ネット銀行用語解説

振込の仕組みとは?全銀システム・モアタイムシステム・振込と振替の違い・手数料が発生する理由を図解で解説

ヒナコ

ヒナコ

他の銀行にお金を振り込むとき、なぜ手数料がかかるんですか?同じお金を送るだけなのに…

トシ

トシ

銀行間の振込は「全銀システム」という巨大なネットワークを経由して処理される。このシステムの運営・維持にコストがかかるから手数料が発生する。いわば振込手数料は「インフラ使用料」だ

ヒナコ

ヒナコ

全銀システム…?聞いたことがないです。誰が運営しているんですか?

トシ

トシ

全銀システム(全国銀行データ通信システム)は、全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が運営する日本最大の決済インフラだ。国内のほぼすべての金融機関──メガバンク・地方銀行・信用金庫・ネット銀行──が接続されている。毎営業日、数百兆円規模の資金がこのシステムを通じて移動している。2018年にはモアタイムシステムが稼働し、24時間365日の即時振込が可能になった。普段意識することはないが、日本の経済を裏側で支えている根幹インフラだ

全銀システムとは──日本の振込を支える「見えないインフラ」

全銀システム(全国銀行データ通信システム)の概要

全銀システム(正式名称:全国銀行データ通信システム)は、銀行間の振込・送金を処理するためのオンラインネットワークだ。日本国内の銀行間振込は、原則としてこのシステムを経由して行われる。

運営主体は全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)。全国銀行協会の関連組織であり、日本の決済インフラの根幹を担う公共性の高い機関だ。1973年に稼働を開始し、以来50年以上にわたって日本の資金決済を支え続けている。

接続金融機関と処理規模

全銀システムに接続されている金融機関は約1,100機関に上る(出典:全銀ネット公表データ ※概数)。メガバンク・地方銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫・農業協同組合・ネット銀行──国内のほぼすべての預金取扱い金融機関がこのネットワークに参加している。

処理規模は1日あたり約600万件以上の振込を処理している(出典:全銀ネット公表データ ※概数)。金額ベースでは毎営業日数百兆円規模の資金がこのシステムを通じて移動しており、日本経済の血液循環を担うインフラと言える。

振込の流れ

銀行間振込の基本的な流れは「送金者 → 送金元銀行 → 全銀システム → 受取先銀行 → 受取人」だ。送金者が振込手続きを行うと、送金元銀行は全銀システムに振込データを送信する。全銀システムがデータを中継し、受取先銀行に伝達。受取先銀行が受取人の口座に入金する。

なお、同じ銀行内の振込(自行内振込)は全銀システムを経由せず、銀行内部のシステムだけで処理される場合がある。全銀システムを経由しない分、銀行間手数料が不要となるため、自行内振込は手数料が無料または安く設定されていることが多い。

全銀システムの振込フロー 送金者 振込手続き 送金元銀行 データ送信 (A銀行) 全銀システム (全銀ネット運営) データ中継・決済 約1,100機関接続 受取先銀行 入金処理 (B銀行) 受取人 口座に着金 ※同じ銀行内の振込は全銀システムを経由しない場合がある → 銀行間手数料が不要 → 自行内振込は無料または安い 1日約600万件以上・数百兆円規模の資金が全銀システムを通過 ※出典:全銀ネット公表データ(概数)

モアタイムシステム──24時間365日の即時振込を実現した仕組み

従来の全銀システム(コアタイムシステム)の制限

2018年以前、全銀システムが稼働するのは平日8:30〜15:30のみだった。この時間帯は「コアタイム」と呼ばれ、コアタイム内に振込手続きが完了すれば即時に着金していた。

しかし、コアタイム以外の時間帯に振り込んだ場合、実際の入金は翌営業日まで持ち越される「翌営業日扱い」となっていた。金曜日の15:30以降に振り込むと、着金は月曜日(または翌営業日)まで待たなければならないケースが日常的に発生していた。

企業間の決済や家賃の振込など、タイムリーな資金移動が求められる場面で、この時間制限は大きな不便をもたらしていた。

モアタイムシステムの登場(2018年10月稼働)

2018年10月、全銀ネットはコアタイム以外の時間帯でも即時振込を可能にする「モアタイムシステム」を稼働させた。これにより、平日夜間・土日祝日を含む24時間365日、即時に振込が着金する環境が整った。

