身に覚えのない引き出しに気づいたら
預金者保護法とは?偽造・盗難カードの補償条件と30日の範囲
預金者保護法(預貯金者保護法)は、個人の偽造・盗難キャッシュカードなどを使った、ATMでの不正な払戻し等から預金者を守る法律です。
補償条件は、偽造カードと盗難カードで異なります。「過失があれば、どちらも75%の補償」ではありません。また、盗難カードの「30日」は、原則として銀行への通知日から遡って対象となる払戻しを調べるための期間です。
預金者保護法の対象は、個人のカード等による不正なATM取引
この法律は2006年2月10日に施行されました。正式名称は「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」です。銀行のほか、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協なども対象金融機関に含まれます。
対象は金融機関と預貯金等の契約を結ぶ個人です。ATMで現金を引き出す取引だけでなく、ATM振込に伴う口座からの払戻しも含まれます。預金契約に基づく一定のATM借入れにも、本人の責任に関する規定があります。
法律の「カード等」には、ATMでの払戻しに使う通帳も含まれます。一方、法人の被害、窓口で盗難通帳が使われた被害、デビットカードでの買い物被害まで、この法律で一律に補償されるわけではありません。取引の種類と銀行の規定を確認します。
偽造カードと盗難カードでは、過失がある場合の扱いが違う
まずカードの種類を分け、そのうえで本人と銀行それぞれの事情を確認します。下表の「原則全額」は、対象となる不正な払戻額についての説明です。手続・対象期間・例外も合わせて読む必要があります。
横に収まらない場合は表を左右に動かせます。キーボードでは表に移動して矢印キーを使えます。
| 確認すること | 偽造カード | 盗難カード |
|---|---|---|
| 原則 | 不正な払戻しは効力を持たず、預金者は払戻しを求められる | 必要な申出を行うと、対象額の全額を補てん |
| 本人に過失がある (重大な過失を除く) | 75%へ減額する規定はない | 銀行が下記の条件を証明した場合は対象額の75% |
| 本人の重大な過失 | 銀行側の善意・無過失も満たす場合は保護の例外になる | 銀行側の善意・無過失も含め銀行が証明した場合は補てんの対象外 |
| 30日の扱い | 盗難カードの「通知前30日」をそのまま当てはめない | 原則、通知日の30日前の日以降の払戻しが対象。盗取日前には遡らない |
盗難カードで75%となるための条件
銀行が、不正な払戻しについて善意で過失がなく、本人の過失(重大な過失を除く)によってその払戻しが行われたことを証明した場合です。「善意」は、ここでは不正な取引だと知らなかったという法律上の意味です。本人側だけを見て減額率が決まる仕組みではありません。
同じ20万円の被害でも、偽造と盗難で扱いが変わる
説明のため、対象となる不正な払戻額を20万円、本人には重大ではない過失があり、銀行は善意・無過失という条件を置きます。ほかの例外や、既に返還されたお金はないものとします。
20万円を求める原則は変わりません
重大ではない過失を理由に、法律上の額を15万円へ減らす規定はありません。
所定の証明があれば、20万円×75%=15万円
銀行が自らの善意・無過失と、本人の過失によって払戻しが行われたことを証明した場合です。必要な申出と対象期間の条件も満たしている前提です。
実際の補償額をこの例だけで決めることはできません。手数料・利息の扱いや、既に返還を受けた金額についても、銀行の規定と手続を確認してください。
故意や、親族による払戻しなどの例外
偽造カードでは、本人の故意による払戻し、または銀行が善意・無過失で本人の重大な過失による払戻しが、原則的な保護の例外です。盗難カードでも、本人の故意によるものなどと銀行が証明した場合は補てん義務の例外になります。
さらに盗難カードでは、銀行が自らの善意・無過失と、次のいずれかを証明した場合も補てんの対象外です。
- 本人の重大な過失によって払戻しが行われた。
- 本人の配偶者、二親等内の親族、同居の親族・その他の同居人、家事使用人が払戻しを行った。
- 銀行への説明で、重要な事項について偽りの説明をした。
このほか、盗難が戦争・暴動などの著しい社会秩序の混乱に乗じて、またはそれに付随して起きたことを銀行が証明した場合にも例外があります。法律の細かな適用は、被害の事実関係に沿って確認されます。
根拠:同法第4条、第5条第1~3項、第6条(法務省掲載の日本語条文PDFでも確認できます)
盗難カードの30日は、銀行に通知した日から遡る
「被害が起きてから30日間は、届出を待ってよい」という意味ではありません。盗難に気づいたら速やかに銀行へ通知することが、補てんを求める条件の一つです。
原則の基準日は、銀行へ盗難を通知した日の30日前の日です。ただし、その日より後に盗まれた場合は、盗まれた日が基準日になります。そこから後の対象となる不正な払戻しを確認します。
盗まれた日は8月11日以前、通知できない特別な事情はないものとした説明用の例です。
- 8月11日原則の30日前より前
この日の払戻しは、下記の例外がない限り、この基準日による補てんの範囲より前です。
- 8月12日通知日の30日前=基準日
この日の対象となる不正な払戻しから確認します。
- 9月10日基準日以後の払戻し
期間内でも、カードの種類や申出など、ほかの条件の確認が必要です。
- 9月11日銀行へ盗難を通知した日
この日を起点に30日前へ遡ります。盗難に気づいた日とは区別して記録します。
