相続・税金

暗号資産の相続ガイド【2026年】

暗号資産(仮想通貨)は相続財産として相続税の課税対象となる。死亡日の時価による評価方法、取引所口座の相続手続き、秘密鍵を紛失した場合のリスク、そして生前にできるエンディングノートの活用まで、暗号資産の相続に必要な知識を図解で整理した。

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【重要】本記事についてのご注意

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の相続案件については税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。相続税の計算・申告には高度な専門知識が必要であり、誤った申告は加算税や延滞税の対象となる可能性があります。

ヒナコ

ヒナコ

もし家族が暗号資産を持ったまま亡くなったら、その資産はどうなるの?

トシ

トシ

暗号資産も相続財産として相続税の課税対象になる。ただし、秘密鍵やパスワードが分からなければ資産にアクセスできないという、暗号資産特有の深刻な問題がある。

ヒナコ

ヒナコ

秘密鍵が分からないと、永久に取り出せないの?

トシ

トシ

その通りだ。取引所に預けている場合は相続手続きで対応できるが、個人ウォレットの秘密鍵を誰も知らなければ事実上の「永久凍結」になる。だからこそ生前の備えが極めて重要だ。

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※暗号資産は価格変動が非常に大きく、投資元本を失う可能性があります。相続に関する判断は、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談の上で行ってください。

1. 暗号資産の相続税評価方法

暗号資産は相続財産として「その他の財産」に分類され、相続税の課税対象となる。評価額は被相続人の死亡日(相続開始日)の時価に保有数量を掛けて算出する。国税庁の「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」でも、相続財産としての評価方法が明記されている。

取引所に上場している暗号資産は、死亡日の取引所における終値(または当日の平均価格)を基準とする。複数の取引所で取引されている場合は、被相続人が主に利用していた取引所の価格を用いるのが一般的だ。

暗号資産の相続税評価 — 計算式 相続税評価額の計算式 死亡日の時価 × 保有数量 = 評価額 【計算例】 被相続人の保有資産: BTC 2.5枚 + ETH 10枚 死亡日の時価: BTC = 800万円 / ETH = 50万円 BTC: 800万円 × 2.5 = 2,000万円 ETH: 50万円 × 10 = 500万円 合計評価額: 2,500万円
【図解のポイント】
暗号資産の価格は24時間365日変動するため、死亡日の正確な価格データの取得が重要だ。取引所のAPI等で死亡日の終値を記録しておくことを推奨する。DeFiトークンやNFTなど市場価格の算定が困難な資産については、評価方法が複雑になるため、暗号資産に詳しい税理士への相談が不可欠だ。

2. 相続手続きのフロー

暗号資産の相続手続きは、通常の金融資産と同様に遺産調査から始まるが、「デジタル資産特有の調査」が加わる点が特徴だ。取引所口座の特定、ウォレットの有無、秘密鍵の所在確認など、通常の預貯金や有価証券にはないステップが必要となる。相続税の申告期限は死亡を知った日の翌日から10か月以内であり、この期間内にすべての手続きを完了させなければならない。

暗号資産の相続手続き — 5ステップ 1 遺産調査 取引所口座・ ウォレット特定 2 取引所連絡 死亡届提出・ 口座凍結 3 相続届出 必要書類提出・ 遺産分割協議 4 評価額算定 死亡日時価で 全資産を評価 5 相続税申告 10か月以内に 税務署へ申告 【取引所への相続届出に必要な主な書類】 1. 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの) 2. 相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書 3. 遺産分割協議書(または遺言書の写し) 4. 相続人の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等) ※取引所ごとに必要書類が異なります。各取引所のサポート窓口にご確認ください。
【図解のポイント】
暗号資産の相続手続きで最も時間がかかるのは「遺産調査」だ。故人がどの取引所に口座を持っていたか、個人ウォレットの有無、DeFiプロトコルへの預入状況など、デジタル資産は通帳のような物理的な手がかりが少ない。メールの受信履歴やスマートフォンのアプリ一覧、確定申告書の控えなどが手がかりとなる。早い段階で税理士に相談し、調査の漏れを防ぐことが重要だ。

