クレジットカード用語解説

総量規制とは?年収の3分の1ルールの仕組み・対象と対象外・引っかかった場合の対処法を図解で解説

ヒナコ

ヒナコ

キャッシングの話で「総量規制があるから年収の3分の1までしか借りられない」と聞いたんですけど、これって具体的にどういうルールなんですか?

トシ

トシ

貸金業法に基づくルールだ。貸金業者は、利用者の年収の3分の1を超える貸付を原則として行ってはならない。年収300万円なら借入上限は100万円。これを「総量規制」と呼ぶ

ヒナコ

ヒナコ

じゃあ住宅ローンとか自動車ローンも合わせて3分の1なんですか?それだとすぐ上限に達してしまいそうですけど…

トシ

トシ

住宅ローンや自動車ローンは総量規制の対象外だ。総量規制が適用されるのは「貸金業者からの借入」に限られる。具体的には消費者金融のカードローンとクレジットカードのキャッシング枠だ。銀行のカードローンやショッピング利用は対象外になる。この「対象と対象外」の区分を正確に理解していないと、自分の借入枠を見誤る

総量規制の仕組み──年収の3分の1を超える貸付の禁止

総量規制は2010年6月18日に完全施行された貸金業法の規定だ。貸金業者(消費者金融・クレジットカード会社のキャッシング部門)は、利用者の年収の3分の1を超える貸付を行ってはならない。

重要な点として、この「3分の1」は1社あたりの上限ではなく、全ての貸金業者からの借入の合計で判定される。A社で30万円、B社で40万円、C社で20万円を借りていれば合計90万円。年収が300万円であれば借入上限は100万円なので、残り10万円までしか新規借入ができない。

この判定にはJICC(日本信用情報機構)とCICの情報が使われる。FINEネットワークを通じてCICとJICCの間で貸付残高が相互に共有されているため、複数の貸金業者からの借入額が正確に把握される仕組みだ。FINEネットワークの詳細は信用情報機関とは?の§3で解説している。

総量規制が導入された背景には、2000年代前半の多重債務問題がある。消費者金融からの過剰貸付による自己破産者が急増し、社会問題となった。これを受けて貸金業法が改正され、上限金利の引き下げとともに総量規制が導入された。総量規制は「借りたい人の自由を制限する」ものではなく、「返済能力を超える借入から消費者を守る」ための安全装置だ。

総量規制の基本ルール 税込年収:300万円 (例) ▼ 年収の 1/3 借入上限:100万円 全貸金業者の合計で判定される A社(消費者金融) 30万円 B社(消費者金融) 40万円 C社(クレカキャッシング) 20万円 合計:90万円 残り10万円まで借入可能 JICC+CIC(FINEネットワーク)で全社の借入額を合算して判定

総量規制の対象になるもの・ならないもの

対象になるもの(貸金業法が適用される借入)

消費者金融のカードローン──アコム・プロミス・アイフル等の消費者金融からの借入は全て総量規制の対象だ。消費者金融は貸金業法に基づく「貸金業者」に該当する。

クレジットカードのキャッシング枠──カード会社が提供するキャッシング(現金の借入)は貸金業法の管轄であり、総量規制の対象になる。キャッシングの仕組みの詳細はキャッシングとは?で解説している。

信販会社のフリーローン──信販会社(オリコ・ジャックス等)が提供するフリーローンも、貸金業法の管轄として総量規制の対象だ。

対象にならないもの

銀行のカードローン──銀行は「貸金業者」ではなく「銀行法」の適用を受けるため、総量規制の法的な対象にならない。ただし銀行カードローンが対象外であることは「いくらでも借りてよい」という意味ではない。近年、銀行カードローンの過剰貸付が社会問題として指摘され、金融庁が自主規制を要請した経緯がある。

住宅ローン・自動車ローン・教育ローン──これらは総量規制の「除外貸付」に分類される。借入額が大きいため、総量規制の枠内に含めると実質的に借入が不可能になってしまうことが理由だ。