モアタイムシステムに対応した金融機関同士であれば、深夜2時でも日曜日の朝でも、振込手続きから数秒〜数分で相手口座に着金する。2026年時点で、メガバンク・主要地方銀行・ネット銀行を含むほぼすべての主要金融機関がモアタイムシステムに対応済みだ。

注意点

モアタイムシステムへの対応は金融機関の任意参加であり、一部の金融機関は未対応の場合がある。送金元と受取先の両方がモアタイムに対応していなければ、即時振込は実現しない。

また、年末年始やシステムメンテナンスの時間帯は、モアタイム対応金融機関同士でも即時振込ができない場合がある。緊急性の高い振込は、時間帯と対応状況を事前に確認することが望ましい。

コアタイムとモアタイムの比較 2018年以前 0:00 8:30 15:30 24:00 即時振込可能 翌営業日扱い 翌営業日扱い 土日祝日:全日翌営業日扱い 2018年10月以降 0:00 8:30 15:30 24:00 コアタイム モアタイム モアタイム 土日祝日も含め24時間365日即時振込が可能に(対応金融機関同士の場合) ※モアタイムシステムへの対応は金融機関の任意参加。一部未対応の金融機関あり

「振込」と「振替」の違い

振込(ふりこみ)

振込とは、自分の銀行口座から「他人名義の口座」または「別の銀行の口座」にお金を送ることだ。他行宛の場合は全銀システムを経由するため、銀行間手数料が発生する。これが「振込手数料」として利用者に請求される。

自行内の振込(同じ銀行の他人名義口座への送金)であっても、「振込」として扱われる。ただし、全銀システムを経由しないため銀行間手数料は不要であり、自行内振込手数料は無料または低額に設定されていることが多い。

振替(ふりかえ)

振替とは、同じ銀行の「自分名義の口座間」でお金を移動することだ。たとえば、自分のA銀行普通預金口座から自分のA銀行定期預金口座にお金を移す操作が「振替」に該当する。

振替は同一銀行・同一名義人間の資金移動であるため、全銀システムを経由しない。手数料は通常無料だ。口座名義人が同一であることが振替の条件となる。

よくある混同

「自分のA銀行口座 → 自分のB銀行口座」への送金は「振込」だ。銀行が異なるため全銀システムを経由する必要があり、手数料が発生する。たとえ同じ名義人であっても、銀行が異なれば振込扱いとなる。

一方、「自分のA銀行普通口座 → 自分のA銀行定期口座」は「振替」だ。同一銀行・同一名義のため手数料は無料。振込と振替では手数料の有無が変わるため、この区別を理解しておくことは家計管理の上でも重要だ。

「振込」と「振替」の違い 振込(ふりこみ)── 手数料あり A銀行 (自分) 全銀システム 経由 B銀行 (相手) 手数料発生 振替(ふりかえ)── 手数料なし A銀行 普通預金 (自分) 同一銀行・同一名義 → 全銀システム不要 A銀行 定期預金 (自分) 手数料無料 注意:自分のA銀行→自分のB銀行は「振込」扱い(異なる銀行間のため手数料あり)

振込手数料が発生するメカニズム

振込手数料の内訳

振込手数料は単一のコストではなく、複数のコスト要素で構成されている。主な構成要素は以下の3つだ。

①全銀システムの利用料:銀行間決済ネットワーク(全銀システム)の運営・維持に必要なコスト。振込1件ごとに「銀行間手数料」として送金元銀行から全銀ネットに支払われる。

②送金元銀行の事務処理コスト:振込データの作成・送信、本人確認、不正送金対策などのシステム運用・人件費。

③受取先銀行の入金処理コスト:振込データの受信・検証、受取人口座への入金処理にかかるコスト。

2021年、全銀ネットは銀行間手数料を1件あたり117円から62円に引き下げた(2021年時点の情報)。約半減となるこの引き下げを受けて、多くの銀行が振込手数料を値下げした。銀行間手数料の水準は振込手数料に直接影響するため、インフラ側のコスト削減が利用者のコスト軽減に波及した好例だ。

自行内振込が安い理由

同じ銀行内の振込は全銀システムを経由しない場合がある。全銀システムを経由しなければ銀行間手数料(上記①)が不要となるため、手数料を無料または低額に設定できる。自行内振込が安いのは、インフラ使用料が発生しないという構造的な理由があるからだ。