3. 取引所口座 vs 個人ウォレット:相続の難易度比較

暗号資産の保管方法によって、相続の難易度は大きく異なる。取引所口座に預けている場合は、取引所が本人確認情報と資産を管理しているため、所定の書類を提出すれば相続手続きが可能だ。一方、個人ウォレット(ハードウェアウォレット・ソフトウェアウォレット)に保管している場合は、秘密鍵やシードフレーズがなければ資産へのアクセスが一切不可能となる。

取引所口座 vs 個人ウォレット — 相続の難易度比較 取引所口座(CEX) 難易度:低〜中 アクセス方法: 取引所に相続届出を提出 → 本人確認・書類審査 → 相続人の口座へ移管 メリット: - 取引所が資産を管理 - 書類提出で手続き可能 - 取引履歴の取得が容易 - 評価額の証明がしやすい VS 個人ウォレット 難易度:極めて高い アクセス方法: 秘密鍵またはシードフレーズ が必須(第三者の介入不可) → 鍵を紛失 = 永久凍結 リスク: - 秘密鍵なしではアクセス不可 - 取引所のような救済措置なし - 取引履歴の復元が困難 - 課税されるが引出せない事態も
【図解のポイント】
個人ウォレットの秘密鍵を誰も知らない場合、ブロックチェーン上に資産が存在することは確認できても、引き出すことは技術的に不可能だ。さらに深刻なのは、ブロックチェーン上で保有が確認できる場合、相続税の課税対象となりながら資産を換金できないという事態が発生しうる点だ。この問題を回避するためにも、生前の備えが極めて重要である。

【警告】秘密鍵の紛失は取り返しがつかない

個人ウォレットの秘密鍵(プライベートキー)やシードフレーズを相続人の誰も知らない場合、その暗号資産は事実上の「永久凍結」となる。銀行口座のように管理者へ依頼して解除することはできない。世界全体で、秘密鍵の紛失により数千億円規模の暗号資産がアクセス不能になっていると推計されている。暗号資産を保有している場合は、今すぐ生前対策を始めるべきだ

4. 生前対策チェックリスト:エンディングノートの記載事項

暗号資産の相続で最も重要なのは「生前の備え」だ。秘密鍵やアクセス情報を安全に記録し、信頼できる家族にその存在を伝えておくことが、資産の永久凍結を防ぐ唯一の方法である。以下のチェックリストに沿って、エンディングノートに必要事項を記載することを強く推奨する。

エンディングノート記載事項 — チェックリスト 取引所の情報 - 利用している取引所名(国内・海外すべて) - ログインID(メールアドレス) / 2段階認証のバックアップコード 必須 個人ウォレットの情報 - ハードウェアウォレットの保管場所・PINコード - シードフレーズ(リカバリーフレーズ)の記録場所 最重要 保有資産の一覧 - 保有している暗号資産の種類と概算数量 - DeFi・ステーキングへの預入状況 / NFT保有の有無 必須 家族への共有 - エンディングノートの保管場所を信頼できる家族に伝達 - 万一の際の連絡先(税理士・弁護士等)を記載 必須
【図解のポイント】
エンディングノートはデジタル保管(パスワードマネージャー等)と物理保管(金庫・貸金庫等)の両方を検討すべきだ。セキュリティの観点から、秘密鍵やシードフレーズは暗号化して保管し、復号方法を家族に口頭で伝えるなどの工夫が求められる。保有資産の規模が大きい場合は、信託サービスや弁護士への預託も選択肢となる。

