仮想通貨のフィボナッチ・リトレースメント|BTCチャートの引き方と使い方
いちばん迷いやすいのは、どこからどちらへ引くかです。上昇波なら安値から高値、下降波なら高値から安値へ。このページでは、その向きだけでなく、BTCなど暗号資産で結果を左右する取引所・通貨建て・ヒゲ・時間足・対数目盛まで、同じ条件でやり直せる形に整理します。
先に結論:上昇は安値→高値、下降は高値→安値
フィボナッチ・リトレースメントは、二つの高安で決まる値幅を一定比率で区切り、押し目や戻り目の候補価格を測る補助ツールです。未来価格を当てる線でも、線に触れたら売買するシグナルでもありません。
たとえば600万円から1,000万円まで上昇した波の61.8%下押しは752万8,000円です。これは「752万8,000円で反発する」という予言ではなく、その付近で値動きを観察するための共通の物差しです。
- 元の値幅に対する戻しの深さ
- 同じ起点・終点で再計算できる候補価格
- 別の支持・抵抗と重なる価格帯
- 実際に反発するか、いつ反発するか
- トレンドが続くか、利益になるか
- 許容損失や注文が約定する価格
このページの担当範囲:暗号資産の「リトレースメント(元の値幅内の押し・戻り)」を扱います。RSIやMACDを含む指標全体は暗号資産チャート分析の中級編、調整後の外側へ水準を投影するエクステンションは暗号資産チャート分析の上級編、FX固有の使い方はFXでのフィボナッチの引き方へ分けています。
フィボナッチ・リトレースメントは何を測る道具か
チャート上の二つの極値を結び、その縦の値幅を比率で分けます。TradingViewの公式説明も、23.6%、38.2%、61.8%、100%などを使って、価格が戻る局面の支持・抵抗になり得る水準を示す道具としています。「なり得る」であって、反発を約束するものではありません。
| 表示 | 位置づけ | 読み方 |
|---|---|---|
| 23.6% | 元の値幅に対する浅い戻し | 候補の一つ。浅いからトレンドが強いとは、この数字だけでは決められない |
| 38.2% | 黄金比の補数に近い比率 | 支持・抵抗の候補。線への接触と反発は別 |
| 50.0% | 値幅の中間点 | 実務で併記されるが、フィボナッチ数列から直接導かれる比率ではない |
| 61.8% | 黄金比の逆数に近い比率 | 広く表示される候補。割れただけでトレンド終了とは判断できない |
| 78.6% | おおむね√0.618 | 深い戻しの候補。76.4%(1−0.236)とは別の水準 |
| 0% / 100% | 選んだ二つの端点 | Reverse設定でラベルの向きが変わるため、比率と表示価格を一緒に確認する |
上昇・下降別の引き方:値動きの始点から終点へ
覚えるのは「調べたい値動きが始まった点から、いったん終わった点へ引く」です。チャートツールの0と100の表示が想像と逆でも、先にドラッグ方向と価格を確かめれば迷いません。
上昇波の押し目を測る
安値から高値へ引き、その後の下押しが元の上昇幅の何%かを見る。
下降波の戻りを測る
高値から安値へ引き、その後の反発が元の下落幅の何%かを見る。
- 何の値動きを測るか、先に一文で書く例:「BTC/JPYの日足で、8月の上昇波に対する下押しを測る」。大きな波と短期の波を途中で混ぜない。
- 波の始点と終点を決める上昇なら上昇が始まった安値と、その後に付けた高値。下降なら下落が始まった高値と、その後の安値を選ぶ。
- 始点から終点へドラッグする上昇は安値→高値、下降は高値→安値。TradingViewでは「ギャン&フィボナッチ」内の描画ツールから選べる。