ネット銀行が振込手数料を無料にできる理由

ネット銀行は実店舗の運営コスト(家賃・人件費・ATM維持費)が不要だ。メガバンクや地方銀行が全国に数百〜数千の店舗を維持しているのに対し、ネット銀行はオンライン上のシステムだけで運営している。この店舗コストの差が、「月○回まで他行宛振込手数料無料」という強力な特典の原資となっている。

ただし、無料回数を超えた分には通常の振込手数料(150〜300円程度)が発生する。また、無料回数は銀行のランク制度(預金残高やサービス利用状況に応じたステージ)によって変動する場合が多い。具体的な銀行ごとの無料回数やランク条件は振込手数料無料のネット銀行ランキングで比較できる。

振込手数料が発生するメカニズム 他行宛振込(手数料あり) 送金元銀行 事務処理コスト② 全銀システム 利用料①:62円/件 (2021年引き下げ後) 受取先銀行 入金処理コスト③ ①+②+③ = 振込手数料として利用者に請求 自行内振込(手数料無料または安い) 自分の口座 (普通預金) 相手の口座 (同一銀行内) 全銀システム不要 → ①のコストがゼロ ネット銀行は店舗コスト削減分を「月○回無料」の原資に充てている ※振込手数料は金融機関により異なる。具体的な比較は振込手数料無料ランキングを参照
ヒナコ

ヒナコ

全銀システムの仕組みが分かると、振込手数料の理由も納得です。最近「ことら送金」という言葉を聞くんですが、全銀システムとは違うんですか?

トシ

トシ

ことら送金は全銀システムとは別の送金インフラだ。全銀システムが「大口・全金融機関対応の高速道路」だとすれば、ことら送金は「少額・手数料ゼロの自転車レーン」のようなものだ。上限10万円の制約はあるが、個人間の少額送金には非常に便利だ

ヒナコ

ヒナコ

手数料ゼロは魅力的ですね!全銀システムの代わりになるんですか?

トシ

トシ

代わりにはならない。ことら送金は上限10万円・対応金融機関が限定的という制約がある。家賃の振込や高額な取引には使えない。全銀システムは金額制限なし・ほぼ全金融機関対応という圧倒的なカバー範囲を持つ。2つの送金手段の「得意分野」を理解して使い分けるのが正解だ。ことら送金の詳しい仕組みは今後解説する

ことら送金との違い──全銀システムに代わる新しい送金手段

ことら送金とは

「ことら」(多頻度小口決済インフラ)は、個人間の少額送金に特化した新しい送金サービスだ。2022年10月にサービスを開始し、全銀システムとは異なるインフラ基盤で運営されている。

最大の特徴は「手数料が原則無料」であること。全銀システムを経由する振込では手数料が発生するが、ことら送金では利用者負担なしで送金できる。送金方法も特徴的で、相手の口座番号だけでなく、携帯電話番号やメールアドレスを指定して送金できる。口座番号を知らない相手にも手軽に送金できる点が従来の銀行振込との大きな違いだ。

ただし、送金上限は1回あたり10万円。家賃の支払いや高額な取引には対応できない。あくまで「少額の個人間送金」に特化したサービスという位置づけだ。

全銀システムとの比較

比較項目 全銀システム ことら送金
送金上限 制限なし 1回10万円
手数料 有料(銀行が設定) 原則無料
対応金融機関 約1,100機関 対応行は拡大中(全行ではない)
送金方法 口座番号指定 携帯番号・メールアドレスも可
即時性 モアタイム対応行は即時 即時
主な用途 家賃・請求書・給与振込等 個人間の割り勘・少額送金

全銀システムとことら送金は「競合」ではなく「補完関係」にある。大口の取引や企業間決済・公的な振込には全銀システム、友人間の割り勘や少額の個人間送金にはことら送金。用途に応じて使い分けることで、振込手数料を合理的に最小化できる。

全銀システムとことら送金の比較 全銀システム 送金上限: 制限なし 手数料: 有料(銀行が設定) 対応機関: 約1,100機関 送金方法: 口座番号指定 得意分野: 大口・公的振込 稼働歴: 1973年〜(50年超) VS ことら送金 送金上限: 1回10万円 手数料: 原則無料 対応機関: 拡大中(限定的) 送金方法: 携帯番号・メール可 得意分野: 少額・個人間送金 稼働歴: 2022年〜(新興) 競合ではなく補完関係 → 用途に応じた使い分けが合理的