生前対策の実践ポイント

エンディングノートには「取引所名・ログインID・2段階認証のバックアップコード・ハードウェアウォレットの保管場所・PINコード」を記録し、信頼できる家族に保管場所を伝えておくこと。暗号資産は一般的な金融資産と異なり、秘密鍵を紛失すると技術的に復旧不可能だ。「いつか整理する」では手遅れになる。保有額の大小にかかわらず、今日から準備を始めることが最善の相続対策だ。

【推奨】暗号資産の相続は専門家に相談を

暗号資産の相続は、従来の金融資産と比較して評価方法や手続きが複雑だ。特に以下のケースでは、暗号資産に詳しい税理士・弁護士への早期相談を強く推奨する。

  • 暗号資産の保有額が数百万円以上の場合
  • DeFi・NFTなど評価が複雑な資産を保有している場合
  • 複数の取引所海外取引所を利用している場合
  • 個人ウォレットに保管しており秘密鍵の管理状況が不明な場合

まとめ:暗号資産の相続 — 「デジタル遺産」時代の備え

かつて相続財産といえば不動産・預貯金・有価証券が中心だった。しかし、ビットコインが誕生した2009年以降、暗号資産は新たな資産クラスとして急速に普及し、「デジタル遺産」という概念が生まれた。従来の金融資産と決定的に異なるのは、秘密鍵を紛失すれば誰にもアクセスできなくなるという不可逆性だ。

世界では、秘密鍵の紛失により数千億円規模の暗号資産が永久にアクセス不能になったと推計されている。日本でも暗号資産の保有者が増加する中、相続時の対策が整備されていないケースは少なくない。歴史的に見ても、新しい資産クラスが登場するたびに相続制度は後追いで整備されてきた。暗号資産もまさにその過渡期にある。

  1. エンディングノートを作成する — 取引所情報・ウォレット情報・保有資産一覧を記録し、家族に保管場所を伝える
  2. 取引所口座を整理する — 使わない取引所のアカウントを整理し、資産を信頼性の高い取引所に集約する
  3. 専門家に相談する — 保有額が大きい場合や複雑な資産構成の場合は、暗号資産に詳しい税理士・弁護士に早めに相談する

相続税の申告期限は死亡を知った日から10か月以内だ。いざという時に家族が困らないよう、今から「デジタル遺産」の整理を始めることが、最も確実な相続対策となる。個別の相続案件については、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談いただきたい。

暗号資産の相続に関するよくある質問(FAQ)

Q. 暗号資産の相続税はいつの時価で計算しますか?

A. 暗号資産の相続税評価額は、被相続人の死亡日(相続開始日)の時価で計算します。具体的には、死亡日における取引所の終値(または当日の平均価格)に保有数量を掛けて算出します。価格変動が大きいため、評価額の算定には正確な死亡日時点の価格データが必要です。複数の取引所に分散している場合は、各取引所の価格を基に評価します。

Q. 取引所に連絡すれば故人の暗号資産を引き出せますか?

A. はい、国内の主要取引所では相続手続きに対応しています。一般的に、戸籍謄本(被相続人の出生から死亡まで)、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、相続人の本人確認書類などの提出が必要です。ただし、取引所ごとに必要書類や手続きの流れが異なるため、各取引所のサポート窓口に直接ご確認ください。

Q. 暗号資産の相続を専門家に相談すべきケースは?

A. 保有額が数百万円以上の場合、DeFiやNFTなど評価が複雑な資産を保有している場合、複数の取引所や海外取引所を利用している場合は、暗号資産に詳しい税理士への相談を強く推奨します。相続税の申告期限は死亡を知った日から10か月以内であり、暗号資産の評価や手続きには専門知識が必要なため、早めの相談が重要です。

【公的機関・一次情報】

本記事は一般的な情報提供を目的としています。暗号資産は価格変動が非常に大きく、投資元本を失う可能性があります。個別の相続案件については、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

国税庁 → 日本暗号資産取引業協会(JVCEA) → 日本税理士会連合会 →

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