- 比率ではなく価格も表示するReverseを使うとラベルの上下が変わる。0.618という文字だけを追わず、選んだ高安と各ラインの価格を確認する。
- 起点・終点を記録してから観察する日時、価格、時間足、取引所を残す。反応を見た後で都合のよい高安へ動かすと、検証ではなく後知恵になる。
ローソク足や支持・抵抗の読み方がまだ曖昧なら、先に暗号資産チャートの見方を確認すると、高安を選ぶ理由を言葉にしやすくなります。
フィボナッチ価格の計算式と早見計算機
計算はシンプルです。安値をL、高値をH、戻し比率をrとします。下の式と計算機は線形目盛を前提にしています。
H − r × (H − L)L + r × (H − L)フィボナッチ・リトレースメント早見計算機
安値・高値と測る方向を入れると、5水準の価格を計算します。初期値は600万円〜1,000万円の架空例です。
上昇波:安値6,000,000から高値10,000,000までの下押し候補
| 戻し比率 | 計算価格 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 23.6% | 9,056,000 | 浅い戻し |
| 38.2% | 8,472,000 | 主要表示水準 |
| 50.0% | 8,000,000 | 値幅の中間点 |
| 61.8% | 7,528,000 | 黄金比由来の水準 |
| 78.6% | 6,856,000 | 深い戻し |
暗号資産では、描く前に8項目を固定する
BTCには一つだけの普遍的な価格があるわけではありません。取引所、現物かデリバティブか、JPY・USD・USDTなどの建値が違えば、高値・安値もヒゲも変わります。JVCEAの参考価格は国内の約定価格を所定の時間帯で集計する日次参照値で、任意時刻の単発ヒゲを照合するリアルタイム価格ではありません。TradingViewの暗号資産平均価格も、掲載取引所の現物価格を別の方法で集計したデータです。
1. 取引所/データ提供元
分析に使うチャートと、実際に注文する市場をそろえる。別市場の線をそのまま転用しない。
2. 通貨ペア・建値
BTC/JPY、BTC/USD、BTC/USDTを区別する。為替やステーブルコイン価格の影響も混ざる。
3. 現物かデリバティブか
現物、無期限先物などを記録する。同じ名称でも価格系列は同一とは限らない。
4. 時間足・タイムゾーン
保有・観察したい期間に合わせて一つ選ぶ。途中で別の時間足の高安へ混ぜない。
5. ヒゲか実体・終値か
基本はその時間足の高値・安値であるヒゲを使う。別基準なら明記し、途中で変えない。
6. 線形か対数か
長い期間や大きな価格差を対数表示で見るなら、Fib計算も対数設定へ合わせる。
7. 起点・終点の時刻と価格
「目立つ高安」だけで終わらせず、ローソク足の時刻と価格を残す。
8. 手動かAuto Fibか
Auto FibならDeviationとDepthを保存する。設定と新しい足で基準点が変わり得る。
ヒゲと実体は、どちらが正しい?
手動ツールの公式説明は「二つの極値」を使うため、まずは高値・安値のヒゲを採るとルールが明確です。ただし、流動性の低い一市場だけに長いヒゲが出た疑いがあるなら、無言で実体へ合わせ直すのではなく、同じ時間の出来高と、取得できる同時刻の別会場・集計価格を確認します。JVCEAの日次参考値は、大きな価格差を振り返る補助にはなりますが、同時刻照合の代わりにはなりません。ヒゲ基準と終値基準で水準が大きく変わるなら、その差を候補帯として残す方が正直です。取引所間の価格差と売買価格の違いは暗号資産のスプレッドで整理しています。
何時間足を使えばいい?