クレジットカードのショッピング利用──ショッピングは「借入」ではなく「立替払い」の扱いであり、割賦販売法の管轄になる。ショッピングのリボ払い残高がいくら膨らんでも、総量規制の「3分の1」にはカウントされない。ただし割賦販売法に基づく「支払可能見込額」の制限は別途適用される。

不動産担保ローン──不動産を担保とする借入は総量規制の除外貸付だ。

「ショッピング=割賦販売法」「キャッシング=貸金業法」の区分

同じクレジットカードでも、ショッピング利用は割賦販売法、キャッシング利用は貸金業法という異なる法律が適用される。この区分を正確に理解しておくことが重要だ。カード1枚の中に「2つの法律の管轄が共存している」構造になっている。

総量規制の対象と対象外 対象(貸金業法) 消費者金融のカードローン クレジットカードのキャッシング枠 信販会社のフリーローン 対象外 銀行のカードローン (銀行法の適用) 住宅ローン・自動車ローン・教育ローン クレカのショッピング利用 (割賦販売法の管轄=立替払い) 不動産担保ローン 同じクレジットカードでも: ショッピング = 割賦販売法(対象外) / キャッシング = 貸金業法(対象)

「年収」の計算に含まれるもの・含まれないもの

年収に含まれるもの

総量規制における「年収」は税込年収(総支給額)で計算する。源泉徴収票の「支払金額」欄の数字がベースだ。手取り額(振込額)ではない。

具体的には、給与・賞与(税込年収)、年金収入、不動産の賃貸収入、個人事業主の事業所得(確定申告書ベース)が年収として認められる。

年収に含まれないもの

宝くじの当選金やギャンブルの収入(一時所得)、保険金の受取、資産の売却益(不動産売却等の一時的な収入)は年収にカウントされない。継続的・安定的な収入のみが対象だ。

配偶者の収入は原則として含まれないが、「配偶者貸付」の特例(§5で解説)を利用する場合は本人と配偶者の年収を合算できる。

収入証明書の提出が必要になるケース

貸金業者は一定の条件で「収入証明書」の提出を求める義務がある。提出が必要になるのは以下のいずれかに該当する場合だ。

① 1社からの借入が50万円を超える場合──1つの貸金業者からの借入額が50万円を超える際に提出が必要。

② 全社合計の借入が100万円を超える場合──他社を含めた借入総額が100万円を超える際に提出が必要。

収入証明書として認められるのは、源泉徴収票、確定申告書、給与明細(直近2ヶ月分+賞与明細)だ。収入証明書を提出できない場合、希望する金額の借入ができない可能性がある。

年収の計算と収入証明書 年収に含まれる 給与・賞与(税込年収) 年金収入 不動産の賃貸収入 事業所得(確定申告書ベース) 年収に含まれない 宝くじ・ギャンブル収入(一時所得) 保険金の受取 資産の売却益(不動産売却等) 配偶者の収入(原則・例外あり) 収入証明書の提出が必要になるケース ① 1社で50万円超 or ② 全社合計で100万円超 源泉徴収票・確定申告書・給与明細(直近2ヶ月+賞与明細)が必要

総量規制に引っかかった場合に起きること

新規の借入ができなくなる

全社合計の借入額が年収の3分の1に達している場合、新たなキャッシングやカードローンの借入ができなくなる。既存のキャッシング枠があっても、総量規制の上限に達していれば利用が停止される。

カード会社は定期的に信用情報を照会(途上与信)しており、他社での借入が増えたことで総量規制に抵触すると、キャッシング枠が減額される場合がある。「昨日まで使えたキャッシング枠が突然使えなくなった」という事態は、途上与信による枠の見直しが原因であることが多い。

カードのショッピング利用は影響を受けない

総量規制はキャッシング(貸付)にのみ適用される。ショッピング利用は「借入」ではなく「立替払い」の扱いであるため、総量規制に抵触していてもショッピングは通常どおり利用できる。ただし、ショッピング枠には割賦販売法に基づく別の制限が適用される。