【プロの視点】振込手数料は「インフラ使用料」だ

「振込手数料は高い」と不満を持つ人は多い。しかし全銀システムという巨大インフラが24時間365日、数百兆円規模の資金移動を安全に処理し続けていることを考えると、1件あたり数百円の手数料は合理的な対価とも言える。

とはいえ、同じ振込でも金融機関によって手数料に大きな差がある。メガバンクの窓口振込は数百円〜千円超の手数料が発生するケースがある。ATM振込はその中間程度。ネット銀行のインターネット振込なら月数回の無料枠が付与され、超過分も比較的低額に抑えられる傾向がある。

振込手数料を最小化するための原則は3つだ。第一に、ネット銀行を利用し月○回の無料枠を活用する。第二に、同じ銀行内の振替で済むなら振込は使わない。第三に、少額の個人間送金にはことら送金を使う。この3つを使い分けるだけで、年間の振込手数料は劇的に下がる。

全銀システムの存在を知ったからといって手数料を喜んで払う必要はない。しかし「なぜ手数料がかかるのか」を理解すれば、「どうすれば最小化できるか」の戦略も見えてくる。仕組みを知ることが、コスト削減の第一歩だ。具体的な銀行ごとの振込手数料や無料回数の比較は振込手数料無料のネット銀行ランキングで確認できる。

次に読むべきページ

振込の仕組みと手数料のメカニズムを理解したら、次は関連する知識を深めていく。

まとめ

全銀システム(全国銀行データ通信システム)は約1,100の金融機関を結ぶ日本最大の決済インフラ。2018年にモアタイムシステムが稼働し、24時間365日の即時振込が可能になった。

振込手数料は全銀システムの利用料+銀行の事務処理コストで構成される。自行内振込は全銀システムを経由しないため安い。ネット銀行は店舗コスト削減分を手数料無料回数に充てている。

ことら送金は全銀システムとは別の少額送金インフラ。手数料無料・上限10万円・携帯番号で送金可能。全銀システムとは「得意分野」が異なるため、用途に応じた使い分けが合理的だ。

よくある質問

全銀システムとは何?

全国銀行データ通信システムの略称。国内のほぼすべての金融機関(約1,100機関)を結び、銀行間の振込・送金を処理するオンラインネットワーク。全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が運営。1973年の稼働以来、日本の決済インフラの根幹を担っている。

モアタイムシステムとは?

全銀システムの稼働時間を24時間365日に拡張するシステム。2018年10月に稼働開始。従来のコアタイム(平日8:30〜15:30)以外の時間帯でも即時振込が可能になった。対応金融機関同士であれば土日祝日・深夜でも即座に着金する。

振込と振替の違いは?

振込は「他人名義の口座」や「別の銀行の口座」にお金を送ること。全銀システムを経由するため手数料が発生する。振替は「同じ銀行の自分名義の口座間」でお金を移動すること。全銀システムを経由しないため通常は手数料無料。

ことら送金と全銀システムの違いは?

ことら送金は個人間の少額送金に特化した送金インフラで、手数料無料・上限10万円・携帯番号で送金可能。全銀システムは金額制限なし・約1,100機関対応だが手数料あり。大口取引や公的振込は全銀システム、少額の個人間送金はことら送金という使い分けが合理的だ。

なぜネット銀行は振込手数料を無料にできる?

ネット銀行は実店舗の運営コスト(家賃・人件費等)がかからないため、その分を振込手数料の無料回数の原資に充てている。ただし無料には回数制限があり、超過分は通常の振込手数料が発生する。銀行ごとの無料回数やランク条件は振込手数料無料のネット銀行ランキングで比較できる。

出典・参考情報

リスクに関する重要事項:振込手数料は金融機関により異なり、随時変更される可能性がある。最新の手数料は各金融機関の公式サイトを確認すること。モアタイムシステムへの対応状況は金融機関により異なる。即時振込が可能かどうかは送金元・受取先の両行の対応状況による。ことら送金の対応金融機関は拡大中であり、すべての金融機関で利用できるわけではない。

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