全員に共通する時間足はありません。数時間の値動きを見る人と、数か月の波を見る人では測る対象が違います。最初に「どの期間の押し・戻りを調べるか」を決め、その波が見える一つの時間足で起点・終点を記録します。大局と短期の線を両方置くなら、別々の仮説として色や名前を分けます。
対数チャートでは設定をそろえる
大きく価格が変わった長期チャートでは、線形と対数で水準が離れることがあります。TradingViewは暗号資産のような変動の大きい資産について、対数チャートを使う場合に「Fib levels based on log scale」を有効にするよう案内しています。線形で計算した価格を対数チャートへ重ねず、チャートとFibの設定を一組で記録します。
候補帯に来た後は、5つを順番に確認する
フィボナッチの役目は候補を絞るところまでです。61.8%へ触れた瞬間を売買判断にせず、次の順番で「その見立てを続けてよいか」を確認します。
- 候補は一本線ではなく価格帯として見る:ヒゲ/終値、取引所、線形/対数で差が出るなら、ぴったり一致を求めない。
- 価格そのものの反応を見る:過去の支持・抵抗、安値・高値の切り上げ/切り下げ、ローソク足の終値など、別の観察結果を確認する。
- 同じ市場の出来高と流動性を見る:薄い板や単発の約定で付いた価格なら、線への接触だけを重く見ない。
- 無効化条件を先に言葉にする:「61.8%割れ」だけではなく、どの高安・価格構造が崩れたら見立てを捨てるか決める。
- 損失と注文を別計算する:許容損失、数量、注文方式、スリッページを別に確認する。ラインは約定価格を保証しない。
bitbankの公式説明でも、トリガー価格への到達は注文を発注する条件であり、ストップリミット注文の約定を意味しません。チャート上の水準、注文条件、実際の約定は三つの別の状態です。
引き直す場面と、フィボナッチを使わない場面
新しい極値による更新と、後知恵の引き直しを分ける
調整を評価する前に新高値・新安値が出て元の波が伸びたなら、終点を更新する理由があります。一方、価格が反発した後で、その反発点に合うよう起点を動かすのは別です。評価を始めた時点の線を保存し、別の起点を試すなら「別案」として並べます。
- 明確なひと続きの波がない:細かい上下が続くレンジで、選ぶ高安によって答えがいくつも作れてしまう。
- 一市場だけに異常なヒゲがある:別会場や参考価格で確認できず、起点自体の代表性が分からない。
- 急変時に注文条件を確認できない:価格が飛び、板が薄く、候補水準と実際の約定が大きく離れ得る。
- 反発してほしい価格から逆算している:先に結論があり、それに合う起点を探しているなら測定ルールになっていない。
こうした場面で線を消すか残すかより大事なのは、「この線では判断を更新できない」と止まれることです。フィボナッチは、使う場面を増やすほど強くなる道具ではありません。
リトレースメントとエクステンションは目的が違う
| 項目 | リトレースメント | エクステンション |
|---|---|---|
| 主な目的 | 元の値動きに対する押し・戻りを測る | 調整後、元の値幅の外側へ候補を投影する |
| 基準点 | 始点と終点の2点 | 値動きの始点・終点・調整点の3点 |
| このページ | 定義、引き方、計算、暗号資産固有の条件を詳しく扱う | 違いだけ説明し、詳細は上級編へ委譲する |
127.2%、161.8%などを使った調整後の目標候補は、フィボナッチ・エクステンションと上級分析で扱っています。ここへ混ぜると、二点で測るリトレースメントの手順がかえって分かりにくくなります。
まとめ:線を信じるより、測る条件をそろえる
- 上昇波は安値から高値、下降波は高値から安値へ引く。
- 23.6〜78.6%は反応候補であり、反発やトレンド継続の確定線ではない。
- 取引所、通貨ペア、現物/デリバティブ、時間足、ヒゲ/実体、目盛を固定する。
- 新しい極値での更新と、結果を見て合わせる後知恵の引き直しを分ける。
- 候補帯、値動き、無効化、許容損失、注文・流動性を別々に確認する。
確認した主な一次・公式情報と研究
- TradingView「Fibonacci retracement drawing tool」
- TradingView「Auto Fib Retracement」
- TradingView「Trend-Based Fib Extension」
- TradingView「暗号資産の平均価格」
- TradingView「ローソク足の始値・高値・安値・終値」
- bitbank「フィボナッチ・リトレースメントの設定方法」
- bitbank「トリガー価格と指値注文価格」
- 日本暗号資産等取引業協会「参考価格」
- 日本暗号資産等取引業協会「投資家向け注意喚起」
- 金融庁・消費者庁・警察庁「暗号資産を利用する際の注意点」
- Tsinaslanidis, Guijarro & Voukelatos (2022), Automatic identification and evaluation of Fibonacci retracements
- Batchelor & Ramyar (2006), Magic Numbers in the Dow
- Gurrib, Nourani & Bhaskaran (2022), Energy-related markets and Fibonacci trading
各リンクは2026年9月1日に確認しました。ツール仕様、取引ルール、注意喚起は変わることがあります。利用時点の原文も確認してください。