既存の借入の返済義務は変わらない

総量規制に引っかかったからといって、既存の借入が強制的に回収されるわけではない。既に契約済みの借入は従来どおりの返済スケジュールで返済を続ける。ただし「借り換え」や「おまとめ」のための新規借入は制限される可能性がある(例外貸付については§5で解説)。

総量規制に引っかかった場合 借入合計が年収の1/3に到達 = 総量規制に抵触 新規キャッシング 利用停止 既存枠も減額の可能性あり ショッピング 影響なし 立替払い=総量規制の対象外 既存の返済 変更なし 従来どおり返済を継続 途上与信のタイミングに注意 カード会社は定期的に信用情報を照会。他社の借入増加により枠が突然減額されるケースがある
ヒナコ

ヒナコ

総量規制に引っかかってしまったら、もう借りる方法はないんですか?急にお金が必要になったときに困りますよね…

トシ

トシ

総量規制には「例外貸付」と「除外貸付」という仕組みがある。全ての借入が一律に禁止されるわけではない。ただし例外貸付は条件が厳しく、「急にお金が必要」という理由だけでは適用されない

ヒナコ

ヒナコ

例外と除外って違うんですか?なんだかややこしいです…

トシ

トシ

「除外」は総量規制の計算に最初からカウントしない借入だ。住宅ローンや自動車ローンがこれに当たる。「例外」は本来は総量規制の対象だが、特定の条件を満たした場合に年収の3分の1を超えても借入が認められるケースだ。「おまとめローン」が例外貸付の代表例で、複数社の借入を1社にまとめて金利負担を下げる場合に認められる。ただし例外貸付は貸金業者の審査を通る必要があり、希望すれば必ず利用できるものではない

総量規制の対処法と「例外貸付」の仕組み

例外貸付の主な種類

おまとめローン(借換え):複数の借入を1本にまとめ、金利や月々の返済額を軽減する目的の借入だ。利用者に「一方的に有利」な条件であることが要件であり、貸金業者の審査を通る必要がある。希望すれば必ず利用できるものではない。

緊急の医療費:本人や家族の緊急の医療費に充てる借入。緊急性が認められる場合に限り、総量規制の例外として借入が可能だ。

個人事業者に対する貸付:事業計画等の提出により返済能力が認められる場合、事業資金として総量規制の例外が適用される。

配偶者貸付:本人と配偶者の年収を合算し、合計額の3分の1まで借入が可能になる制度だ。配偶者の同意書と婚姻関係を証明する書類が必要であり、対応している貸金業者も限られる。

総量規制に引っかからないための対策

複数の貸金業者からの借入を把握し、合計額を管理することが基本だ。使っていないカードのキャッシング枠は減額または解除しておくのが合理的だ(枠の残高はゼロでも、途上与信で参照される可能性がある)。

返済を計画的に進め、借入残高を減らすことが最も確実な対策になる。自分の借入総額を正確に把握するには、JICCで開示請求を行う。開示請求の手順は信用情報機関とは?の§4で解説している。

返済に困った場合の相談先

総量規制に引っかかるほど借入が膨らんでいる場合、多重債務のリスクがある。一人で抱え込まず、早期に専門家へ相談することが最も重要だ。

日本貸金業協会「貸金業相談・紛争解決センター」(0570-051-051)── 借入に関する相談全般。

消費生活センター(局番なし188)── 消費者トラブル全般の相談窓口。

法テラス(0570-078374)── 法的トラブルの総合案内。債務整理に関する相談も可能。

総量規制の対処法フロー 総量規制に引っかかった 借入を減らせる? Yes 計画的な返済を進める 不要なキャッシング枠も解除 No おまとめローンで一本化できる? Yes 例外貸付として申し込み ※審査あり・必ず通るわけではない No 相談窓口へ:貸金業協会(0570-051-051)/ 消費生活センター(188)/ 法テラス(0570-078374) 返済困難

【プロの視点】総量規制は「借りすぎ」を防ぐ安全装置だ

総量規制に対して「自由に借りられなくなった」と不満を持つ声は多い。しかし総量規制が導入された2010年以降、多重債務者数は大幅に減少した。金融庁の統計では、5件以上の借入がある多重債務者は導入前の約171万人から大幅に減少している(出典:金融庁「多重債務者対策をめぐる現状及び施策の動向」)。