同じ9月11日の通知でも、盗まれた日が9月5日なら基準日は9月5日です。盗難前の8月12日まで対象を広げることはありません。
盗まれた日が明らかでないときは、その盗難カード等による不正な払戻し・借入れが最初に行われた日を用います。下記の2年の規定でも、この扱いは同じです。
通知できなかった事情があるとき
盗難を知ることができなかったなど、通知できないことにやむを得ない特別の事情があり、その期間を本人が証明した場合は、30日にその事情が続いた日数を加えて基準日を求めます。単に30日を超えたという理由で、自分ですべてを対象外と決めず、通知できなかった理由と日付を銀行に説明してください。
別の規定として、盗まれた日から2年を経過する日より後に通知した場合は、同法第5条の補てん等の規定は適用されません。30日と2年は異なる条件であり、どちらも連絡を先延ばしできる期間ではありません。
「過失があるか」は、暗証番号だけで決まらない
「暗証番号が生年月日だったから補償されない」「カードとメモを一緒にしていたから必ず75%」と、ひとつの事実だけで判断するのは早計です。カードの種類、管理状況、銀行からの案内、被害につながった経緯を分けて確認します。
たとえば三菱UFJ銀行が公表する過失の例では、推測されやすい暗証番号について、銀行が個別・具体的に複数回変更を求めていたことに加え、その番号を推測できる書類とカードを一緒に持ち歩く・保管する条件も示されています。
一方、暗証番号を他人に知らせる、カードそのものに書く、他人にカードを渡すといった行為は、重大な過失となり得る例として挙げられています。これらは同行の公表例であり、事情を確認せず個々の被害を判定する一覧ではありません。
申出の際は、不利に思える事情も含めて事実を伝えます。説明を求められたら、銀行がどの行為を問題とし、どの規定に基づいて判断するのかを確認すると、話を整理しやすくなります。
被害時は、銀行への連絡・警察への届出・事情の説明を進める
資料を全部そろえる前でも、まず銀行に連絡します。偽造か盗難かを自分で確定させる必要はありません。
- 銀行の公式窓口へ連絡し、利用停止と取引確認を依頼する
「カードがいつから見当たらないか」「どの引き出しに心当たりがないか」を伝えます。必要な停止範囲や再発行、補償申請の窓口・書類を銀行に確認してください。連絡した日時と案内内容を残します。
- 警察へ分かっている事実を相談・届出する
盗難か紛失か不明な点も、そのまま説明します。届出先、日時、受理番号などを記録し、銀行にも伝えます。必要な書類や確認方法は銀行の案内に従ってください。
- 銀行の調査に協力し、被害の経緯を説明する
取引明細、最後に自分が使った日時、カードと暗証番号の管理状況などを整理します。思い出せない部分は推測で埋めず、「分からない」と伝えます。
盗難カードの申出で必要になること
法律では、①盗難を認めた後の速やかな銀行への通知、②求めに応じた遅滞のない十分な説明、③警察など捜査機関への届出をした旨の申出など、盗難を推測できる所定の事実を銀行に示すことが定められています。
日付は3つに分けてメモする
- カードが盗まれたと考えられる日
- 不明なら、最後にカードを確認した日時と、なくなったと気づいた日時。
- 身に覚えのない取引があった日
- 取引ごとの日時、金額、明細に表示された取引内容。
- 銀行へ通知した日
- 連絡した日時、窓口、案内された内容。通知できなかった事情があれば、その期間と説明資料。
銀行の回答で分からない点は、対象取引、判断の理由、適用した規定を確認します。相談先に迷う場合は、金融庁の金融サービス利用者相談室でも相談窓口を確認できます。
ネット不正送金やペイオフは、別の仕組みで確認する
ネットバンキング・窓口での盗難通帳の被害
ネットバンキングによる不正送金や、窓口で盗難通帳が使われる被害は、この法律のATM取引とは分けて扱います。ただし、法律の直接の対象外だから補償がないという意味ではありません。
全銀協の申し合わせでは、個人のネットバンキング被害について、本人に過失がない場合は銀行に過失がなくても原則補償、本人に過失・重大な過失がある場合は個別対応としています。ネット被害にも一律75%を当てはめず、利用銀行の補償規定を確認します。窓口での盗難通帳被害も、別途、銀行の規定と手続を確認してください。
ネット不正送金が疑われる場合の連絡・対応はこちら。再発防止の設定は、ネット銀行のセキュリティ対策で確認できます。
根拠:全銀協「預金等の不正な払戻しへの対応」/ネットバンキング被害の補償方針
自分で振り込んだ詐欺被害・銀行の破綻
だまされて自分で振り込んだ被害は、偽造・盗難カードの補償表では判断できません。振込先の金融機関と警察に連絡し、振り込め詐欺救済法による手続などを確認します。支払を受けられるかや金額は、振込先口座に残った資金などによって変わります。
銀行そのものが破綻したときの預金保護は、預金保険制度・ペイオフの話です。ペイオフの対象・保護範囲はこちらで説明しています。
確認した公式資料と編集方針
ページ上部の最終更新日に、法令、金融庁、全国銀行協会、銀行の公表資料を確認しました。法令の条件と銀行ごとの公表例を区別し、個別の補償可否は断定していません。
- e-Gov法令検索:預貯金者保護法の条文(対象、偽造・盗難、通知前30日等)
- 金融庁:預貯金者保護法に関する相談等(制度の概要・被害時の案内)
- 全国銀行協会:インターネット・バンキングにおける預金等の不正な払戻しについて(法律とは別の補償方針)
- 三菱UFJ銀行:偽造・盗難キャッシュカードの補償について(同行が示す過失の具体例)
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