への反応が速い一方、ダマシも拾いやすくなります。まずは仕組みがわかりやすいSMAから慣れ、反応の速さを重視する短期売買ではEMAを好むトレーダーもいます。
Q. 移動平均線は何本表示するのがよいですか?
短期・中期・長期の2〜3本が扱いやすいとされます。たとえば日足なら5日・25日・75日、あるいは25日・75日・200日といった組み合わせです。線が多すぎるとチャートが見づらく、判断も迷いやすくなります。まずは2本から始め、慣れてきたら中期線を1本加える、という進め方が無難です。
Q. ゴールデンクロスは本当に買いサインですか? だましはどう見抜きますか?
ゴールデンクロス(短期線が長期線を下から上抜ける)は買いの目安とされますが、どんな場面でも機能するわけではありません。とくにレンジ相場ではクロスが頻発し、すぐ反転してダマシになりやすいのが弱点です。信頼度を測る目安として、長期線が横ばいでなく抜ける方向へ傾いているか、クロスの角度がはっきりしているか、上位の時間足も同じ方向か、クロス後に価格がその水準へ定着したか、を確認します。一般に、長期の線どうしのクロスほどダマシは減る傾向がありますが、その分シグナルは遅れて出ます。
Q. 移動平均線だけで勝てますか?
一つの指標だけで勝ち続けられる手法はありません。移動平均線はトレンドの向きや支持・抵抗をつかむのが得意ですが、レンジや横ばいの局面ではダマシが増え、過去の平均ゆえにシグナルが遅れるという弱点もあります。相場環境を見極めたうえで、ローソク足の形やオシレーター系の指標などと組み合わせ、読みが外れたら損切りで守ることが前提です。移動平均線は万能の道具ではなく、判断材料の一つとして使うのが安全です。
まとめ
移動平均線は「ゴールデンクロスで買い」といったサインで語られがちですが、本当の使いどころは相場環境の見極めにあります。方向がはっきり出たトレンドでは、押し目買いやパーフェクトオーダーを使った順張りが向き、値動きが行き来するレンジでは、クロスを深追いせず乖離率で過熱を測る——この使い分けが、すべての出発点です。
そのうえで、期間の意味を知って定番から選ぶこと、ゴールデンクロスは信頼度チェックで見極めること、レンジ往復や横ばい長期線での踏み上げといった負けパターンを避けること。そして、移動平均線は単体で万能ではないと心得て、他の指標で裏づけ、読みが外れたら損切りで守ること。この積み重ねが、ダマシに振り回されないための地力になります。
まずは目の前のチャートで「今はトレンドか、レンジか」を見分けるところから始めてみてはいかがでしょうか。相場に合わせて移動平均線の読み方を切り替える——その一歩が、1本の線を頼れる味方に変えていきます。
参考・出典/監修
- Joseph E. Granville『グランビルの投資法則』(A Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit, Prentice-Hall, 1960)(グランビルの法則の原典)
- Kathy Lien『Day Trading and Swing Trading the Currency Market』Wiley(パーフェクトオーダーの記載)
- 金融先物取引業協会(FFAJ)
- 金融庁
- 各証券会社・取引所の公開解説(移動平均線・SMA/EMA・期間設定・ゴールデンクロス等)
監修:元・金融コンサルタント トシ。本記事は原典および各証券会社の公開情報、一般的な事実に基づいて整理しています。相場の先行きや投資成果を保証するものではありません。