注意すべきは、銀行のカードローンが総量規制の「対象外」であることだ。銀行は貸金業法ではなく銀行法の適用を受けるため、法律上は年収の3分の1を超える貸付が可能だ。近年、銀行カードローンの過剰貸付が社会問題として指摘され、金融庁が自主規制を要請した経緯がある。銀行カードローンは総量規制の枠外にあるからこそ、利用者自身が「いくらまでなら返せるか」を冷静に判断する必要がある。

B3バッチでは「クレヒス→ブラックリスト→信用情報機関→総量規制」の4つの制度を順に解説してきた。これらはすべて「信用取引のインフラ」であり、仕組みを正しく理解している人間と理解していない人間では、金融商品との向き合い方がまるで変わる。制度を味方につけろ。

次に読むべきページ

総量規制の仕組みを理解したら、関連するキャッシング・信用情報の知識を補強しよう。

まとめ

総量規制は貸金業法に基づくルールで、貸金業者は利用者の年収の3分の1を超える貸付を原則として行えない。対象は消費者金融のカードローンとクレジットカードのキャッシング枠。住宅ローン・銀行カードローン・ショッピング利用は対象外だ。

判定は全貸金業者の借入合計で行われ、JICCとCICのFINEネットワークを通じた情報共有が使われる。1社50万円超または全社合計100万円超で収入証明書の提出が必要になる。

総量規制に引っかかった場合、新規のキャッシングはできなくなるがショッピング利用は影響を受けない。「おまとめローン」等の例外貸付の仕組みがあるが、返済に困った場合は貸金業協会・消費生活センター・法テラスへの早期相談が最も重要だ。

よくある質問

銀行のカードローンが総量規制の対象外なのはなぜ?

銀行は「貸金業者」ではなく「銀行法」の適用を受けるため、貸金業法に基づく総量規制の法的な対象にならない。ただし近年、銀行カードローンの過剰貸付が社会問題化し、金融庁が自主規制を要請している。銀行カードローンが総量規制の対象外であることは「いくらでも借りてよい」という意味ではない。

クレジットカードのショッピングのリボ残高は総量規制にカウントされる?

カウントされない。ショッピング利用は「借入」ではなく「立替払い」の扱いであり、割賦販売法の管轄になる。キャッシング枠のみが総量規制の対象だ。ただしリボ残高が膨らめば別の問題(利息負担の増大・支払可能見込額の圧迫)が生じるため、リボ払いの残高管理は総量規制とは別に重要だ。

総量規制の「年収の3分の1」は手取りで計算する?税込みで計算する?

税込年収(総支給額)で計算する。源泉徴収票の「支払金額」欄の数字がベースになる。手取り額(振込額)ではないため、手取り300万円の人は税込年収がそれより大きく、借入上限も手取りの3分の1より多くなる。

専業主婦(主夫)は総量規制で借入できない?

原則として、本人に収入がなければ貸金業者からの借入はできない。ただし「配偶者貸付」の例外制度がある。本人と配偶者の年収を合算し、合計額の3分の1まで借入が可能だ。配偶者の同意書と婚姻関係を証明する書類が必要で、対応している貸金業者も限られるため、事前に確認が必要だ。

総量規制に引っかからないために、使っていないキャッシング枠は解除すべき?

使っていないキャッシング枠の「残高」はゼロなので、総量規制の借入合計にはカウントされない。ただしキャッシング枠の存在自体が途上与信で参照される可能性があり、他社からの借入可能額の判断に影響する場合がある。使う予定がないキャッシング枠は解除しておくのが合理的だ。

出典・参考情報

リスクに関する重要事項:クレジットカードの利用は信用取引であり、支払いの遅延は信用情報機関に記録され将来の審査に影響する。キャッシング・カードローンの借入は計画的に行うこと。返済に困った場合は日本貸金業協会(0570-051-051)、消費生活センター(188)、法テラス(0570-078374)に相談できる。

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